本屋さん発!

第47回 根木青紅堂発!

2015.03.01更新

 7年前にリニューアルした際、シンボルツリーを、と植えた桂の木はみるみる伸びて、今や都市では見られない「電線」に当たりそうなため、幾度かの剪定を経てまた春を迎えようとしている。夏には涼しげな黄緑色の葉が茂り、お客様はもとより、我々スタッフをホッとさせてくれる存在となっている。

 当社は九州、大分県の最南東にある佐伯市という地方にある小さな本屋。大正10年に開業してから、どうにか現在まで町の本屋としてあり続けてこられた。
 創業当初、この町には他に書店はほとんどなかったようで、映画か本が娯楽という時代、きっと様々なひとが小説とか伝記、参考書などを求めて店を訪れたのだろう。そんな激動の昭和が通り過ぎ、いま、こげ茶いろの外壁の小さな店内には変わらず、本が、並んでいる。


 ゆっくり、好きな一冊を選んでもらうということ。
 手にとって、本との出会いを楽しんでほしい。
 といっても特別なことをしているわけではないし、昨今の個性派書店ブームのように多少オリジナリティは必要だと思いつつも、アピールすることにはどうも気おくれしてしまうのだが・・・。


 売れている本ももちろん仕入れるが、やはりスタッフの好きなタイプの本や、良いと思う本が集まる。

 また、古い戸棚を書架にしているコーナーがあり、そこに美術系の本、お客さん曰く「ちょっと珍しい本」が並ぶ。
 店内をぐるりと囲む棚の上には、スタッフFの集めた"古いもの"やオブジェなどが展開されており、ちょっと独特な世界を醸し出している。
 それを見にいらっしゃる方も、たまに、いる。




 お話好きなお客さんも多く、同じく話好きなスタッフが仕事も忘れて話し込む。店内入口においたテーブルでは、色々な話題が飛び交い、時折、本屋らしからぬにぎやかな笑い声が店内に響く。

 本屋の日常はめまぐるしく、しかし淡々と毎日が過ぎてゆく。決まった曜日に雑誌を買いに来るお客さん、いつもじっくりと本を選ぶお客さん......。ふつうの町の本屋が、2013年、本の表紙になったことは、筆者の曾祖父である創業者(故人)も驚いているかもしれない。

 一冊入魂のミシマ社ともつながりのある、これまた一冊を大事につくる夏葉社の『本屋図鑑』表紙には、昭和40年頃の当店の写真がそのまま再現されている。
 実は、夏葉社の本を最初に見つけて教えてくれたのは、うちの常連のお客様だった。お天気の話、景気の話、この前行ったどこそこの何がおいしかった、あまり知られてないけどこんな良い本があった。
 お客さんとの会話の中から、本のことも、それ以外のことも広がっていく。教えてもらったその出版社の本を仕入れ、そして本から人、とつながったように思う。

 そうした出来事を横目に、日常は、やはり淡々と動いていく。本も日々も、情報とともに常に運ばれ、流れていく。水流にのまれることなく、誰かの大切な一冊になり得る本をつくる、ちいさな出版社を、ちいさな本屋も応援したい。

(H.N.)

根木青紅堂
〒876-0848 大分県佐伯市城下東町1-15
TEL:0972-22-0146 /FAX:0972-24-2946
営業時間:月~土8:00~19:30/日曜9:00~18:00
メール seikodo@lily.ocn.ne.jp
ブログ http://negiseikodo.blog64.fc2.com/

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