本屋さんの遊び方

今回の「本屋さんの遊び方」は神奈川、東京を中心に展開する有隣堂、八王子店の店長・佐古義方さんにお話を伺いました。本選びのプロである書店員さんは、いつもどのように自分の本を選んでいるのか? さっそく伺ってみたいと思います。

第9回 有隣堂八王子店 佐古義方さんに聞きました

2010.05.11更新

「平台にあるものは棚にも挿せ」

―― 佐古店長は普段、どうやって本を選んでいるんですか?

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佐古自分の店で探すことが多いですね。新刊や話題書が中心の平台よりは、棚挿しの本をじっくり見て探すほうが好きですね。各担当者が作った平台が悪いわけじゃないんですけど、ただ私の趣味と合わないというだけで。お客さんも平台はあまり見ないのかな? なんて思うことはありますね。棚を一生懸命見ているお客さんも多いし。よく「平台にあるものは棚にも一冊挿せ」って言われたりするのも、そういうことなんでしょうね。

―― なるほど。

佐古あとは、好きな著者の名前から探したり、新刊をチェックしたり。それでも良い本が見つからないときは、買って読むこともありますね。でも、それが意外と面白かったりすることもありますし。

―― なるほど。

佐古一人の作家さんの本を読んで面白かったら、他の著書も読みたくなりますよね?

―― はい、なります。

佐古そんなとき、本屋の役割としては、その著者の本をちゃんとそろえておくべきだと思うんですけど、それが簡単ではないんですよね。

―― なるほど。

佐古だからきちんとした書店員というのは、それができている人だと思います。限られた売り場の中で、どの著者をそろえて、どの著者をそろえないのか、というのは、その書店員のセンスも問われますしね。

―― いろいろなお客さんを満足させないといけないんですもんね。難しいですよね。

「本は途中でやめてもいいんです」

―― 店長は週に何冊くらい本を読むんですか? 相当読んでると思いますけど。

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佐古ん~でも、途中でやめてしまう本もありますからね。

―― あっ、一度そのことを伺ってみたかったんですけど、店長は読んでる途中でやめてしまうのは、OKだと思いますか? 僕はなんとなく、途中でやめるのはよくないかなと思うことがあるのです。

佐古ん~、それはOKだと思います。好きじゃない本を無理して読んでいると、本を読むこと自体が嫌になってきますし。

―― 確かに、そうなんですよね。

佐古勉強の本とかは別だと思いますけど、本は楽しみで読むものだから、無理して最後まで読まなきゃいけない、と思う必要はないと思います。それに読みきれなかった本は、そのまま取って置けばいいんですよ。

―― 温存しとくということですか?

佐古そうそう。そうすれば、本当になにも読むものがなくなってしまったときに、また続きを読めるでしょ。それに自分が成長して、昔はぜんぜんわからなかった本が、面白く感じるようになることもありますし。

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『虫眼とアニ眼』(養老孟司、宮崎駿、新潮文庫)p>

―― そっか~! なんだか気分が楽になりました。

佐古僕もけっこう、途中でやめることありますよ。

―― そうなんですね。ちなみに、最近はどんな本を読みましたか?

佐古宮崎駿と養老孟司の対談本で『虫眼とアニ眼』(新潮文庫)というのを読みました。すごく面白かったですよ。対談集は苦手だっていう人もいるんですけど、私はインタビューとか対談集が好きですね。

「どんどん話しかけてください」

―― 佐古店長は本屋さんに来られる方に、お願いしたいことなどはありますか。

佐古ん~、うちのお店としては、どんどん話しかけてほしいですね。

―― 話しかける?

佐古うちのお客さんはご年配の方が多いので、とてもよく話しかけられるんですけど、それがすこく楽しいんですよ。だからもっともっと、話しかけてくださるお客さんが増えるといいなって思いますね。

―― へー、そんな本屋さんって面白いですね。

佐古こちらから話しかけるのは少し難しいんですけど、ときどきご年配の方に「何かお探しですか?」ってお話しすると、とても嬉しそうにお話していただけることがあって、楽しいんですよね。
以前、アトレ恵比寿店で働いていたころは、若いお客さんが中心だったので、お客さんとお話をすることはほとんどなかったんです。だから今の店は楽しいですよ。

―― 「面白い本ありますか?」って聞かれたりすることはありますか?

佐古ありますよ。でもその質問が一番難しいですね。ただ自分の好きな本を言えばいいわけではないし、そのお客様の人となりを見たり、今までに読まれてきた本を伺ってみたりして考えますね。

「地元に愛される本屋さん」

―― 八王子店はオープンして何年目なんですか?

佐古いまは3年目ですね。八王子の本屋といえば有隣堂、と言われるような書店になろうと言ってオープンしました。もちろん今でもそれが目標です。

―― 地元に愛される本屋さんということですね。

佐古最近は、スタッフのみんなもお客さまとお話をするので、スタッフ一人に、お得意さまが一人はいるような感じになってきましたね。
もともとは、吉澤という児童書に関してはプロといえるほど、知識が豊富な女性がいるんですけど、彼女がお客さまと楽しそうに話すのに影響を受けて、他のスタッフもお客さまと話をするようになったんですよね。

―― 吉澤さんの存在が大きいんですね。

佐古ちなみに僕には怪談好きのおばあちゃんのお得意さまがいるんですけど、お店に来られたときは必ず呼んでいただけるのが嬉しいですね。「面白いものがあったら電話してね」とおっしゃっていただいたり。まだお電話をしたことはないんですけどね(笑)。

―― 面白いですね。本屋さんでも、そういう風にお客さんと話したりするって、想像したことなかったです。絶対、そのほうが面白いですよね。

佐古でも、こないだスタッフに相談されたことがありましたよ。おばあちゃんの話がすごく長くて、「こういうのを全部受けていてもいいんでしょうか?」って。やっぱり、一人のお客さんの接客時間が長くなると、誰かがその代わりをやらなくちゃいけなくなるじゃないですか。「この店はそういうスタンスでいいんでしょうか? 」って聞かれましたよ。

―― なるほど。確かにそれは悩むかも・・・。店長はどう答えたんですか?

佐古もちろん、「それでいいんだよ」って話をしましたよ。八王子店はそういうお店になりたいねと言ってはじめた店ですから。それがその通りになってるんだから、嬉しいじゃないですか。

―― 疑問に思う必要はなかったんですね。

佐古確かに大変なときもありますけど、これでいいと思います。

―― 最後に、これからの八王子店さんの目標などがあれば教えてください。

佐古これからは、新しい時代の本屋としてもっと面白くなるために、棚の構成なども見直す必要がでてくると思っています。そのきっかけとして、「オヤジの本棚」とか「乙女の本棚」なんていう棚も作ってみたいと思います。まだまだ構想段階ですから、どう転ぶかは楽しみにしていてください。

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あとは、今以上に遊びにくる子供たちがふえて、「小さいころはいつも有隣堂で遊んでた」なんて言ってくれる子が増えればいいなと思います。

―― まさに地元に根を張る素敵な書店ですね。佐古店長、今日は本当にありがとうございました。これからも、よろしくお願いいたします!

佐古こちらこそ。ありがとうございました。

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