本のこぼれ話

 益田ミリさんが英語の本を!?
 数年前、ミシマ社メンバーたちも「へ~」「いったいどんな本なんだろう」と驚きの声をあげました。まったく想像がつきません、といった表情で。
 2014年1月30日、日本全国に、同様の衝撃が走ったのではないか。そんなふうに妄想たくましくする私(本書の担当編集者)が、著者の益田ミリさんに、とっておきの制作秘話をうかがいました。
 編集した人間が言うのもなんですが、かなりユニークな方法で本書は練りこまれました。そして、本書の執筆を通して、益田ミリさんが発見された数々は、ぜひとも多くの方々にお届けしたいものばかりです。
 ちなみに、『みちこさん英語をやりなおす』は、ミシマ社では『ほしいものはなんですか?』以来となる益田ミリさんの書き下ろしコミックエッセイでもあります。

(聞き手・構成:三島邦弘)

第29回 『みちこさん英語をやりなおす〜am・is・areでつまずいたあなたへ〜』益田ミリさん特別インタビュー

2014.02.04更新

日本語も英語も同じと思えたときから

―― 途中段階での発見で、いちばん大きかったものはなんでしょう?

益田何回も質問してもいいっていう土壌ができたとき、自分が同じパターンで質問しているのがわかってきました。
それは、日本語と違うことにイライラしてたんです。日本語だとこうなのに、となんでも日本語を基準に、日本語みたいにすれば良いのに、という発想から先生に質問をしちゃう。それに気づいてから、日本語も英語もちゃんとできてる言語だなって思えるようになり、もっと謙虚な気持ちになれました。

―  なるほど。独立している言語として捉えられないでいたんですね。日本語のように考えればいいのに! って。

益田そうなんですよ。自分が話している言語が、1番なじみがあるからよくできている気になるけど。

― 独立している言語だと受け入れて、謙虚になってきたなって思われたのは、勉強のどれくらいの段階ですか?

益田ロールケーキのあたりかなあ(※本書のキーワードです。ぜひぜひ本書でご確認ください!)。日本語と英語、2つのロールケーキのどっちもおいしいと言われて。

―― なるほど。日本語的にしか発想してなかったら、「私は~へ行く」と言うのが普通なのに、どうして英語は「私、行く~へ」みたいになるんだろうって、モヤモヤされてたんですね。

益田そうなんです。けれど、日本語も、数を数えるときに、一本とか、一個とか、一匹など、いろいろと言い方を変えている。違う言語を使う人から見れば、とても不思議な感覚なんだろうなと。英語の語順について考えるようになってハッとしました。そういう感覚に敏感になってくると、英語の勉強が楽しいと思えるようになりました。


ついに大発見!

―― 私のほうは、基本中の基本と思っていたことが、案外わからないことが多く・・・。1時間くらい考えて、ちょっとこれは宿題ですねってことも何回かありました。

益田とんでもないです。いつも、完成しているパズルをひとつひとつ分解するように細かく教えていただきました。そして、ある日、すごい発見に・・・。

―― それは読んでのお楽しみということで。ぐふふ。

益田「鳴くよウグイス平安京」に通ずる一生忘れない英語ダジャレの発明ですね!

―― ですから、このサブタイトル「am・is・areでつまずいたあなたへ」にひっかかった方にも、ちゃんとプレゼントが用意されています。

益田私も迷ったときは今でもアレを思い出します。1人称、2人称、3人称という言葉が怖くなくなりました。アレさえあれば。

―― そういうのも、ひとつひとつ自分たちで作りながら、道を拓いていった、そういうテキストですよね。

益田これを読んで英語がぺらぺらになるということはないんですが、これを読んだら、英会話教室に行ってみようかな、という気持ちにはなれる。英会話教室の初心者クラスでも自己紹介がありますが、ちょっとしたことでも言えないものです。みち子さんは、最初の自己紹介で"I am forty year old."って言うのをドキドキしながら言うんですけど、このドキドキは間違っているんじゃないか、恥ずかしいっていうドキドキです。それが、最後のほうには堂々と言えるようになるんですね。ちなみに、正解は yearにsがつく。覚えています(笑)。

―― ちゃんと意味をわかって言えるようになる。
これは動詞だからこうだ、複数にはsがつくから、ということを「わかり」ながら、自己紹介ができる。単に暗記しているのとは全然違いますよね。

益田本当に。言えるようになったことってそれぐらいなんですけど、全然違うんですよね。


ストーリーにもご期待ください。

―― 多くの人がつまずいていたであろうことばかりが掲載された、「英語入門書の前に読む入門書」。そんな本ができたという思いがあるのですが、あらためて、英語以外の本書の魅力をご紹介いただけますか。

益田そうですね~。
 みち子さんという主人公は、娘のまさみちゃん、夫の三人家族です。ショッピングストアで働いているのでそこの同僚がいます。そんな人間関係のなかで生きているみち子さんが、普通の生活の中で英語を学ぶ。そういうストーリーもあります。なので、テキストとしてだけでなく、漫画としても、読んでいただけます。

―― 英語を学ぼうっていう動機がまったくなくても、面白いですよね。
英語が媒介となって、みち子さんという人の人生が変わっていく感じが体感できる。英語をひとつの素材というか媒介として捉えてもらえれば、そこから見えてくるものがいっぱいあると思います。

益田あるある。私自身もありました。

―― みち子さんを教える島田先生の存在は?

益田つまずくことは良くないって言われますが、島田先生は、「つまずき方がその人の個性だ」と肯定する。それが素晴らしくて、島田先生めっちゃ良い先生だ〜と思いました。「つまずき方がその人の個性だ」は、島田先生という人物をずっと描いていて自然に湧き上がってきたセリフです。

―― 先生自身も成長していくんですよね。

益田はい。それと、先生の恋バナにも注目です(笑)。

―― 英語入門の前に読む入門書という前代未聞の一冊でありながら、ストーリーにも目が離せない。『みちこさん英語をやりなおす』、お話をうかがい、私も読みたくなりました!(笑)。

★ミシマ社編集部よりお知らせ

 『みちこさん英語をやりなおす』をお買い上げいただいた皆さまへ。
 本書にはさまれております「特製 読者ハガキ」をお送りいただきますと、ミシマ社編集部より「益田ミリさんオリジナルハガキ」(あの「大発見」が描いてあります!)で返信させていただきます。お便りお待ちしております。


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益田ミリ

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。

主な著書に『すーちゃん』『結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日』『どうしても嫌いな人』『すーちゃんの恋』などのすーちゃんシリーズ、『週末、森で』『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(以上、幻冬舎)、『オレの宇宙はまだまだ遠い』(講談社)、『夜空の下で』『泣き虫チエ子さん』(以上、集英社)、『おとな小学生』(ポプラ社)、『ほしいものはなんですか?』『みちこさん英語をやりなおす』(ミシマ社)などがある。作を手掛けた絵本『はやくはやくっていわないで』(平澤一平・絵、ミシマ社)は、第58回産経児童出版文化賞を受賞。『だいじなだいじなぼくのはこ』(平澤一平・絵、ミシマ社)も大人気。

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