THE 仙台 BOOK(仮)通信

 2014年4月。晴れ。街の公園に満開の桜を観に行きました。そこは、再開発の進む公園の広場。夕刻、たくさんの人が桜の下で寛いでいます。
「昔、この公園にあったプラネタリウムに来たなあ・・・」私は、歩きながら思い出していました。今回は、仙台の街中にあったプラネタリウムについてお話します。それでは、どうぞご覧ください。

(文・絵:八巻 祐子)

第10回 西公園と街中プラネタリウム・ロス

2014.05.18更新

西公園 プラネタリウムとの出合い

「仙台の街中にプラネタリウムが欲しい」と思う。

 幼いころ、旧仙台市天文台のプラネタリウムへ母によく連れて行ってもらった。プラネタリウムは仙台の西公園(注1)にあって、大きくもなければ、新しくもない。けれど、私は手が届きそうなくらいの星を見せてくれる、小さな天文台のプラネタリウムが好きになった。

 天文台にある惑星の模型はクルクルと回り、いつも飽きることなく眺めていた。大きいと思った地球は他の惑星と比べたらとても小さく、ショックを受けたこともある。とにかく、天文台へ行くといろいろな発見があっておもしろいのだ。


 楽しみは他にもあって、天文台のプラネタリウムを楽しんだ後、同じ公園内にある老舗の茶屋で「かき氷」を食べるのも好きだった。(ちなみに、仙台の名物「ずんだ餅」は私もよく食べる。けれど、ここの茶屋の名物「ずんだ餅」は食べたことがない。ああ、仙台市民だというのに・・・。)

 天文台のプラネタリウムでは、一般の上映以外にも職員の方が企画した特集も上映していた。印象に残った特集では、宮沢賢治が作詞・作曲した「星めぐりの歌」が流れ、温かみのあるメロディと歌詞に登場する星座に興味をそそられた。もっと知りたくなった私は、星座のルーツとなっているギリシア神話に興味を持つ。ギリシア神話からギリシアに興味を持つと今度は哲学へ。最後は、哲学の国ドイツの詩人・ゲーテの詩に出会えた。連鎖反応はどこまでも続き、世界が驚きに溢れていることを教えてくれた。

 天文台を通して得たことはたくさんある。私の「もの言わぬ恩師」かもしれない。あの天文台がなければ、今の私はきっといないでしょう。だから「ありがとう」と思う。

 そんな仙台市天文台が、数年前に西公園から郊外へと移転してしまった。移転の理由は、天文台の老朽化と西公園の整備事業によるものだという。他にも、天文台の周辺が栄えてくるにしたがい、街中での観測環境が悪化したからというのもあったようだ。


仙台市天文台の歴史

 ここで、遅ればせながら仙台市天文台についてご紹介していく(以下、仙台市天文のHPから参考にした)。

 仙台市天文台は、東北で初めての天文台で市民の寄付により、昭和30年から開台した。翌年の昭和31年「天文台建設委員会」から仙台市に天文台が寄贈されると、ここで正式に「仙台市天文台」と名付けられる。昭和32年には「人工衛星仙台観測班」の本部が設置され、観測数が全国一になったこともあったそうだ。
 そして、昭和42年。天文台に地元新聞社の河北新報社から、東北初のプラネタリウムの投影機が寄贈され、43年には東北初のプラネタリウム館が開館された(これが冒頭から話していたプラネタリウムのこと!)。
 河北新報社と言えば、宮城では知らない人がいないくらい有名な新聞社。また、当プロジェクトを夕刊で取り上げていただいたこともある。なので、あのプラネタリウムの投影機を寄贈していたとは驚きだった。天文台にまつわる歴史は、少し調べるだけでも知らないことばかりだ。


天文台職員による「天文台だより」

 先日、図書館で仙台市天文台について資料を探していたらおもしろいものを発見した。それは、仙台市天文台が平成20年に発行した「仙台市天文台だより」という分厚い本。(注2)天文台の職員が、仙台市内の小・中学校の科学部に天文に関する情報を送ろうと作成したニュースレター集だ。太陽系の惑星や星座のこと、占星術のこと、天文台に関する小話など盛りだくさんな内容でほとんどが職員の手書きのニュースレター(!)まさに、子どもたちへ宛てたラブレターである。

 レター集の中には、移転による天文台の閉台を記念して特集を組んだページもあった。内容は、市民から天文台の思い出の話を集めたものである。そこでは、何人もの方が天文台の閉台を惜しむ一方で「ありがとう」という言葉をたくさん寄せていた。「こんな街の中で、天体観測ができる仙台はすごいと思った」という声には思わず「そう! そう!」と共感してしまう。本当にすごい所に天文台があったものだ。


また、あの天文台へ行きたい

 仙台の街でやってみたいことがある。それは「ケヤキ並木の定禅寺通りを歩いて、同じ通りの図書館に立ち寄り、旧・仙台市天文台へ行く」というものだ。

 なぜ、そう思ったか。私が隣県に住んでいたとき、仕事帰りに駅の近くのプラネタリウムへ行ったことがある。1回、数百円ほどの料金で観られるショーは心地よく、仕事で溜まった疲れを取ってくれ、そこで切り替えができた。
 それに、見上げるという動作も自分を前向きにしてくれるようで気分がよい。週末の夜はレイトショーの特別上映があり、同じことを考える人は多いのか、仕事帰りの大人たちで賑わっていた。だから、街中のプラネタリウムの気軽に立ち寄れるという魅力が忘れられない。

 天文台が閉台になり6年。あの天文台のプラネタリウムへ無性に行きたくなる。公園に天文台がないことに慣れたはずでも、私の中では「天文台がある」という記憶は何年経ってもそのままだ。
 一方で記憶はそのままでも、いざ公園に足を踏み入れると天文台がどこにあったか思い出せない。今となっては夢のような記憶が残る。

 失くしてわかることがあるが、失くしてからでは遅いこともある。西公園の整備にも関連する、仙台の地下鉄工事(注3)が街へ与える影響にもっと関心を寄せたい。新しい地下鉄ができれば、街はさらに変わって見えるだろう。そして、街から消えたものは、後からジワジワと自分に効いてくる。

 仙台に関する本を作ろうとしているが、はたして、私はこの街を本当によく知っているだろうか。

2014年の春。桜を見ながらシミジミと考えた。


(注1)西公園(宮城県仙台市)
 仙台市西部にあり、市による公園としては最も歴史が古く明治8年に開園。春には桜の花見客で賑わう。初め「桜ヶ丘公園」だったが改名で「西公園」となるも、なぜか住所は「桜ヶ丘公園」のまま。平成27年には、仙台市地下鉄東西線「大町西公園駅」が開通予定。

(注2)「仙台市天文台だより」(1977~2007年)発行:仙台市天文台 平成20年3月31日

(注3)仙台市西公園・再整備事業
各施設の老朽化により、西公園から仙台市天文台と仙台市図書館が移転。合わせて、仙台市地下鉄東西線(平成27年開業)の整備で「大町西公園駅」が設置予定。西公園がより市民に親しまれるように施設や広場の全面的な見直しを行っている。             

出典:「仙台市HP」


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