本のこぼれ話

ミシマ社がプロデュースするビジネス書レーベル、「ビジパブ」
その最新刊、『その会社、入ってはいけません! ダメな会社を見わける50の方法』が、2月18日から全国書店で発売になります。著者の藤井哲也さんに、執筆にかけた思いを思う存分語っていただきました。

第8回 その会社、入ってはいけません! 藤井哲也さん(前編)

2010.02.17更新

はじめまして。「ミシマガジン」読者の皆さま!

このたびミシマ社さんが発行するビジネス書レーベル、「ビジパブ」より、『その会社、入ってはいけません! ダメな会社を見わける50の方法』を発刊させていただくことになりました、藤井哲也(ふじい・てつや)と申します。
宜しくお願いします!

私は、採用コンサルティングの会社を経営しています。
会社名はPASIO(パシオ)と言いまして、情熱の英訳PASSIONから名付けて、いまからもう7年前の2003年に立ち上げた会社です。
若者が情熱を持って、イキイキと働けるような、そんな社会になってほしい! そんな社会を仲間と一緒に作っていきたい! と心を込めてつけました。

「うわっ!ちょっと熱くてうざい人かも・・・」と思われるかも。
もしかするとそうかもしれません。

ただちょっと熱いのには理由があるのです。

いま私は31歳ですので、会社を作ったのは、24歳のときでした。
そこから更にさかのぼること5年、大学に入って目的もなく、ただ無駄に日々を過ごしていたとき、「旅に出よう!」と思い立ったのがはじまりです。19歳の夏!
旅先を探しているときにふと目に飛び込んできたのが、「四国八十八か所」だったんですね。

ちょっとした旅というか、ふらっとした気分転換のつもりで第1番札所につき、2日目には、「間違えた・・・ここにはくるべきじゃなかった・・・」と思いましたが後の祭り。
四国八十八か所まわりは、おそらく皆さんが想像している以上に過酷です。2日目くらいに足にマメができはじめ、そこからは足の激痛との闘いの日々です。
「なぜ俺はこんなことを・・・」
「帰ろう! そうだ帰ればいいんだ!!」
「いや、いま帰ったら、あいつ(友達)や親が『あれ? もう帰ってきたの?』とバカにするかもしれない」
「仕方ない・・・もう少しだけがんばってみよう」

こんな自問自答を、日々繰り返すこと、数十日。歩き遍路で、お金もあまり持っていなかったので半分野宿生活をしながら、四国一周を目指しました。四国一周は3600、3700キロメートルと言われていますので、まさに日本列島を北から南まで歩くのと同じ距離です。

雨の日も風の日も・・・という感じで、歩き続けてわかってきたことがありました。

「人間って意外にちっぽけな存在なんだな」ということです。

どうせ一度の人生ならば、思いっきり生きてみたい! どうせ思いっきり動くなら、何か人のためや社会のために役立ちたい! と思ったのです。

いろいろ考えた結果、固まったのは「ホームレスを世の中からなくそう」という目標でした。
それは日本はもちろん、世界からです。果てしなく遠い夢ですが、一度決めたからにはやるしかありません! しかしどうすればそれを実現できるのか?

真っ先に思いついたのが、政治家になることでした。
そこで議員インターンシップをやりましたが、あの世界の奥深さに触れて、「深すぎる」と思い、すぐに方向チェンジ。次は「そうだ! 経営者になってお金をたくさんかせいで、ホームレスをなくす財団をつくろう」と思いました。
単純すぎます。

経営者になるためには、まずは営業力がなければだめだ、と思って学生アルバイトの紹介事業というのをやってみました。しかし、すぐにうまく回らなくなり、仲間も見限って去っていき、自分ひとりだけが細々とやっている感じに陥りました。 

「まずい、やはり誰かから営業についてきちんと学ばねば」

そこで一度就職しようと思い、ふつうに就職活動をします。いまから思えば当時は有効求人倍率1.08。就職氷河期の真っ最中でした。
「あいつ(友人)、合コンばかりだったのに、なぜ都市銀から内定を・・・」などという嫉妬心を抱きつつ、遅いスタート(3月終わりごろから)ながらも挽回しようと動いて、なんとか1社から内定獲得したのは、5月の終わりくらいでした。

それは人材派遣の会社でした。
入社した会社は、かなりの営業会社で、営業の手法を身につけるという面では最高の環境でした(泣)。
毎日7時半出勤で、夜の23時半までみっちり仕事。
非常に厳しい規律があり、朝礼は大声で社訓を唱和、営業ノルマに追われる日々。

いろいろと経験を積ませてもらいましたが、いよいよその会社を退職する日、上司からいわれたのが、「流石、苔をむすばず」ということわざでした。

「退職を繰り返せば、人間味わい深い趣、器というものが持てないぞ」という意味です。
その言葉が間違っていないことを、私は、人材派遣の営業の仕事を通じて実感していました。

昼間、お仕事を紹介する求職者の方の多くは、最初に入った会社をすぐに辞めて、その後、ふたたび正社員になることなく、派遣社員や契約社員、アルバイトの仕事を転々としている人ばかりでした。
確かに若いうちは食えるだけの収入はそれで得られるかもしれません。
しかし、結婚して子供を持ったり、または急に病気になったりした時、蓄えもなく、頼る人もいなければ、ホームレスや生活保護受給者になってしまわざるを得ないだろう、と思ったのです。

そこで独立するときに、「私が経営する会社のミッションは、一人でも多くの人が、最初に入った会社を長く勤めて、最低限の能力を身につけられるお手伝いをしよう。そうすることで、ホームレスのレールに乗る人を少しでも減らそう」と決めたのでした。

そうして、今までわたしは7年にわたって、採用コンサルティングの仕事をやってきました。
仕事柄、多くの会社の退職希望者と面談しました。
多くの会社の人事担当者、経営者の方と話をしました。
派手なことはいっさいない、地味~な仕事です。仕事内容自体は精神的にハードですが、同時にそこには大きなやりがいがありました。

しかし30歳を超えた時、私には想うところがありました。
もし「80歳くらいで死ぬとすれば、あと50年しか生きられないじゃないか」と、ふと思ったのです。
「あと春夏秋冬を50回しか経験できないうちにこの世からいなくなってしまう!」

「このまま確かにコツコツと事業をしていても、年間10人、20人の不幸を減らすことはできる。ただ、このペースで仕事をしていても、何も社会は変わらないし、ホームレスをなくす、という夢へはとても到達できないじゃないか」と思ったのです。

社会を変えよう!

そのためには何ができるか?

よし、自分がこれまで経験してきた、退職の現場や退職者の声をまとめて、経営者や人事の方を対象とした「人が辞めない組織づくりの法則」の本を出して、世の中の会社を変えてやろう!
本は、きっと世の中を変えるだけの力を持っている。
そんな本をつくりたい、と私は昨年の夏に思いついたのです。

(つづく)


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藤井哲也(ふじい・てつや)

人事コンサルタント。(株)PASIO代表取締役社長。町工場を経営する親の長男として1978年誕生。2001年立命館大学法学部卒業後、人材派遣会社に就職。これからの日本社会を憂慮し2003年9月に会社設立。以後、若手求職者の就職支援事業を経て、現在は大企業から中小ベンチャー企業まで幅広く、若手社員の早期離職を減らすコンサルティング事業を展開。社員定着手法「リテンション・マネジメント」という概念を日本に普及・定着させた。将来の夢は「世界から飢餓をなくすこと」。

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