実録! ブンヤ日誌

第63回 主演女優

2013.01.07更新

新春、迎春、賀正。2013年である。
新年と言えば、気になるのは新しいNHK大河ドラマの出来映えだ。
「八重の桜」が始まった。

日曜夜の新しい顔になる綾瀬はるかさんを、2008年に1年間だけ担当したことがある。まあ、残念ながら「担当」とは言ってもプロ野球みたいに毎日朝から晩まで一緒にいたり、お酒を飲みに行ったりするような関係ではない。基本的には、新しいドラマの記者会見に行ったり、新作映画の舞台挨拶を取材しに行ったりするくらいのものだ。

ところが、さすがに1年間も「担当」と称しておれば、姫にお近づきになれる機会も2度ばかりあったものでござる。一度は映画のロケ取材で北九州市まで赴いた。作品のタイトルは、ゴ・・・ゴホン・・・「おっぱいバレー」と言った。

弱小男子バレー部員たちが新任女教師の「1勝したらおっぱいを見せてあげる」との約束を実現させるために、青春を燃焼させる物語。綾瀬さんは、おっぱいを見せたくない思いと勝ってほしい思いの間で揺れる教師という難しい役どころ・・・だった。初日の撮影を終えた彼女に話を聞くと、頬をピンクに染めながら「さ、最初は、お、おっぱいをテーマにしたエッチなお話なのかと思いました・・・」と言って、7回も「おっぱい」と口にした。「何かに頑張って夢中になれることを伝えることで、私も成長したいです。『おっぱい』と言うのも気にならないようにならないと」。もともとFカップ88センチの清純派グラビアアイドルとしてデビューした人。衣装がぴったりとしたニットで、ついつい目がいってしまった記憶がある。

2度目は「僕の彼女はサイボーグ」という主演映画の封切り直前インタビューだった。街を破壊するほどのパワーを秘めた美女サイボーグ、という役を演じた綾瀬さんだったが、都内のスタジオで向かい合った彼女は、やはり癒し系。「私、こう見えても中学時代は学年でいちばん足が速かったんですよ。あれ・・・もしかして疑ってませんかー? バスケ部でしたけど、陸上部の先生に『試合だけ出てくれ』って言われるくらい。えへへ」。アクションながら輪廻転生をテーマにした作品だっただけに「生まれ変わったら何になりたいですか」などと尋ねてみると「旅館の女将さんかパン職人かパティシエ。好きなだけ食べられるからじゃないですよ。ちゃーんとおもてなしするんです。イタリアンのシェフもいいですね。あの帽子カッコイイし。『ボンジュール』みたいな。えっ、フランス語?」。

取材日の朝、妻から「美容の秘訣を聞いてきて」と厳命されていたのでインタビュー終了後に聞いてみると「えっ・・・私が奥さんにアドバイスなんて・・・そんな・・・めっそうもないですよお」と恐縮しつつ「でも、そうですね・・・毎朝の洗顔をちゃんとするのが大事かと・・・。でも~奥さんに生意気な子って思われちゃうな・・・どうしよう・・・」と本気で困っていた。同期のカメラマンが調子に乗ってムチャなポーズを要求しても、笑顔で応じてくれた。

名声やお金は時に人を変えるものだが、当時から既に人気女優として登りつめていた綾瀬さんは、そんな調子で、とても素敵な人柄の女性だった。俳優にとって一生の晴れ舞台とも言える大河。毎週チェックする自信は到底ないが、主演女優の奮闘と高視聴率を祈る正月である。

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北野新太(きたの・あらた)

1980年1月、石川県七尾市生まれ。
学習院大学法学部政治学科在籍中に雑誌「SWITCH」で雑誌編集を学び、卒業後の2002年に報知新聞社入社。以来、編集局勤務。担当遍歴は、日韓W杯—常総学院—柏レイソル—社会—映画—音楽—アテネ五輪—社会—読売巨人軍—和田アキ子 —NHK—社会(現所属)とムチャクチャ。猫背の完治が生涯の目標だが、巨人・原辰徳監督に「生き方が曲がってなければいいんだ!」とエールを送られたため、とりあえず先延ばし中。好きな言葉は「人間には、燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつか燃え尽きたいと望み続ける3つのタイプがあるのだ」

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