5年後、

第22回 月のもの

2016.02.02更新

再び 「月のもの」 が来たときには、たまげた。
「もうあなたの年齢では、おそらく戻らないでしょう」
お医者さんはそう言っていた。

抗がん剤の影響から子宮と卵巣をまもるために、ホルモン治療も同時に受けた。薬で人工的に閉経状態をつくる。けれどそれをもって子宮と卵巣がぶじだったとしても生理が終わるということはつまり終わり、である。

いい歳をして「赤ちゃんがほしい」などとずうずうしいことは考えていない。独身・子なしでさんざん好き勝手に生きてきたゆえの、ガンである。
自分の命をキープするだけで、せいいっぱいだった。

自分の命が助かっただけで大感謝なのだから、プラス「新しい命」をのぞむなどもってのほか、人生欲張ってはいけない。「ぼくの子を産んでくれ」といった殿方からの申し出も残念ながらなかったし、差し当たりそんな予定もなかった。けれども、「そうか生理、なくなるのか・・・」と思ったらちょっとさみしかった。あるときはめんどうだが、なくなるときくと惜しい。まあいいや気にしない気にしない。そういうことにしていたら、しばらくして忘れた頃に、なんと生理がやってきたのである。もうないと思っていたので「ぎゃあ」である。ものすごくびっくりした。お赤飯だ。しかも、ガン治療前より痛みがない。以降、さらにどうしたことか以前は不規則だったそれが、定期的にやってきた。しかもサラサラのきれいな血液だった。この、女性ならではの素晴らしいからだのしくみによって、私は自分のからだが闘いを終えて生まれ変わったことを、教えられた。

規則正しく、痛みなく、きれいなサラサラの血、見事なまでに整然とした美しい営み、これが本来のすこやかな女性の生理というものなのだ。ガン治療中に取り入れた食事療法によって、私のからだはガン治療の前と後ではすっかり変わったのだった。したがって、いくら年齢が若かったとしても、以前の私では――将来ガンになるような、毒とストレスを抱えた生活では―― 新しい命をはぐくむ資格などまったくもってなかったのである。

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山口ミルコやまぐち・みるこ

東京都生まれ。専修大学文学部英米文学科卒業後、外資系企業を経て、角川書店雑誌編集部へ。94年2月1日から2009年3月末まで幻冬舎。プロデューサー、編集者として、文芸から芸能まで幅広いジャンルの書籍を担当し数々のベストセラーを世に送る。幻冬舎退社後はフリーランス文筆業、クラリネット奏者として活動。2012年2月に『毛のない生活』(ミシマ社)を上梓。その他の著書に『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』(小学館)がある。

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