本屋さん発!

第82回 三省堂書店 札幌店発!

2016.09.25更新

明日の名作を生むために

 名作とはいかにして生まれるのか?
 とまあ、いきなり年に何百冊も本を読んでいて、自宅の床が足の踏み場もないくらい本だらけで、通うのはもっぱら神保町の古書店街で、特に近代文学には目がなくて、最近の新人作家を苦虫を噛みつぶしたような顔で見ている文学批評好きのおっさんのような(?)書き出しになったが、当然私はそういう人間ではなく、この原稿を依頼してきたミシマ社の田渕さんより少し年上で、書店員歴はアルバイト時代を含めてまだたった四年目の若造である。



 そんな私が勤務している三省堂書店札幌店は、札幌駅直結の大型商業施設、札幌ステラプレイスの5Fにある。アパレル、雑貨から映画館に至るまで様々な業種が複合している場所柄、日々老若男女問わず大勢の方々が来店される。当店自体も蔵書が多くジャンルは多岐に渡る。なんだか手前味噌な感じがしてイヤだが、ともかくそれゆえ、すべてのお客様に等しく、「この本は読んでおいて損ないですよ!」とオススメするのは難しい。本が売れなくなっている今ならなおさらだ。せめて何か万人受けする名作があれば...。名作...?

 冒頭の疑問を思い出した。名作とはいかにして生まれるのか、である。私の個人的な考えだが、それは作家の力量のみで誕生するものではない(と思う)。
 もちろん作家がいなければ作品が生まれることはないのだが、その作品を編集・出版する人がいて、読む人や評価する人や紹介する人、またそれを見て買う人が大勢いて、その営みの中で後世に残る名作は生まれていく。名作はこの世に出たその瞬間から名作ではないのだ。直木賞・芥川賞、本屋大賞の発表や、新聞広告・テレビの情報番組等、メディアでの紹介翌日から、その本が飛ぶように売れるのを見ていれば一目瞭然だ。

 だから何だ。いや、だからこそ、と私は思う。これからの書店員の使命とは、本を売るだけでなく、自分たちが名作を作ることなのではないか。つまり書店自体が一つのメディアとなり、棚の隅にある一冊の本に光を当て、一人でも多くの人に読んで、評価して、紹介してもらう為の演出をするということだ。

 それを実感した試みの一つが、今回ミシマ社さんと協力して作ったフェア「札幌で読みたいミシマ社の本」である。



 
 「札幌のあらゆる名所、銘菓とともに楽しめる一冊」をコンセプトにした、当店オリジナルのフェア。ただ一冊の本を選ぶためだけのものではなく、その時々の気分に合った本を提案するこのフェアは好評で、私のお気に入りでもある。
 実際は、打ち合わせを重ねた田渕さんや、仕掛け屋チームの長谷川さんのご尽力によるところが極めて大きい。少数でありながらひたむきに良い本を作り、そこに光を当てるためにどんな細かな作業にも取り組む姿勢は、書店員としてまさに目からウロコだった。「時間がない」と思うことはあるけれど、自分の近くに、本を売るためにこんなにも情熱を持った人達がいた。「ミシマ社をアピールしてください!」なんて言われてはいないが、本当にそう思っているんですよ、田渕さん、長谷川さん、そして三島さん。
 
 という訳で、先ほどは偉そうに名作が生まれる経緯を書き連ねたが、偉そうついでにこの条件も加えねばなるまい。

 「作り手と売り手と、買い手との出会い、すなわち、人と人との出会い」
 
 そんな風にして明日もまた、新たな名作が生まれていくのだ。


三省堂書店 札幌店
〒060-0005
北海道札幌市中央区北五条西2-5 JRタワー札幌ステラプレイス5F
電話番号:011-209-5600
営業時間:10:00~21:00 ※大晦日と1月2日・3日は10:00-18:00
アクセス:JR「札幌」駅直結徒歩3分、市営地下鉄南北線「札幌」駅徒歩5分・東豊線「札幌」駅徒歩5分

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ミシマ社編集チーム

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