5年後、

第15回 遠くを見る

2015.12.15更新

とつぜん治療が終わった日のことは、忘れられない。
正しくは、「終わった」のではなく私が「終わらせたかった」ので、先生と話し合って決めた。
あれほど心が晴れたことはなかなかない。
もう自分は自由だ。
なんでもできる。
病院を出ると明るい未来のひかりがてっぺんから全身にふりそそぎ、
私は大きく伸びをした。
ところが、そこからが、長かった。
私の思うようにはなかなか先へ進まなかった。
私は落胆し、いったん喜びすぎたために気持ちの落ち込みは治療中以上になった。
あせるから、落ち込むのだ。
あせらなければ、ちゃんとなる。
ちゃんと、なるようになる。
ガンが育つのに10年かかっているとすれば、治るのにも10年かかる
――ものごととはそういうものだろうと、いまなら少しわかる。
すぐに結果を求めることがどれほど人のエネルギーをうばうか、これからはよく考えて生きたほうがいい。遠くのほうを、明るく見て。
いそぐ気持ちが芽生えてきたら、
「天の神さまの言うとおり、なのなのな」
と唱えることにしている。

~お知らせ~

年明けに、山口ミルコさんがラジオに出演されます。
1/10(日)、1/17(日)文化放送「キャンサーカフェ」(朝8:00~8:30)
「乳がん体験」で得た教訓、それ以前に遡って編集者時代の話、術後の自分再生、近況などを語られます。
番組のパーソナリティは、門田守人(もんでん・もりと)先生(2011年から「公益財団法人 がん研究会」理事で、現在は「がん研有明病院」名誉院長厚生労働省「がん対策推進協議会」の会長)と石川真紀アナです。

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山口ミルコやまぐち・みるこ

東京都生まれ。専修大学文学部英米文学科卒業後、外資系企業を経て、角川書店雑誌編集部へ。94年2月1日から2009年3月末まで幻冬舎。プロデューサー、編集者として、文芸から芸能まで幅広いジャンルの書籍を担当し数々のベストセラーを世に送る。幻冬舎退社後はフリーランス文筆業、クラリネット奏者として活動。2012年2月に『毛のない生活』(ミシマ社)を上梓。その他の著書に『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』(小学館)がある。

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