本屋さん発!

第9回 進駸堂中久喜本店発!

2013.08.10更新

 ある日、お店で一人の少年が片手に乗せた小銭を数えていた。少年の脇には本が挟んであった。
彼はその本をどこで発見したのだろうか。テレビで取り上げられたのを見たのだろうか。友だちから勧められたのだろうか。それとも店頭でその本に立てられたコメントカード(POP)を見たのだろうか。

  現在、ネットで本が簡単に買える。僕だって目当ての絶版本などはネットで買う。しかしネットで買える本は自らの知識の範囲内の本だ。レコメンド機能などでオススメが同時に表示されることもあるが、それとて知識の範囲から選択した目的の本との関連付けだ。
 自分の知識外である興味も関心もなかった本が突然目の前に現れ、無から興味と関心の的に変わるとき、それは発見となる。

以前、ハヤカワ文庫のフェアを展開したとき、陳列の基本である「本の関連付け」をした。しかしふと思った。ミステリー、SF、冒険小説とジャンルでまとまった棚をお客様が見たとき、果たしてミステリーファンに発見はあるだろうか。SFファンに発見はあるだろうかと。ミステリーファンがSF小説に出会うことは、ネットでは難しい。逆もまた同じだ。
 ミステリー小説の傑作をSFファンに読んでもらうには。SFファンにミステリーを読んでもらうには。

 そこで一度並べた本を再度並べ直した。適当に。 ジャンルもテーマもバラバラ。まったく脈絡もない陳列。ただそれだけでは手抜きのコーナーと思われてしまうのでこんなコメントを表示した。
 「ジャンルをまとめずランダムに陳列しております。お客様が興味を持った本のまわりにご自身が思いもよらないジャンルの傑作があるかもしれません。ネットの検索やレコメンドにはない、書店ならではの『発見』をお楽しみください」

第9回 進駸堂中久喜本店発! 第9回 進駸堂中久喜本店発!


 当店のモットーは「また来たくなる発見のある店」。
 店頭でお客様が目を止めた本はスタッッフが選び、目立たせ、コメントを書き、「発見」という快感をお客様に体験してもらいたいという思いがつまった本だ。
 片手に乗せた小銭を数えていた少年は、お小遣いを貯めて一冊の本を買おうと決めたのかもしれない。
読書という素晴らしい体験に書店は手助けとなっただろうか。
 少年がその本を読み終わったあと、またお小遣いを貯めて本を買おうと思ってくれるだろうか。  本を売る人、作る人。
  その責任はとても重く、そして誇りでもあるのだ。


(店長 鈴木毅)

第9回 進駸堂中久喜本店発!


進駸堂 中久喜本店
〒323-0806
栃木県小山市中久喜1345-6
TEL:0285-30-1115
営業時間:10:00〜22:00
HP:http://www.shinshindo.net/index.htm
Twitter:@shinshin_do

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