実録! ブンヤ日誌

第41回 彼女がかけた魔法の呪文

2012.02.10更新

「〽たーのしーい♪ なーかまーが♪ ポポポポ~ン♪」

CMのなかで天真爛漫に歌っていた彼女は、当時の葛藤を打ち明ける。
「まさかあんなに流れることになるとは思いもしなかったです。最初はノンキなもので、飲み屋のテレビで見て、おっちゃんに『これあたしー、あたしー』なんて自慢してたんですけど、次の日から友達とか知り合いからメールがわーっと来て。ネット上でも話題になって『これはただごとじゃない』と。苦情もあったみたいで、いい思いをする人ばっかりじゃないんだなと気づいたんです」

イメージ通り、フワッと優しい空気をまとった松本野々歩さんは27歳の歌手。東日本大震災の発生後、企業の宣伝活動自粛によって日本中で流れたACジャパンのCM「あいさつの魔法。」で歌唱を担当したのが彼女だった。CMは超ヘビーローテーションでオンエアされ、空前の大ブームを巻き起こした。「いまだに友達に『えっ、あんただったの!』ってビックリされます。矢野顕子さんだと思ってた、とか。光栄なんですけど、矢野さんはどう思われているか心配で・・・」。

一昨年春のレコーディングの際、最初はやはり「ポポポポ~ン」なる歌詞が気になったとか。「子供たちが口ずさんでマネしたくなる歌になればとは思いましたが、確かに・・・最初は『なんだろ』と思ったフシはあります。え? ポポポポ~ン? と。どういう気持ちで歌えるかと思いましたけど、子どもは意味不明な言葉が好きなので、自然なのかなと。今思うと魔法だったんだなと思えます。魔法の呪文だったんだなあって。被災地でチャリティーライブもやったのですが、やっぱりあの歌になるとリアクションがものすごいんです。子どもたちの反応を見ていると、いい歌だったんだなと思えました。歌を聴いて、震災を思い出して苦しい人がいるかもしれないですけど、逆に震災を忘れないように歌い続けたい。あの歌と共に生きていきたいんです」
 
オンエアは昨年6月末で終了したが、2歳になった僕の娘は今頃になってyoutubeの「ポポポポ~ン」にハマッている。芦田愛菜ちゃん、鈴木福くんの「マルマルモリモリ」への熱意に勝るとも劣らないご執心ぶりだ。「〽たーのしーい♪ なーかまーが♪」と歌うと、待ってましたとばかりに謎の笑顔を浮かべながら「ポポポポ~ン」と返してくる。瞬時に歌詞を覚えたことなど過去になかったはずだが・・・。魔法の呪文、というのは言い過ぎではない気もする。

ちなみに、あの歌にはCMではほとんど流れなかった3番が存在する。「〽こんにちは♪ ありがとう~♪」の「ありがとう~♪」の部分がすさまじくグルーヴィーなので、オススメしておきたい。youtubeで見られます。

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北野新太(きたの・あらた)

1980年1月、石川県七尾市生まれ。
学習院大学法学部政治学科在籍中に雑誌「SWITCH」で雑誌編集を学び、卒業後の2002年に報知新聞社入社。以来、編集局勤務。担当遍歴は、日韓W杯—常総学院—柏レイソル—社会—映画—音楽—アテネ五輪—社会—読売巨人軍—和田アキ子 —NHK—社会(現所属)とムチャクチャ。猫背の完治が生涯の目標だが、巨人・原辰徳監督に「生き方が曲がってなければいいんだ!」とエールを送られたため、とりあえず先延ばし中。好きな言葉は「人間には、燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつか燃え尽きたいと望み続ける3つのタイプがあるのだ」

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