実録! ブンヤ日誌

第21回 ジャパンの名を胸に

2010.12.13更新

唐突ですが「知恵の和ジャパン」なるものをご存じですか? ヤバい、全っ然知らないんだけど・・・と思われた方、心配御無用です。おそらく85%くらいの日本人は「なんのこっちゃい」と首を傾げるしかない単語。ま、何のことはございません。11月に行われた中国・広州アジア大会での囲碁日本代表チームの愛称なのです。

へ? 囲碁ってあの囲碁? 名前の前によ、なんでアジア大会に参加してんのよ? と疑問に思うことでしょう。そうです。そうなのです。まったく体を動かさない(碁石を盤上に打つくらいの動作はしますけど)囲碁が史上初めてスポーツ競技としてアジア大会に認定され、新種目になったのです。理由は簡単。開催地・中国の棋士が現在アジア最強の実力を誇っておりますから、ひとつでも金メダルを稼ぐにはもってこいな種目ってワケですね。

囲碁がスポーツになる。棋士が日の丸ジャージを着て対局する。ドーピング検査もする。ナショナル・トレーニング・センターで直前合宿もする(走ったりはしないけど)。こりゃ相当に面白いってんで、大会2カ月前の9月に日本棋院まで話を聞きに行きました。詳細についていろいろと取材をした後、ふと思い立って尋ねてみたのです。
「そーいえば、代表チームの愛称は決めないんですか? サムライジャパンとか、なでしこジャパンみたいな」
ノリで言ってみただけなのですが、担当氏はまるで深い霧が消えていった午後の湖のような顔で「あー! なるほどー! そういうのありましたねー! それは面白い! さっそく事務局で会議をしてみます!」とノリノリ。あれよあれよと言う間に一般公募することになり、応募総数1570件のなかから、東京都杉並区の30代男性の案
「知恵の和ジャパン」
が採用されることになりました。「知恵の輪」ではなく「知恵の和」。頭脳競技として知恵を振り絞りつつ、団体として和を重んじましょうねという願いを込めたそうです。

で、金メダルを目指した結果はですね、男女団体戦、混合ダブルス(スポーツっぽいけど、男女が1手ずつ交互に打っていくペア碁のことです)の3種目を戦い、男子団体が銅メダルに滑り込んだのみ。今回初めて知ったのですが、近年の囲碁界の勢力図は中国→韓国→日本の順列になっているそうなので、順当と言えば順当、惨敗と言えば惨敗とも言える成績です。そんなこともあって「知恵の和ジャパン」という呼び名はまったくと言っていいほど浸透しませんでした。

いろんな意味で残念な結論に落ち着いた今、忸怩たる思いを抱えています。僕は、最初に日本棋院に愛称プランを持ち掛けた時に、ふたつの「ジャパン」を提案していたのです。碁石の色と「白黒ハッキリさせてやるぜ!」という意味を込めた「白黒ジャパン」、もしくは元気のいい「碁ー碁ージャパン!」。後者に関しては、郷ひろみをイメージキャラクターに起用し、あちこちで歌いまくってもらうという計画も勝手に夢想しておりました。そっちの方が一般ウケし、新たな囲碁ファンを獲得していたのではあるまいか、と今でも思うのです。もちろん、大切な何かを同時に失っていたような気もしますが・・・。

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北野新太(きたの・あらた)

1980年1月、石川県七尾市生まれ。
学習院大学法学部政治学科在籍中に雑誌「SWITCH」で雑誌編集を学び、卒業後の2002年に報知新聞社入社。以来、編集局勤務。担当遍歴は、日韓W杯—常総学院—柏レイソル—社会—映画—音楽—アテネ五輪—社会—読売巨人軍—和田アキ子 —NHK—社会(現所属)とムチャクチャ。猫背の完治が生涯の目標だが、巨人・原辰徳監督に「生き方が曲がってなければいいんだ!」とエールを送られたため、とりあえず先延ばし中。好きな言葉は「人間には、燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつか燃え尽きたいと望み続ける3つのタイプがあるのだ」

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