本屋さん発!

第87回 マヤルカ古書店 発!

2017.01.02更新

 はじめましての方もいつもご贔屓にしていただいている方も、あけましておめでとうございます。
 マヤルカ古書店店主のなかむらあきこです。

 マヤルカ古書店は、京都は西陣というエリアの路地の奥の森の片隅にあります。日々、名前も知らない鳥たちのさえずりを聞きながらのんびりと店番していて、気づけば3年が経ちました。京都にはあまりなじみがないという方は、北野天満宮と二条城を一本の線で結んだちょうど真ん中くらい、と覚えていただけたらうれしいです。
晴れた日の木漏れ日も、雨の日のしっとりと濡れた深い森もどちらも心地いいので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

 とはいえ、わたしの京都生活は今年でまだ10年。最寄り駅まで車で30分、本屋どころかコンビニすらも徒歩20分・・・というような田んぼと芋畑だらけの田舎で育ちました。実家の庭に猟銃を持ったキジ撃ちの猟師がやって来たり、6~8匹くらいの群れをなした我がもの顔の野犬が地響きとともにやって来たり、自宅のドアを開けた瞬間にとてもとても太いヘビ(ときにはヘビとの争いに負けた鳩)が屋根からドサッと落ちて来たり・・・と外の世界はなんだか危険だったので(そういえば、おじいちゃんの畑の割れたスイカに群がっていたカブトムシがトラウマで、未だにカブトムシと、あとスイカも少し怖いです)、子どものころは、車で30分くらいのところにある図書館に連れて行ってもらっては本を片っ端から借りて読む、というような日々を過ごし、行き場のない好奇心を満たしていたような気がします。

 なので、環境はだいぶ変わりましたが、実家の部屋でひとり積み上げた本を読んでいたころも、京都の小さな町家の古本屋で本に触っている今も、わりとなんの違和感もなく地続きです。


マヤルカ古書店では、古本を中心に、郷土玩具やこけし、雑貨、新刊も少し取り扱っています。二階のギャラリースペース(2017年中にリニューアル予定)では、展示やイベントなども常時開催しています。古本屋は、本を介したさまざまな出会いがあるのはもちろん、毎日いろんなものをお持込みいただくのが楽しく驚きの連続です。数ある古本屋のなかから、「あのお店なら自分の大事にしてきたものをおもしろく活かしてくれるかも・・・」と選んで持ち込んでくれたのかもしれない、と思うと、査定にも気合いが入ります。
たぶん、店としてのカラーはあるんだと思います。マヤルカのような小さな個人店では、スペースに限りもあるので、もちろんセレクトも大事な仕事です。だけど、ありとあらゆる価値観が平等でゆるゆると並列な関係ですっと並んでいるのが本屋の特徴的なところで好きなところ。どんなものがやってきても、フラットで新鮮な気持ちで受け入れ、次の方の手元へ届けられたらいいなあと、自分のアンテナも丁寧に磨くことを心がけつつ、日々本と向き合っています。誠実査定いたしますので、買取りもお気軽にご相談くださいね。

3年間、いろんなことがありました。ほんとうにいろんなことがあるので、最近は、毎日ふつふつと湧き上がるなんとも形容しがたい陰陽こもごもの感情を、朗読や趣味の短歌づくりにぶつけたりもしています。自分でやっているのでなんの不思議もないかもしれませんが、そんな自分のことも受け入れてくれる(ような気がする)店に救われている部分も多いです。

マヤルカは、オープン当初からありがたいことにいくつかの媒体に取材していただく機会を何度かいただきました。ほぼ毎回聞かれる、「なぜ古本屋なのですか?」という質問、わたしにとっては「なぜ女性なのですか?」くらいに大きな流れに乗った結果であったような気がしていて、実はあんまりよい答えが出来たことがありません。
だけど最近、本について書かせていただいたり話したりすることが続いて、少し、だけどだいぶはっきりと、考えが変わってきました。自分にとって人生最初の記憶の断片にはもう本があるくらいに身近な存在だった本ですが、本が好きだから本屋になった、というのは少し語弊があるな、ということ。これまではお店に来てくれる方にも、それぞれがそれぞれの楽しみや発見をそれぞれにしてほしい、とそっと思っていた小さな世界を、もっと発信していきたいしとにかく読んでもらいたい、積極的に広げたいし体験してほしいなと強く思っている、ということです。


自分の人生を振り返ると、ありとあらゆる場面で本を読むことに救われてきました。出口がないかもしれないと落ち込むときも、本を読んでいたから、少し目先を変えればここではない別の世界がきっと近くにあるということをなんとなく自然に知っていました。何よりも、本は楽しい。仕上がりはあくまでもシンプル、だけど商品になるまでの過程があまりにも贅沢。手に入れるにしても探して、選んで、買う、という能動的な行動のあとに、なんとそれを、まわりの華やかで刺激的な誘惑をかわしながら時間をかけて読む、という修行のような行為を経なくては自分のものにはならない。もちろん本好きの方は、それを修行だなんて思わないのですが、よくよく考えたらそんな労苦を快感に思うなんて、ちょっと自分に対してサディスティックじゃないですか。そしてそんな自分へのサディスティックな時間の使い方をたくさんの人たちがしてると思うと、すごくしあわせな、まだまだ世の中棄てたもんじゃないな、なんていう大きな気持ちになるじゃないですか。わたしはなります。

そんな、冷静に考えたら変態的なまでの本のパワーを、もっともっとしつこく、自分なりに紹介していけたらなと、3年経って少し冷静な目でまわりを見て、改めて思っています。
さぐりさぐりではありますが、よかったらこれからも、お付き合いいただけたらうれしいです。

本をきっかけにひとりの人間の世界ががらりと変わることがある。そんな本の力を、しずかにしずかに信じています。

マヤルカ古書店
〒602-8278
京都市上京区上長者町通千本東入ル愛染寺町488-6
TEL: 090-1039-5393
営業時間: 11:00~18:00
定休日: 木、金曜
HP: http://mayaruka.com/


そんな本のパワーの一端に触れて楽しんでもらえるようなイベントをミシマ社さんと計画しています。その名も、「インドの学校 1 お茶の時間」『たもんのインドだもん』刊行記念ツアー。装丁家として活躍し、『たもんのインドだもん』の著者でもある矢萩多聞さんによる、インドの日常に欠かせないチャーイ作りのワークショップとトークイベント。より深く楽しく、本に触れ合ってもらえる時間になるのではと思います。甘く温かなチャーイとトークで、楽しい新年を過ごしましょう。お気軽にご参加くださいませ。

『たもんのインドだもん』刊行記念ツアー
インドの学校1 お茶の時間

日 時:2017年1月9日(月祝)15時~
参加費:700円
場 所:マヤルカ古書店2階

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ミシマ社編集チーム

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