実録! ブンヤ日誌

第22回 ムツゴロウさんと青山の路上で

2011.01.17更新

第22回ブンヤ日誌

インタビューを終えると、ムツゴロウさんは「それではお見送りしましょう」と言って、エレベーターで一緒に1階まで降りてくれました。

やはり「愛」の人。そして外苑西通りに面した路上にふたりで立った時、なぜだか「ムツゴロウさん、ここでも1枚お願いできますか?」と申し出て最後の写真をパチッとおさえたのです。きっと、ムツゴロウさんと青山の路上にいるという奇想天外な現実を個人的に記録しておきたかったのだと思います。

畑正憲。75歳。動物王国の国王(という表現でいいんですかね)。「よーしよしよし」。ライオンに何度も噛まれた経験を持つムツゴロウさんです。ウチの社会面は毎年12月に「今年話題になった動物たち」をテーマに特集記事を展開するのですが、毎年の通例になっていたのがムツゴロウさんに電話でコメントをもらう取材でした。

昨年は僕が記事の担当になりました。で、思ったのです。「電話で話を聞くなんてもったいない。会っちゃえ」と。お願いしてみたら、すんなりOK。ちょうど北海道から上京するタイミングがあり、お時間を頂くことになりました。人生面白いものです。だって、ムツゴロウさんに会えちゃうんですから。

築40年は超えたであろう青山のヴィンテージマンションの一室で、ムツゴロウさんは僕を待ってくれていました。「今年話題になった動物なんていましたかねえ。ハハハハハハ」。幼い頃、テレビで見た無垢な笑顔が目の前にありました。

「クマと遭遇したら? 素手じゃ叶わないから逃げるしかない。ハハハハ。逃げ方はその場その場ですね。全部応用問題ってところが大変です。クマも初めての行動を取っているわけですからね。
 いちばんの対策になるのは犬と生活をすることです。犬が最も役に立つ。かつては日本中の農家が犬を放し飼いにしていました。でも今は高齢化が進んで飼わなくなったし、つないで飼うようになりましたからね。放し飼いにすれば何のことはないんです。サルに対しても然りです。
 イノシシに乗るサル、ありましたねえ! ナミビアではヒヒがヤギに乗ってヤギを守ることもありました。群れを統率してましたからね。違う動物同士だと、お互いにストレスが掛からないケースがあるんです。
 スイスで犬が馬に乗って障害競走しているのを見たことあります。犬専用の鞍なんてのがありましてな。サルなら手綱まで握っちゃうと思いますよ。子供の頃から訓練で慣らせば3~4年で(異動物コンビを)つくれます。私でも難しくないですねえ。
 パウル君。私たちが考えているより、タコの知能は非常に高い。タコの知能の専門家がモナコにいましてね、箱を開けて選択させる実験をするんですけど、それをパウル君の水族館の人が知ってたんだと思いますよ。
 来年もおかしな問題は起きてくると思います。僕の家の軒先にも、ダーッと並んでいてたスズメがまったくいなくなっちゃった。自然のリズムが崩れてます。人類はもうちょっと動物のことを考えないといけませんねえ」(2010年12月19日掲載)

第22回ブンヤ日誌

話は時に動物を離れ、政治、文化、話題とあらゆる方向へ飛んでいきます。「それにしても、たばこの大増税をやった民主党政権はヒドイ。(愛煙家である)僕は怒り狂ってました。趣味の嗜好品に課税するという最も悪しき政治形態。だから空港でもどこでも喫煙室に入ると、皆さんに言うのです。民主党に票を入れるのだけはやめましょ! って。ハハハハハハ」

別れ際にムツゴロウさんは仰いました。「来年もまた会いましょう。ま、僕があの世にいっていなければね。ハハハハハハ」。深い皺が刻まれた顔ですが、まるで少年のようなスマイルでした。

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北野新太(きたの・あらた)

1980年1月、石川県七尾市生まれ。
学習院大学法学部政治学科在籍中に雑誌「SWITCH」で雑誌編集を学び、卒業後の2002年に報知新聞社入社。以来、編集局勤務。担当遍歴は、日韓W杯—常総学院—柏レイソル—社会—映画—音楽—アテネ五輪—社会—読売巨人軍—和田アキ子 —NHK—社会(現所属)とムチャクチャ。猫背の完治が生涯の目標だが、巨人・原辰徳監督に「生き方が曲がってなければいいんだ!」とエールを送られたため、とりあえず先延ばし中。好きな言葉は「人間には、燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつか燃え尽きたいと望み続ける3つのタイプがあるのだ」

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