今日の一冊バックナンバー

  • Aug

    01

    『夏の朝の成層圏』池澤夏樹(中公文庫)

    『夏の朝の成層圏』池澤夏樹(中公文庫)

    【今日のすっきりとした一冊】
    夜中に船から転落し、太平洋の無人島に漂着した主人公。生きるために知恵をこらし、自然からの恩恵を余すことなく受けとって、だんだんと島と一体化していく姿が清冽な筆致で描かれています。文明から切り離された孤島で暮らすうちに主人公に訪れる心の変化とは...。透明で清々しいこの物語は、夏の朝の読書にぴったりです。

    (三省堂書店池袋本店 早野佳純さん)

  • Aug

    02

    『ぼくのキュートナ』荒井良二(講談社)

    『ぼくのキュートナ』荒井良二(講談社)

    【今日のあまい一冊】
    荒井良二さんの絵本はどれも世界をやさしく肯定してくれるようなあたたかい作品ばかり。『ぼくのキュートナ』も、愛がたっぷりつまった一冊!「はいけい。ぼくのキュートナ」で始まる15通の手紙と、それに対なる"ぼく"の言葉。ちょっぴり笑えて、きゅんとして、「愛しいひとのことを考える時間」の素敵さにじぃんとしてしまいます。

    (三省堂書店池袋本店 早野佳純さん)

  • Aug

    03

    『すべての見えない光』アンソニー・ドーア(新潮社)

    『すべての見えない光』アンソニー・ドーア(新潮社)

    【今日のあまくてにがい一冊】
    第二次世界大戦下、フランス人の目の見えない少女と、夢を抱きながらも軍人になった少年。陰惨な時代にありながらも、そこに生きる人々のあたたかさや繊細さが美しく描かれています。この物語には、たしかに光がある。その光が、少女と少年を、その二人を取り巻く善意ある人々を、そして読者を明るく照らしてくれるのです。

    (三省堂書店池袋本店 早野佳純さん)

  • Aug

    04

    『数の悪魔』ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガ-(晶文社)

    『数の悪魔』ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガ-(晶文社)

    【今日のほろにがい一冊】
    数学嫌いの少年の夢に現れる「数の悪魔」が、12夜にわたって数の魅力をおしえてくれます。数学的センスがあれば、世界の見え方が変わるのでは?と、そんな風に考えてしまう算数苦手!のみなさんにおすすめしたい一冊です。数字とちょっと、仲良くなれますよ。

    (三省堂書店池袋本店 早野佳純さん)

  • Aug

    06

    『愛蔵版 イヌイットの壁かけ』岩崎昌子(誠文堂新光社)

    『愛蔵版 イヌイットの壁かけ』岩崎昌子(誠文堂新光社)

    この本は、イヌイットの女性たちが作った手作りの壁かけをまとめた一冊です。防寒着作りの際にでる、色とりどりのはぎれから作られていることや、一年の三分の二ほどが、太陽が昇らない暗い雪景色の世界に住んでいることもあって、色づかいが独特でおもしろいのが印象的です。狩猟やそり遊びなど、日常の風景をアップリケと刺繍で描いた素朴な絵や形もすごくかわいいです。こういう絵が描きたい。そう思いながら読みました。

    (ミシマ社 長谷川実央)

  • Aug

    07

    『Sunny(全6巻)』松本大洋(小学館)

    『Sunny(全6巻)』松本大洋(小学館)

    家族と一緒に暮らせない子どもたちが共同生活を送る児童養護施設「星の子学園」。いつか親が迎えにきてくれると信じながら、もう迎えに来ないのではないかという不安がいつも頭をよぎる子どもたち。「でもだんだん悲しいのになれてくるんだ」。「家の子」たちには見えない、大人たちには分からない埋まることのない「間」を冷静に見つめる「星の子」たちの姿が、切なくそして頼もしい。

    (コーヒー坊や 池田太朗さん)

  • Aug

    08

     『14歳からの哲学 考えるための教科書』池田晶子(トランスビュー )

    『14歳からの哲学 考えるための教科書』池田晶子(トランスビュー )

    14歳の頃、母からもらった一冊。当時中学年生のぼくには難しく、そして大学卒業まであと少しとなった今でもまだまだ分からないことだらけ。きっと何度も何度も読んで一生かけて少しずつ理解していくことだと思うと、これから先も楽しみになってくる。物事の本質を素朴な言葉でやさしく問いかける哲学者の智慧の書。まだ読んでない14歳以降の方、必読です。

    (コーヒー坊や 池田太朗さん)

  • Aug

    09

    『哀しい予感』吉本ばなな(幻冬舎文庫)

    『哀しい予感』吉本ばなな(幻冬舎文庫)

    大学一回生のころ、友人が何気なく薦めてくれた一冊。それまで「〜は〜である」といった具合のおカタい本ばかり読んでいたのですが、この本をきっかけに「何かを明言するでもなく語る」小説の世界にすっかり引き込まれるようになりました。「分かる」ということはきっと「身を持って知る」ということなのだろうとなんとなく気づかされたようにおもう。

    (コーヒー坊や 池田太朗さん)

  • Aug

    10

    『アルケミスト 夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ/著、山川紘矢/訳(角川文庫)

    『アルケミスト 夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ/著、山川紘矢/訳(角川文庫)

    「男は出ていくことよりも、家へ帰ることを夢見るものです」。特に理由もなくフラフラと一人旅をしていた頃にたまたま手に取った一冊。読むと旅に出たくなる、そんな男心をくすぐる一冊です。

    (コーヒー坊や 池田太朗さん)

  • Aug

    11

    『ぼくは勉強ができない』山田詠美(新潮文庫)

    『ぼくは勉強ができない』山田詠美(新潮文庫)

    一般的に「正しい」とされることに対して「ほんとに」と真っ直ぐに突っ込んでくる主人公の秀美が実にかっこいい。それを「若さ」という言葉で片づけるには少しもったいないくらいの爽快さと真実性があるようにおもう。大人のフリをしがちな中高生にぜひ読んでほしい一冊。ちなみにぼくも勉強ができない。

    (コーヒー坊や 池田太朗さん)

  • Aug

    14

    『保育園を呼ぶ声が聞こえる』 猪熊弘子、國分功一郎、ブレイディみかこ/著(太田出版)

    『保育園を呼ぶ声が聞こえる』 猪熊弘子、國分功一郎、ブレイディみかこ/著(太田出版)

    今の保育とそれを取り巻く環境について知るきっかけとなったのがこの本です。日本とイギリスの保育の違いについて様々な面から比較しながら語られていて、特に、保育を取り巻く制度と保育士になるまでの試験の違いは、日本の実情に愕然としました。比較されてようやくハッと気づかされることが多くあり、制度として決められていることも、いやいやおかしいぞと、声を上げていくべきことが山積している現状を思い知らされました。

    (文平銀座 窪田実莉さん)

  • Aug

    15

    『かなわない』植本一子/著(タバブックス)

    『かなわない』植本一子/著(タバブックス)

    まず、こんなにもあけすけに、日々の出来事やその時の感情を、近しい人に話すように書く植本さんの潔さに惚れ惚れします。日常は綺麗事だけで気持ちの整理はつかないし、感情がブレまくってしまう時もある。その生々しさにどこか安心感を覚えます。この本を読んでから、文章を書く時、「あ、これはええかっこしいになっているな」と思う度に植本さんの文章を思い出し、一呼吸おいて書き進めるようになる程、大きく響いた一冊です。

    (文平銀座 窪田実莉さん)

  • Aug

    16

    『看護覚え書-看護であること看護でないこと』フロレンス・ナイチンゲール/著、湯槇ます/訳(現代社)

    『看護覚え書-看護であること看護でないこと』フロレンス・ナイチンゲール/著、湯槇ます/訳(現代社)

    ナイチンゲールが残した看護についての著書です。病院の環境や設備、そしてどのように患者を観察し、行動しなければいけないのか。ナイチンゲール個人の経験を通して思ったことがかなりきっぱりとした口調で書かれています。実際に看護に従事したのは3年という短い期間ですが、その後、この看護覚え書をはじめとする著書を発表したことにより、今もナイチンゲールの考え方に触れることができる貴重な一冊だと思います。

    (文平銀座 窪田実莉さん)

  • Aug

    17

    『台所帖』幸田文(平凡社)

    『台所帖』幸田文(平凡社)

    台所が好きで、台所にまつわる本は出会ったらなるべく読むようにしているのですが、その中でも気に入っているのがこの台所帖です。季節の食材にまつわる思い出や、幸田家のならわしなどが書かれた短編集。特に最終章の小説「台所のおと」で書かれている台所の描写は、たまらなくグッと来ます。48年間、時々疎遠になりながらも台所に立ち続けた幸田さんの文章は、厳しさと人間味にあふれていて、読んだ後すっと背筋が伸びる一冊です。

    (文平銀座 窪田実莉さん)

  • Aug

    18

    『つぶやきのクリーム』森博嗣(講談社)

    『つぶやきのクリーム』森博嗣(講談社)

    森博嗣さんの"つぶやき"が100編収められています。"自分のせいでも他人のせいでも、ほぼ同じくらい失敗は失敗"など、一つ一つの内容が端的でその切れ味も抜群。意見がはっきりしているだけに、私はちょっと違うなと思うところもありますが、そうだよなあと思える、耳が痛くなるつぶやきが多々ありました。1編がとても短く、細切れに読むことができるので、本を読む時間最近取れていないなという方にもオススメしたいです。

    (文平銀座 窪田実莉さん)

  • Aug

    20

    『問題は英国ではない、EUなのだ ----21世紀の新・国家論』エマニュエル・トッド(文春新書)

    『問題は英国ではない、EUなのだ ----21世紀の新・国家論』エマニュエル・トッド(文春新書)

    『小商いのすすめ』でも引用されているフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッドによる時事論集。本書によれば、今日的現象は「グローバリゼーション・ファティーグ(疲労)」を示す兆候だという。英米が推し進めたそれであるが、当の英米社会がそれ由来の疲労に耐えられず転換点にあるとしている。トッドはそういった今日的な問題と人類史的な知見をひとつの地続きに捉まえようとしているのが面白い。そういったトッド流の見方について自身が存分に語った第三章の「トッドの歴史の方法」がとりわけ興味深かった。芦ノ湖畔のホテルで2日間かけて収録されたという。

    (ミシマ社 渡辺佑一)

  • Aug

    21

    『匂いをかがれる かぐや姫 〜日本昔話Remix~』原 倫太郎/文、原 游/絵(マガジンハウス)

    『匂いをかがれる かぐや姫 〜日本昔話Remix~』原 倫太郎/文、原 游/絵(マガジンハウス)

    タイトルからそのおかしさが伝わって来るこの本は、美術家 原倫太郎さんが10種類の翻訳ソフトを駆使して再編集した日本昔話です。原文を英語に、その英語をまた日本語に変換。そうする事で生まれる100種類ものおかしな翻訳文、をユーモアたっぷりに再編集しています。著者は常にデジタルとアナログのズレに着目していて、その笑ってしまうような誤りを、大まじめに物語に仕上げています。何も考えずに笑いたい時必読です!

    (アートーン 升田学さん)

  • Aug

    22

    『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』江國香織(朝日新聞出版)

    『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』江國香織(朝日新聞出版)

    忘れていた子供の視点に、心打たれた一冊です。この物語は、各章ごとに登場する数名の人物目線で描かれています。特に印象的なのが、拓人くんという言葉の遅い男の子の章。その全てがひらがなとカタカタで語られています。その為読み辛いのですが、それが拓人くんのたどたどしさを肌で(舌で?)感じる事が出来き、心にしみるのです。ラストの拓人くんの姿に、大人になるとは、成長なのか退化なのか? 考えさせられる。

    (アートーン 升田学さん)

  • Aug

    23

    『砂丘律』千種創一(青磁社)

    『砂丘律』千種創一(青磁社)

    まず装丁に惹かれて手にした本です。私はほとんど歌集というものを読んだことが無いけれど、そのザラッとしていて危うく、いまにもほどけ落ちそうな装丁が気になりました。開くと1ページに2つの歌が収められています。その一つ一つの周りにはムワッとした、映画にも負けない世界が広がっています。どこか切なく、なぜだかROCKを感じ...そして時々ムフッと笑える。たった一行で旅に連れて行ってくれるので、何度も読みたい本です。

    (アートーン 升田学さん)