本屋さん発!

第69回 栞日 sioribi 発!

2016.03.06更新

 はじめまして。こんにちは。
 長野県松本市でブックカフェ「栞日 sioribi」を営んでおります、菊地徹(きくち・とおる)と申します。
 今回お声掛けいただきまして、この「本屋さん発!」のコーナーに、お店のことや、最近考えていることを、綴らせていただきます。



 栞日は、松本駅の東口を出て、まっすぐに伸びる駅前大通りにあります。「まつもと市民芸術館」のすぐそばです。道に面して建っている、4階建の小さなビルが店舗です。もとは街のカメラ屋さんで、1階が店舗、2階から上が住居、という建物でした。
 今は、1階が書籍と喫茶(キッチンとカウンター席)、2階がバックルーム(このフロアには、もともと家庭用のキッチンとユニットバスがあって、店舗向きではありませんでした)、3階がギャラリー、4階が書籍と喫茶(テーブル席)といったフロア構成です。



 喫茶は、珈琲とドーナツがメインで、食事メニューはありませんが、最近トーストを始めました。



 3階ギャラリーでは、写真やイラスト、クラフト作品などの企画展を不定期で開催しています。



 ときおり、音楽の演奏会やトークイベント、ものづくりのワークショップ、料理教室なども催しています。



 さて。本屋の話でしたね。
 冒頭に「ブックカフェ」を名乗りましたが、ここまででお察しのとおり、栞日の業態を、ひと言で表現するのは困難です。
 しかも、店に並んでいる「ブック」たちが、的確に言い当てる総称を持たない個性派揃いで、ますます説明が難しい。面倒な店なのです。
 少し前までは「リトルプレスのセレクトショップ」と言っていました。しかし、この「リトルプレス」が曲者なのです。直訳すれば「小規模出版物」といったところなのですが、私の知る限りでは、明確な定義を持たない(恐らく)和製英語です。



 かつては、ページ数や発行部数、制作人数といった「数量」や、判型(本のサイズ)が「リトル」な出版物を指していた印象ですが、この数年で、一般の雑誌や単行本と、代わり映えしないスペックのものも増えました。文章や写真、デザインのクオリティも、見劣りしません。
 いま「一般の雑誌や単行本」と書いたのですが、それに対して、栞日に並んでいるような本たちは、何が「一般的でない」のかといえば(これもまた様々な側面があるのですが)、ひとつには流通形態です。
 都内の大手出版社から卸業者(業界では「取次(とりつぎ)」と呼びます)、そして全国展開している大型チェーンの新刊書店へ、といった通常の新刊書籍の流れに乗らず、本を制作した個人やチームが、自ら販路を切り拓き、販売店や読者個人に、ダイレクトに届けていく。このささやかなモノの流れこそ、私がこれらの本に惹かれる理由かもしれません。



 そもそも栞日は、そのサイズ感や文化的な気質に魅せられて暮らすことに決めた松本という街に、インディペンデントの精神で作られた魅力的な本たちを、主体的に選んで並べて紹介する、インディペンデントの精神を持った魅力的な本屋が乏しいから、という理由で始めた店です。あったら、きっと、もっと面白いのに、この街。と。



 店を始めて2年半。少しずつではありますが、本の作り手と読み手を繋ぐ役割を、この街で、担い始められているように思います。
 大きなものは、想像の及ばない規模にまで、大きくなっている昨今ですが、世界の片隅には、リアルな手応えがある、一個人、一家族、一地域、といった小さな単位に、目を向けている人たちもいます。
 僕は、そういった人たちと、小さくても確かな歩みで、心豊かに、この時代を進んでいけたら、と願い、「何屋さんですか?」と訊かれても、ひと言では返せない面倒な店を今日も開け、「これはどういった本ですか?」と訊かれても、ひと言では説明できない愛おしい本を今日も並べます。
 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

栞日 sioribi
〒390-0815
長野県松本市深志3-7-5
TEL/FAX 0263-87-5377
営業時間:8:00 - 19:00
不定休

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ミシマ社編集チーム

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