本屋さん発!

第33回 カモシカ書店発!

2014.08.24更新

 カモシカ書店のカモシカは羚羊(かもしか)のことで、それはサン=テグジュペリの「人間の土地」の砂漠のエッセイに由来する。
 定有堂書店の奈良さんの言葉に「本屋には青空がある」という言葉がある。
 その伝説的な言葉を私もまた信じているのだが、その思いを、餌付けされた状態から野生に回帰するカモシカたちに託した。
 本には、「自由」と「世界の広さ」を感じさせる力がたしかにある。
 そして、「自由」であるには勇気が必要であることも本が教えてくれる。
 自分がどれだけ小さい存在かということも。

「人間の土地」の忘れられない言葉がある。
「真の贅沢とは、人間関係の贅沢だ」
 私自身、どんなにきつくても、豊かに感じた時間はまさに人間に恵まれているときだった。
 その環境を自分の影響できる範囲で、実現していきたいと強く思っている。
 それが私が受け取った豊かな時間に対するお礼であるし、この思いが連鎖していくことを切に願う。


 カモシカ書店はまだ開店4カ月にも満たないひよっこである。
 生まれたばかりの小鹿のように手探りで立ち上がっている。
 日々進化していることは断言できるが、まだまだ棚は未熟だし、
 商品の補充も安定しているとは言い難い。
 扱うのは古書を中心に新刊本と映画のパンフレットにも力を入れている。
 厨房を持ち、22席のゆったりした座席と北欧アンティークのカップを用意している。
 メニューはすべてカモシカ書店内で作っている。
 古書連に加入し新刊を取り扱い、レストランの営業許可を取得し、スイーツとスープを自作提供している本屋は日本に何件あるだろうか?
 私にはわからない。さらに今後こういった形態の本屋が増えるとすれば、それ自体にそれほどの意味はないのかもしれない。


 だから生まれたてのカモシカが誇れることがあるならそれは間違いなく人間である。
 今、5人手伝ってくれる人たちがいるが本当に出会えてよかったと毎日思う。
 来てくれた順に紹介すると、
 大分朝読書コミュニティ「ブンドク」を主催し、カモシカで読書会、哲学カフェを開催する元銀行員、現医大生のHくん。
 芸大生で20歳の、まちづくりに関わりまじめで礼儀正しい秘書検定を持つRちゃん。
 地元カリスマカフェの店員であり、同時に大分投げ銭ライブの最高額保持者の歌姫Aさん。
 高校の非常勤講師で、いつも必死に手を貸してくれるAちゃん。
 関東から嫁に来た、野菜ソムリエでフードアナリストでお菓子作りのセンスが抜群のMさん。
 そして、古書店が一軒もないまちに、急に生まれたカモシカを受け入れてくれている大分のみなさま。
 感謝しているし、この場で声を大にして発信したい私の自慢がみなさまである。

「今、できなくてもいい。いつできるかを語れるのが理性である」
 と何かで読んだが、大分のカモシカには理性が宿っている。
 5年あれば、九州でもっとも輝く本屋のひとつに育つだろう。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

(岩尾晋作)





カモシカ書店

〒870-0035
大分県大分市中央町2-8-1 2F
営業時間:11:00~22:00(※月曜定休)
電話:097-574-7738
HP:こちら



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