本屋さん発!

第65回 フタバ図書アルティ福山本店 発!

2016.01.10更新

 「本屋さん」とはクリエイチブな仕事だと思う。
 自分の感性で棚作りをして、気に入った本にはおすすめのPOPを書いたりする。
 棚作りの最中なんかは特に、「なんてクリエイチブな仕事なんだ!」と、思う。

 私は、フタバ図書アルティ福山本店という大型書店の一角で「伊藤商店」なる棚を展開させていただいている。私が売場をじろじろ歩きながら気になった本を掻っ攫ってきて、適当なコメントを書いて並べている。
 もともと目立ちたがりの性分が多分にあるため、何かしらで自分を発信したい!とか恥ずかしげもなく思っていて、売場から本をかき集めたジャンルレスのフェアなどやっていたのが、この形に落ち着いた。





 「伊藤商店」というお題目であるが、これは店の責任者である当時の上司が、上司の許可もとらず部下が勝手なことばっかりやるので「そんななら○○商店でもやりゃあえんよ!」と怒っていたのを聞いて、それをそのままいただいた。ちなみに怒られたのは私ではない。

 もともと本屋の作業の中で、新刊の開梱作業がとてもお気に入りだったのだが、出勤の都合上、この作業に立ち会えなくなった。あの飛び出すワクワク感が好きだったのだけど、出勤した頃にはとっくに開梱は終わっている。それが寂しくて、どんな新刊がでたのか売場を周って見るようになった。そうすると、(ちょっと半減するけど)開梱のときと同じようなワクワクに出会うことができる。気になった本があれば、その本を触って「思ったこと」をそのままPOPに書いて一緒に並べる。
 「思ったこと」なので、POPに本の内容が全く書かれないことが少なくない。
 例えば、山田風太郎の「あと千回の晩飯」という文庫を並べた際、POPには「タバコは呑むもの」とだけ書いた。正直、同著の中でそんな表現があったかどうかは定かでないが、山田風太郎がどっかでそんな風に言っていた気がしたのでそのまま文字に起こした。その本は並べた瞬間から何冊も売れてくれた。
 これは発見であるが、お客様にとっての本の入り口は、なんでもいいんだと思う。
 自分の書いた脈絡のないPOPのどこかに反応する人がいて、それがその人にとってのその本の入り口になり、その延長線上で購入してくださる。



 自分の感性をおおっぴらにして棚を創るなど、恥ずかしさの極致だと思っていた。それが他人に受け入れてもらえないと、とてもださくて恥ずかしいからだ。
 この棚を創って並べた本が初めて売れたとき、とてつもない感動があった。ぁあ!売れた!と思った。これが書店冥利に尽きるというやつなんだと、そのときはじめて感じた。
 ものすごくおおげさな言い方になるけど、自分の感性のままに創った棚に反応する人がいて、実際にそこから本が売れたり、さらにはそこから新しい出会いが生まれたりする。

 いまや業界では活字離れやネットの影響を受けて、様々なトレンドはあるにせよ、効率化や画一化が叫ばれている。もちろん必要で大事なことだと思うけど、効率化や画一化だけが本屋の生き残る方法ではないはずだ。本屋さんはクリエイチブなお仕事ですから!



フタバ図書アルティ福山本店
〒721-0961
広島県福山市明神町1-14-20
営業時間:10:00~24:00(土曜日のみ、深夜1時まで)
TEL :084-973-8780

 

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