ハタラク計画、スタート前

Story16. WEBと本のステキな関係

2014.08.04更新

 電車やバスで移動していると、漫画雑誌を読んでいる人が減ったなーと思います。数年前までは通勤や帰宅途中のスーツを着たサラリーマンや学生が、週刊〇〇と書かれた雑誌を読んでいる姿が当たり前で、電車の網棚の上には一車両に一冊は漫画雑誌が載っていたような気がします。
 また、駅構内でシートを敷いて漫画雑誌を売っている、ちょっとイワクありげ(笑)なおじさまたちの姿もまったくといっていいほど見なくなりました。代わりにスマートフォンや電子書籍の端末で漫画を読んでいる人は増えてきているなーと。漫画雑誌の部数が減っていることは、こんな身近なところからも実感します。

 私が女性月刊誌の編集をしていたころ、こんなことを会社の販売部の方から聞きました。「電車一車両で同じ雑誌を二人が読んでいたら10万部売れている目安になるよ」と。
 まだまだ雑誌が元気だと言われていた時代、私が担当していた雑誌を読んでいる人を、自分の通勤電車の同じ車両で二名見つけたときは、思わず声をかけてしまったことも。今にして思えば、かなりの変人行為ですが、「読んでくれてありがとうございます!!」と、言わずにはいられない衝動にかられたのです。
 また、同時期に私がつくっていた雑誌のライバル誌を、朝の通勤ラッシュ時のギューギューの満員電車の中で必死になって読んでいる女性を見つけたときは、「それほどまでして読みたい雑誌ってホントにすごい!」と、敵視していた雑誌ながら拍手をおくりたくなりました。こんな光景も電子書籍がますます台頭してくると、見られなくなるのだなーとちょっとさびしい気分にもなったりします。

 だからか、文庫本や書籍を電車の中で読んでいる人に目がいくようになりました。カバーをつけた本や図書館のシールがついた本、読みこまれて表紙がクタッとなった新書・・・。つい先日は、この猛暑のなか涼しげな表情で単行本を読むイケメン男子が、私の隣の席と、私の目の前のつり革にふたりいたときには、「読書イケメン、略してドクメン、悪くない♡」と勝手に命名していました。
 書きながら気づいたのですが、"読書"って"書を読む"なんですよね。この"書"というものは、私にとってはまだまだ紙のイメージ。これからは電子書籍も"書"になってくるのかしら?

 編集者や出版関係者と集まる機会があると、必ずといっていいほど聞くフレーズがあります。
「今の広告主体の雑誌の時代は終わって、雑誌はどんどん淘汰されていく。でも単行本や新書の紙媒体は必ず残る」
 なんの明確な根拠もありませんが、私も肌でそれを感じます、というか感じていました。だから会社を離れ、自分でやろうと思ったのですから。そんな中、前回、少し書かせていただいた、私が独立して初めて編集を担当した書籍
『好きな人にモテる女になるたったひとつの魔法』(鈴木サリ著 世界文化社刊) が、7月23日に無事、発売の運びとなりました。著書、デザイナー、ライター、カメラマンの全身全霊を込めた一冊です。これでもかというくらい何度も何度も見つめ直し、その度に熟考し校正し、ようやく産声を上げた本です。その産声をひとりでも多くの必要としている人に届けたくて、販促活動を地道に丁寧にやっていこうと、動き出しました。
 
 ご存じのとおり、出版不況といわれるなか、出版社は本の販売促進、宣伝活動に費用をかけにくい状況になっています。それならばできることをやろうと、手作り出版記念発表会を開催しました。著者が普段活動をしているサロンで、マスコミや各業界関係者の方をお招きし、そのひとりひとりに著者自身から本への思いを語ってもらうという形式です。何千人という大人数ではないけれど、著者の声が生で届くということで、どの人も興味深く聞いてくれて、義務ではなく自然と著者に質問をしてくれて・・・。
 また、著者の思いを直接伝える場を設けようと、イベントやワークショップの開催も計画しています。そんな中、大阪の某有名書店の担当者から著者宛に「本の発売にあたってのイベントを開催させていただけませんか」という打診をいただきました。書店の方からのお声かけということがあまりにもうれしく、「お天道様は見ていてくれているね。ご褒美だね」と、著者と大喜びをしました。このイベントは9月末に大阪で開催することとなり、それに伴って関西での自主イベントも開催する予定です。

 このような書籍発売後の一連の流れの中で"SNSやネットの力"を、まざまざと見せつけられました。一人が本を手に取り、その感想や思いをSNSやネットで伝え、拡散し、また次の拡散へ。"紙人間"の私も、その世界がどれほどの力を持ってきているのかを痛烈に感じることができました。
「新しい媒体をつくりたい」という思いに賛同してくれた仲間と、WEBマガジン誕生に向けて動いている現在、今回の経験によって、さらにその世界への可能性、ワクワク感とドキドキ感が増してきました。
 まだネット社会など想像もできなかったころ、WEBサイトに活路を見出し、先陣を切った方がいます。糸井重里さんです。90年代後半、糸井さんには自分のはたらき方、生き方を含め、いろいろなたくさんの思いが溢れていたように思います。そして立ち上げられた『ほぼ日刊イトイ新聞』というWEBマガジン。私も大好きなサイトです。
 WEBマガジンをつくっている私がお守りというか、糧にしている一冊があります。『ほぼ日刊イトイ新聞の本』(糸井重里著、講談社)。WEBマガジンが完成するまでの物理的な経過はもちろん、その間のこころの動きや、時代、人との関係性など、糸井さんの正直な静かな叫びが詰まった一冊です。
 迷ったり、悩んだり、こんがらがったり、後ろを向きそうになったりすると、この本を読み返しています。やっぱり私も本に助けてもらっている。WEBの世界に踏み出すときに支えてもらっているのが本だというのは、なんともいえないステキな関係性。
 WEBマガジン今秋始動を目標に、みなさんに「これが私です!」と清々しく発せられるような媒体つくります。

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河田実紀(かわだ・みき)

大学卒業後、出版社に入社。主に雑誌の編集に携わる。2011年、女性雑誌の編集長に就任。2013年独立。

大好きな編集の仕事を軸に、今の時代だからこそできる出版の力を見出そうと、「一度きりの自分の人生、楽しんで生きる!」と決め、一歩を踏み出す。

月に一度トークイベント「おとな塾」を開催中

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