ハタラク計画、スタート前

Story12. 誰かの役に立つって、本気でうれしい

2014.04.02更新

 今年も桜が咲きはじめました。「春が来た」というウキウキした感じと、「なんだか切ない」というキュンとした気持ちが混在します。
 私が勤めていた会社は、お堀の土手沿いにありました。この時期になると土手は桜の花で埋め尽くされ、それはそれは美しい光景です。そんな桜を毎年観るたびに「あと何回、この桜を観るのだろう」と、なんともいえない気持ちを抱いていたことを思い出します。

 若いときには桜が咲いて春を感じるとか、季節の移ろいに思いをはせるとか、そんな情緒を楽しんだ覚えはありません。それが年齢を重ねるごとに、経験を積み、多くの人たちと関わり、なんのために生きているのかとか、自分の役割はなんだろうと、次第に自分と向き合うことが多くなり、気づけば森羅万象の流れや自然に目がいくようになっていました。これが年齢を重ねるということなのかなーと。


 私は小さいときから、目に見えない世界が大好きでした。それこそ幽霊や心霊写真からはじまり、超能力、死後の世界に、生まれ変わり・・・・・・。小学校2年生のときには「死んだらどうなるのだろう」と思って怖くなって眠れなくなったことを覚えています。それが気づけば「私はなんで生まれてきたのだろう」とか、「人生ってどういうことだろう」と、"生きるということ"に気持ちが向かっていました。だから編集者の仕事が好きなのかもしれません。というのも、編集者という仕事は、どれだけ相手と真剣に向き合い、どこまで本音を出してもらえるかに尽きると思うからです。

 私は取材をとおして、大勢の方たちと出会わせてもらいました。最初のころは、有名人の方の取材をするのがうれしくて「なんて私はラッキーな仕事につけたのだろう♡」と、しみじみ喜んでいたものです。
 それがだんだんと変化していき、有名無名問わず「この人は何を大切に生きてきたのだろう」「この人の表には出ていない、心の中で抱えているものってなんだろう」と、目に見えないその人の心の奥に興味が向いていきました。肩書や風貌、活躍されている状況などの目に見える部分ではなく、視点が向くのはその人の心や、本質といわれる「目に見えない世界」。三つ子の魂百までとはよく言ったもので、人というものは変わらないものです。小さいころと同じ、見えない世界に興味があるのですから。

 そして私なりにひとつ、感じたことがありました。どんなお金持ちでも、どんなスーパーアイドルでも、どんな普通の人でもみんな一緒であると。同じように陰と陽を持っているのだと。
 人気が高かったり、注目の度合いが高いというような「陽」の部分が強いければ強いほど、「陰」もそれと同じくらい強いものであったり、「陽」の度合いが小さければ、「陰」も同じくらいの小ささであったり。つまり、人それぞれに与えられた陰陽バランスがあり、どちらが強いだけの人がいるわけではなく、絶妙なバランスを取りながら「プラスマイナス0」になっている気がしました。だからみんな平等だと、つくづく思います。

 私がつくってきた雑誌というものは、まさに陽といわれる部分に光を当てるのが役割でした。そこに夢があり、憧れがあり、美しさがあり、読者の人が雑誌をとおして少しでも喜んでくれればいいと思っていました。もちろんそれが楽しくて私もつくっていました。
 しかしこのように自分が興味をあるものを紐解いてくと、雑誌の持つ楽しさと、私が求めていた楽しさがだんだん違ってきて、だから私は雑誌から離れたのだと、だから自分で楽しいと思えるものを編集しようと思ったのだと、改めて腑に落ちました。

 結果、「人が持っている本質や心の声、かかえているもの、陰陽すべてをひっくるめて、リアルなものをつくる」と、さらに強く抱くようになりました。このような話をすると、同じように思っていた人と出会ったり、思わぬご縁が生まれたり、さらに背中を押してくれるようなことが起こったりと、不思議尽くしの連鎖が最近続いています(笑)。その不思議なことのひとつが、このミシマガジンがきっかけで生まれました。

 ミシマガジンで書かせていただくようになって、ちょうと1年がたとうとしています。私の原稿を読んでいただいて、感想を送ってくださったり、応援メッセージをくださったり、直接お会いした方から「実は読んでいるんですよ」と言っていただいたり。うれしい悲鳴の連続です。そしてそれは数カ月前に起こりました。原稿を読んでミシマ社に感想メールを送ってくれた方がいました。その方は、なんと小学校の同級生でした。卒業以来の交流なので30年以上ぶりのメールをとおしての再会でした。
 私が通っていた小学校は1学年3クラスと小さい学校だったため、ほとんどの同級生の顔は覚えています。メールをくれた方のことも、もちろん覚えていました。その感想メールがきっかけで、時々メールを交換するようになり、そして先日いただいたメールに、私の原稿を読んで「今の自分に必要な言葉がありました」と。

 ミシマガジンで書かせていただくのに、私自身の約束事として「本音と本気を書く」と決めていました。きれいごとだけではなく、もちろん書ける範囲ですが、本当の自分の気持ちを書くことは、自分のためにでもありました。「もうかっこつけたくない。まんまでいこう」と、どこかで腹をくくった(くくりきれてはないですが・笑)からです。
 その本当の気持ちを込めた文章が誰かの役に立っている、それが実感できて、ますます「私の感じたい楽しさや、しあわせはこれだ」と、同級生に背中を押してもらったというか、太鼓判を押してもらった気分です。

 そして現在、「人」を介して「リアル」で「本音」と「普遍性」を軸とした出版社をつくるために具体的に動き出しました。それはソフトの部分もハードの部分も含めてです。新しいものを生み出すため、今はしっかり土地を耕して、素晴らしい可能性を秘めた種を植えはじめました。動きはゆっくりでも、自分にとって心地いいスピードで進んでいきます。

 と、それこそ理想的な言葉を綴っていますが、一歩進んだかなと思うと二歩下がったり、思わぬ出来事に打ちのめされて落ち込んだり、自分の考えすぎ、思いすぎのクセに振り回されたりと、ヘロヘロになることのほうが多いくらいです。でもそんなとき、同級生の言葉に救われたり、誰かの役に立ってることを感じたり、「ありがとう」と言ってもらえたりすることで、「よし、やるぞ!」「楽しむぞ!」と、また力が湧いてきて進めるようになります(欲を言えば、私が100%私らしくいられる最良のパートナーが現れてくれたら百人力なのですが♪)。

 今回書きながら、前回の原稿の内容と随分リンクしている部分があることに気づきました。それだけ今、自分のすべてにじっくり浸み込ませるべきことなのかもしれません。

 2014年の春をちゃんと感じながら、ちゃんと歩いていこう!


第12回

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河田実紀(かわだ・みき)

大学卒業後、出版社に入社。主に雑誌の編集に携わる。2011年、女性雑誌の編集長に就任。2013年独立。

大好きな編集の仕事を軸に、今の時代だからこそできる出版の力を見出そうと、「一度きりの自分の人生、楽しんで生きる!」と決め、一歩を踏み出す。

月に一度トークイベント「おとな塾」を開催中

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