実録! ブンヤ日誌

第55回 闇から始める 2

2012.09.03更新

会話の流れが「北の国から」に移行した時、あの作品がいかに好きなのかを目の前の倉本聰に伝えるという愚行を犯すことにした。あまりにストレートすぎやしないかい、と。30年も言われ続けているだろうに。

「純が(富良野の四季を一緒にくぐり抜けた)スニーカーをゴミ捨て場から拾ってくるところとか、(五郎が)ラーメン屋で『子どもがまだ食ってるでしょうが!』と叫ぶシーンとか、わかっていてもいまだにグッときちゃいます」

すると、意外にも倉本は少年のように頬を緩ませた。「そ、そうですか・・・。とってもうれしいことですね。光栄です。ありがとうございます」。もしかしたら、もはや当然すぎて誰からも言われなくなっているのかもしれないと思った。そして「続編はあり得ないんですか」と水を向けると、彼は「終わっちゃって誰よりも残念なのは僕なんですよ。誰よりも続編を望んでいるのも僕ですし」と言った。

シリーズは2002年の「遺言」を最後に終わったが、脚本家の内部でストーリーは続いている。「常に『北の国から』は僕のなかに生きています。舞台になっている街に住んでいますからね。中畑和夫(地井武男)が最近死んでしまった。独居老人の五郎(田中邦衛)は相変わらずで、生活保護もないなかで一人暮らしています」

昨年は「2011 つなみ」という物語を構想した。
結(内田有紀)と離婚した純(吉岡秀隆)が初恋の人・れいちゃん(横山めぐみ)と再会する恋の行方と、東日本大震災を主題とする。被災した福島県浪江町に住む螢(中嶋朋子)の一家を純が訪ね、福島第一原発で働くまでの過程が描かれる。「南相馬の病院の看護婦さんを取材したりして。中畑の死が五郎にどんなショックを与えるのかも大きなドラマになるんですけどね」。現実的には、テレビ局の意向や出演者の問題もあり制作に至る可能性はほぼ皆無だ。それでも書く。思いついたらノートにペンを走らせる。

「元気ですけど、健康は末期に来ていますよ。78になりますからね。たばこはバンバン吸うわ、酒は飲むわでムチャクチャやっていますから。体を支えているのは、仕事へのアドレナリンだけです」

第55回ブンヤ日誌

「医者にかかって、血圧が高いからどうしたらいいのかと言うと、ストレスがいちばんいけないから、腹が立ったらどんどん怒りなさいと言われるんだけど、いや、年中怒鳴ってると・・・。いいことです、と言うから、でも、怒鳴った後に反省しちゃうんですよと返すと、あ、それがいちばんいけません、なんて」

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北野新太(きたの・あらた)

1980年1月、石川県七尾市生まれ。
学習院大学法学部政治学科在籍中に雑誌「SWITCH」で雑誌編集を学び、卒業後の2002年に報知新聞社入社。以来、編集局勤務。担当遍歴は、日韓W杯—常総学院—柏レイソル—社会—映画—音楽—アテネ五輪—社会—読売巨人軍—和田アキ子 —NHK—社会(現所属)とムチャクチャ。猫背の完治が生涯の目標だが、巨人・原辰徳監督に「生き方が曲がってなければいいんだ!」とエールを送られたため、とりあえず先延ばし中。好きな言葉は「人間には、燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつか燃え尽きたいと望み続ける3つのタイプがあるのだ」

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