本屋さんの遊び方

「そういう要素は無限大に増やせるね! RT @bun_bun_ko フリーペーパーだろうと、POPだろうと何でもいい。いろんなことをして、書店に来る目的が「本買う」だけの目的から、たまには「遊びに行く」ところにもなれば嬉しい」
「さっきから事務所で文庫王子と文庫姫と、山本周五郎賞の予想をああでもないこうでもないやっていた。こういうの、ほんと楽しい! とにかくめでたい! 「ふがいない僕は空を見た」おめでとPOP書こう!」

今回のお店は、三省堂有楽町店。
いつも新刊話題書がガツンと置かれ、どの書店員さんも元気に仲良く働かれていて、
お客さんもいっぱいの楽しい雰囲気のお店です。
今日は文芸新刊担当でお店のアカウント(@yrakch_sanseido)で冒頭のような
勢いあるつぶやきをされている新井見枝香(あらい・みえか)さんにお話を伺ってきました。

(聞き手・文:林萌)

第23回 三省堂書店有楽町店 新井見枝香さんに聞きました。

2011.05.25更新

基本、好き放題やってます!

本屋さんの遊び方三省堂新井さん

―― まず、今回新井さんとお話するきっかけとなった『自由が丘3丁目 白山米店のやさしいごはん』を展開いただき、ありがとうございます。

新井いえいえ。熱意でこられると、弱いんですよわたし。特にミシマ社さんは。

―― ありがとうございます。新井さんは三省堂有楽町店のツイッターを担当されてますよね。つぶやきからすごく思いが伝わってきて、知らない本も読みたくなるような身近さを感じ、ぜひお会いしてみたかったんです。

新井嬉しいです。よくお客さんもいらっしゃるんですよ。「ツイッター担当の方を」と呼ばれて「あなたのつぶやきでこの本買いました」なんて直接言われると、どんな疲れもふっとびますね。もう、超嬉しい。

―― 反応がすぐあるんですか?

新井すごいですよ。だから責任もあるし、気をつけています。前に在庫7、8冊しかない、そんなに注目されていなかった『花のズボラ飯』(久住昌之、水沢悦子、秋田書店)というマンガについて「面白い!」とつぶやいたら、翌日すぐに在庫切れになってしまって。マンガ棚の担当者に「なんかつぶやいたでしょ?」って言われて驚きましたね。

―― それはやりがいありますね。

新井だからそれ以後、在庫はあるかとか、なんでもオススメするわけじゃなくて、キチンと自分が読んで、面白いと思ったものだけを素直に伝えるようにしています。

―― ご自分の感想そのまま、伝わってきます。わたしも全然知らなかった本やノーマークのジャンルの本を、貴店では何冊も買ってます。

新井好き放題させてもらって、ありがたいと思っています。最初はお目付け役というか、チェックが入っていたのですが、最近はそのままですね。わたし、出たがりなんですよ。テレビの取材でも何でも自分から「やりたい! 出たい!」って言います。やりたそうな雰囲気出してみんなにわかってもらおうとするより「やりたい!」って言っておけば、これは新井に頼めないよ、というときに相手も断りやすいですしね。「今回はダメだよ!」って。

―― すがすがしいですね。素敵です。

新井専務の亀井がツイッターを全店でやろう、と言って始まったのですが、個人アカウントでつぶやいているときはツイッターがなんなのかよくわかっていませんでしたね。フォローもひとりとかだったので「メールと何が違うの?」という感じで。

学生時代、自分は有名人になると思っていました。

―― 新井さんは昔から本を読んでいたのですか?

本屋さんの遊び方三省堂新井さん

新井父親が本好きでしたね。歴史の本をくれました。『坂の上の雲』とか。母からは赤川次郎の花嫁シリーズを読めと言われていましたね。

―― なるほど、そちら系から入ったのですね。

新井そして中学のときは、たくさん読んでましたねBLを。

―― BL(※)ですか。また中学で全然違う方向へ行かれたんですね。

 ※BL:ボーイズラブの略。男性の同性愛を題材とした小説や漫画などのジャンルのこと

新井や、いいBLはほんとにいいんですよ! 格調高いというか。秋月こおさんの富士見二丁目交響楽団シリーズの『寒冷前線コンダクター』とか、ごとうしのぶさんのタクミくんシリーズなんか、好きすぎて2冊ずつ持ってます。

―― 女子のなかで流行っていたんですか?

新井いや、まったく。ひとりで授業中、こっそり読んでました。むっつりです。

―― (笑)。部活仲間とかとわかちあったりは。

新井部活は吹奏楽部でホルンを吹いてました。というか、中学から音大附属だったので。

―― そうなんですか。

新井それで大学に上がったとき、同級生とバンドを組みました。バンド名はnon-fumo(のんふーも)で確か、イタリア語で「禁煙」という意味です。曲つくるのが得意だったのでボーカルを探して、いい声の子がいたなーと思って声掛けたんですよね。

―― どんな曲ですか?

新井打ち込みですね。それに声をのせて・・・。月に何回か練習して、チケットさばいて、ライブしてました。有名になっちゃうから授業も出れなくなるわー、って思ってました。で、忙しくなって大学も中退して。

―― ロックですね。

新井だけどバンド間の飲み会やら付き合いが大変で、ぜんぶ白紙に戻そうと思って、解散しました。その後、アイスクリームが死ぬほど好きなので、一度はアイスクリーム屋で働かないと後悔すると思い、サーティーワンで働きました。

―― 急にキュートですね。

本屋さんの遊び方三省堂新井さん

新井一時はアイスクリーム屋になろうかと思いましたが、そこもいろいろあって辞めました。で、ある日三省堂有楽町店の近くにある国際フォーラムの就職活動フェアに行きました。三省堂有楽町店にはその前からよく来ていたんです。棚が好きで。なんだろう、好きな本がちゃんとあるんです。今思えば、きちんとメンテナンスされていたからだったとわかります。

―― 本好きの心をくすぐる棚づくりを、きちんと感じていらしたんですね。

新井ある日ふと気づいたらお店の前に「バイト募集」って張り紙があったので、その場で電話して今から面接してほしいと伝えました。まぁ落ち着けと、明日はどうだ? ということで翌日面接し、3年半勤め今に至ります。

―― その勢いのまま、今後もなにか起こしそうですね。

目下、勉強中です。

―― 以前地図ガイド担当だったので、最近ですよね、文芸担当されるようになったのは。

新井そうです。なので新刊会議で編集者の話を聞いたりするのが、楽しいですね。面白い! と思ったものは、大抵売れます。ですが、初回の数を決めるのが難しくて、今でも前任でわたしが棚のファンだった元上司に電話して聞いています。的確なアドバイスをくれるので、勉強になります。

―― 前担当だった小松崎さんには、ミシマ社の『ボクは坊さん。』を発刊前のゲラの段階で絶賛いただき、発刊時大きなワゴン展開をしてくださったんです。とても、心強くてありがたかったです。

新井いやー、本当に尊敬しています。出版社さんと話している電話を聞いていても、お互い売ることに、読者に届けることに真剣で、でもたくさんのことも同時にこなしていて・・・というか、ここのお店の人は、みんなすごいんです。

「文庫王子」と呼んでいる文庫担当がいるのですが、以前、文芸の棚の前に連れていかれて「この本はなんでここにあるの?」って言われて。一冊一冊、そこに置く意味が、意志がなきゃだめなんだと気づかせてくれたんです。それ以来、ほかの書店を見るのが楽しくなりました。見てみたら、一目瞭然なんです。意志のある棚かどうかは。

―― なるほど。

新井自動発注(※)だけじゃ、絶対お客様に満足してもらえる棚にはならないんです。文庫になってもハードカバーを一冊残しているか、それを気に掛けて補充し続けられるか。どんなに新刊を台にドカ積みしても、本読みは棚から買っていく。それを毎回きちんと補充する。そうやって、今すぐは無理でも長いスパンできちんと棚をつくっていきたいです。

 ※自動発注:売れると同時に自動的に発注されるシステム

―― 出版社の営業さんは、どうですか。

新井そうですね。いろんな版元さんがいて、面白いです。iPadでマジシャンのように営業トークする人や、「あなた絶対読んでないでしょ」という本を営業する人もいるんですよね。そういうときは、ツッコミます。「読んでないでしょ」って。

―― 言われた方は気まずいでしょうね(笑)。

新井尊敬している営業の方もいて、とくに昭文社の藤谷さん(愛称ふじやん)は、本当にすごいんです。地図ガイド担当していると、毎年夏はものすごい忙しいんです。そのときに開店前に来て他社の本も一緒に棚をつくってくれて・・・泣きそうになりました。

お店の営業中もメンテナンスしてくれてるときがあって、よくお客さんに店員に間違えられて質問されているんですね。ふつうならダメだけど、フジヤさんなら・・・とこちらも安心してしまいますね。

震災のときもすごく助かりました。自宅や家族だけでなく、倉庫とか、自社のいろんな仕事があるだろうに「この本を今、求めている人がいるだろうから」と、『震災時帰宅支援マップ 首都圏版』(昭文社)を「持てるだけ持ってきました」と直納してくださって・・・。感動しました。

―― 素晴らしい。営業の鏡ですね。やー・・・、こちらも勉強になります。

個で勝負する

―― 三省堂有楽町店では、フェイスブックもされているんですよね。

新井そうですね。これも専務の亀井が始めたことで、フェイスブック会議もします。船橋店と海老名店の人と飲み屋で話し合いました。

―― フェイスブックについて、わたしまだよくわかっていないんですよ。ツイッターといい、三省堂は早いですね。

新井専務がすすめているからですかね。海老名店のツイッターは、店長の好きな野球についてのつぶやきが多いんです。書店というか、個がすごい全面に出ててるんです。

―― そうなんですか。

新井そういうのが、いいと思うんです。そうしたら、多少遠かったとしても、野球が好きな人は海老名店で本を買ったりすると思うんです。ツイッターでこの店はこのジャンルを大切にしている、この本をこう思う感覚の人が本を揃えていると思えば、よりその店に行きたくなると思うんです。そこに信頼を置いてもらえば、ぜんぜん違うジャンルでも、この人が言うなら読んでみようかな、と思ってもらえると思うんです。

本屋さんの遊び方三省堂新井さん

―― たしかに。わたしも新井さんにお会いする以前から、好きなマンガも似ていて身近に感じたので、知らない本でも買っていました。

作家の方も、よく書店員さんのツイートをチェックされてますよね。以前、急に著者が来てサイン会が始まった様子を知り、著者と読者がまっすぐ繋がることもある時代なんだと驚きました。

新井楽しいですよね。だからわたし、仕事と遊びの区別がないんです。お休みの日もお店に行っちゃいます。

―― どうかそのまま、今後も楽しくいろんな方を巻き込んでくださいませ。今日はありがとうございました!

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