5年後、

第4回 道

2015.09.28更新

速さを求め続けたあげく、私たちはあらゆる道を壊してしまった。

土の道や、水の道や、鳥の道を、壊した。

生き物たちの、血の道も壊した。

この美しい星の、無数の道を壊しておきながらろくに反省をせず、他の生物の苦しみを歯牙にもかけず、突き進んだ結果がいま世界各地に起こる混乱と災害と止まぬ戦闘である。

人間の生きる道は閉ざされつつある。

行き場のなくなった人びとが大移動をしている。

どこへ行っても苦しみが待っている。

大気汚染で死亡する人が年間300万人いるという。太平洋戦争で失われた日本人の数におよぶほどの命が、自分らで汚した空気で消えている。それなのになかなか変われない。いつになったら懲りるのか。

懲りるといえば私はガンに懲りている。もう同じ目に遭いたくない。そうしたなかでガンによる、ある方の訃報を聞いた。いつも観ている国際報道番組のニュースキャスターが、32歳の若さで亡くなられた。ここ数年、彼女が毎日伝えてくれた世界の出来事を、私は複雑な思いで受け止めていた。この世の破壊は、いったい何によるものなのかと。

番組では先日、「道」という特集をシリーズで放送していた。「道」の中には、かつて敵として戦った者同士が70年の時を超えて許しあう「道」もあった。生きていればこそ、である。

才能あふれる美しい女性の命をさらっていったのは、ガンという病いだった。彼女には、まだまだこれから、世界の「道」を伝える仕事が、待っていたばずである。彼女の遠慮がちな愛らしい笑顔を思い出すと、知り合いではないが悲しみが込み上げてくる。

彼女の「道」は閉ざされた。閉ざしたのは誰か。私が彼女を観ていたこの数年に、世界の子どもたちの苦しみも、殺し合いも、自然破壊も、減ることはなかった。世界じゅう持ち回りのごとく惨事はつづいている。

世界のニュースとともに、日々耳に入ってくる、ガンによる訃報。一方で、ガンを抑制すると言われたワクチンを、言われるがままに受け入れた女性たちはいま、副作用に苦しんでいる。どうしてこんなことになってしまうのだろう。戦争も、病いも、なぜか生まれてしまう。すべては連帯責任の「道」なのだという思いを、いまは強くしている。

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山口ミルコやまぐち・みるこ

東京都生まれ。専修大学文学部英米文学科卒業後、外資系企業を経て、角川書店雑誌編集部へ。94年2月1日から2009年3月末まで幻冬舎。プロデューサー、編集者として、文芸から芸能まで幅広いジャンルの書籍を担当し数々のベストセラーを世に送る。幻冬舎退社後はフリーランス文筆業、クラリネット奏者として活動。2012年2月に『毛のない生活』(ミシマ社)を上梓。その他の著書に『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』(小学館)がある。

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