本屋さん発!

第84回 ひとやすみ書店 発!

2016.11.20更新

「店主さんはいらっしゃいますか」
「アルバイトの方ですか」

と聞かれることがある。
なんとなくご期待を裏切ってしまったかのようなばつの悪さを感じつつ

「あ、僕が店主なんです」

と答える。


はじめまして、ひとやすみ書店の城下と申します。
長崎の観光地のひとつ、めがね橋が架かる中島川沿いのアパート
の三階で八坪ほどの小さな本屋を営んでおります。

なぜ冒頭のようなご質問をお客さまから頂戴するのかといいますと、
当店の入口に出している看板-----黒板式になっています------に
日替わりで本の一節、一文を板書しているのですが、
それを見て年配の店主をご想像されるそうで。

一節、一文そのものが放つ重厚感、その作家さんの
老成円熟した筆力に依るところだったわけですね、
僕を年配の店主と誤解させてしまっていたのは。

それなら頷けます。

その本に興味をもっていただくきっかけになればと始めた板書ですが、
ひとつ怖いことがあるのですそういえば。

前後の文脈あってこその一文は、
その一文が独立してあると誤解を生むこともあれば
光を放たないようなこともあります。
作家さんの意図しない印象にその本が映ってしまうこともあるでしょう。

ある方が「自殺するやつはアホだ」と発言したとして
バッシングを受けていたことがありましたが、
前後の発言まで含めて聞けば、
それがいわれなき非難であったことはわかります。

だけど、「自殺するやつはアホだ」は、
キャッチーな一言だから視聴者の目を引いたり
話題性を付加するにはすごく都合のいい一言です。

作家さんの意図するところなんて容易に読み解けないでしょうし、
読み解けたと思ってもそれは読み解けたつもりでしかないでしょうし、
つまり、どの一文を抜き出すかを
作家さんの意図に寄り添って選ぶことなんて出来ない。

出来ない以上、少なくとも「こう印象付けよう」というような、
都合のいい一文として扱うような、
安易なことだけはやるまいと思っています。

コーヒーやビールを飲んでいただくことが出来る席が数席あります。
小さいお店ですが、本のはらむ世界はあまりにも広大ですから、
その力を借りれば、広いお店と(こっそり)言ってもいいかもしれません。

大型書店やネット書店とあわせて、使い分けていただくように
たまには覗いて頂ける場所になれるよう頑張ります。


あ、あとは「店主さんはいらっしゃいますか」と
お客さまに聞かせてしまわないで済むような雰囲気を
醸し出した店主にいつの日かなれたらいいな。

ひとやすみ書店
長崎県長崎市諏訪町5-3 301

[TEL] 095-895-8523
[営業時間] 11:00〜20:00(水曜定休)
Facebook:https://www.facebook.com/hitoyasumishoten/
Twitter:https://twitter.com/hitotter16


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店へと続く階段を上ると、入口横には控えめに、店主からのメッセージが掲げられている。(編集部註)

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