5年後、

第11回 本命

2015.11.17更新

ガン細胞のかたまりが身体のある場所にできて、それが悪さをするものがガンであると、一般的に言われている。
かたまりはガンの親玉で、その子分たちが全身に散らばっている状態である。
つまりガンの患部は、ガンの幹部ということになるが、ほんとうにそうだろうか。

私の場合、あるとき右胸にしこりがみつかり、そこが痛み出したのが騒ぎの始まりだった。ところが、いまとなってはあれがガンだった気がしない。
じゃあ、あれ(しこり=ガンの患部=ガンの幹部) は何だったのだろう?
すべての司令塔ではなかったのか?
ガンの幹部は、権力者なのか?
私はちがうだろうと思う。

ほんとうに力をもっていたのは、無数の小さな粒である。
微細で、目立たず、声を上げず( 痛みを発しない) 、おとなしい者たち。
彼ら一人一人(一粒一粒) が目覚めたときに、患部は幹部でいられなくなる。
彼らは一時は幹部に従わざるを得なかったように、見えるかもしれない。しかし先頭を切ったのは幹部ではなく、幹部は結果だった、そう考えるのが妥当である。

小さな粒こそ、本命だ。
しこりがガンであるという思い込みを、いったん捨ててみよう。
無数の目立たない者たちをイメージして、彼らをねぎらってほしい。

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山口ミルコやまぐち・みるこ

東京都生まれ。専修大学文学部英米文学科卒業後、外資系企業を経て、角川書店雑誌編集部へ。94年2月1日から2009年3月末まで幻冬舎。プロデューサー、編集者として、文芸から芸能まで幅広いジャンルの書籍を担当し数々のベストセラーを世に送る。幻冬舎退社後はフリーランス文筆業、クラリネット奏者として活動。2012年2月に『毛のない生活』(ミシマ社)を上梓。その他の著書に『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』(小学館)がある。

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