本のこぼれ話

『今ある会社をリノベーションして起業する』奥村聡(ソシム)

 7月10日、ミシマ社編集・制作、ソシム発売の『今ある会社をリノベーションして起業する』(奥村聡著)が発売となりました。

 ミシマ社では、平川克美先生の『小商いのすすめ―「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』や『「消費」をやめる―銭湯経済のすすめ』、西村佳哲さんの『いま、地方で生きるということ』など、地域に根ざした身の丈に合った仕事の仕方、生き方を考える本を発刊してきました。
 本書は、"儲ける"ことだけが目的ではなく、生きること=働くこと、会社=みんなの居場所であるような働き方をより実践的に紹介するビジネス書になります。

 不動産をリノベーションするように、会社をリノベーションするという方法――
 一方で適職に出会えずにさまよう人たちがいて、もう一方には、事業承継に悩む180万社の会社がある、本書がその二つを結ぶきっかけになれば、と願っています。

 今回は7月15日にパルコブックセンター吉祥寺店にて行われたイベントレポートをとおして、初の著書となる本書で著者の奥村さんが伝えたかったこと、制作の裏話などを、前後編にてお届けします!

(構成:星野友里、構成補助:松重鮎子、写真:池畑索季)

第36回 『今ある会社をリノベーションして起業する』奥村聡さん(前編)

2014.08.02更新


小商い「実践」の書

 簡単に自己紹介をしますと、昔は司法書士の仕事をしていましたが、今は、後継者がいない小さい会社、もしくは財務内容が悪くて潰れそうな会社をできるだけ残していきましょう、といったお仕事をしています。

 今回の本は、ビジネスマンや起業を目指すママさんなどに向けて書いているのですが、じつは僕の仕事のお客さんの大半はそういう方ではなくて、60歳を超えた社長の方がほとんどです。「後継者はいなし売上げも下がってしまった」とか、「下請けをやっていたけど、上の会社が海外移転して仕事が来なくなった」といった方に、この本に出てくる手法などを用いながら、できるだけ存続させていくサポートをするということをしてきました。

 ただ、それが相当きつく感じられてきたんです。というのも、この本で紹介した手法を使えば、たとえば借金が多すぎてもバサッと整理していいところだけ取ったり、赤字事業はやめて黒字事業だけ引き継いだりすることはできます。でも、そもそも、それを実際に受け継ぐ人が会社の中にいないというケースが多々あるんです。

 そこで、誰か第三者が必要だということで。世の中でずっと言われている後継者不足だとか、技術の伝承ができなくなるだとか、そういった社会問題に対して、会社内部でどうこうするという今までのやり方ではなく、会社の外の全然違うところから人をつれてきて会社を再生させる方法を考えてまとめたのが、本書になります。

 今回、『消費をやめる』や『小商いのすすめ』の著者・平川克美さんが帯コメントを書いてくださっているのですが、平川さんの「小商い」という概念には、大きな影響を受けています。「小商いをやるんだ」とか、「色々なお店がカラフルにあったり、色々な人が色々な働き方をしている、そういったものを応援したい」という方に、早く使ってほしい。そんな本です。


大きいものには巻かれるな

 ではここで、今日会場に来てくださった方に「このあたりに関心があって」というのがあれば教えていただきたいのですが、どうでしょう?

参加者 仕事柄、地方のいろいろな街に行くのですが、最近はどこの街も似かよったチェーン店で溢れるようになって、日本的な個性がなくなっているような危機感を抱いていました。それから、自分もいつか銭湯などのリノベーションと組み合わせて起業したいという思いもあって。そんな中でこの本に出会い、とても感銘を受けて本日参加させていただきました。

 ありがとうございます。すごに役に立つと思いますので、ぜひご活用いただけたら嬉しいです。
 街のお話がありましたが、不動産屋さんの営業マンが一番褒められるのは、駅前の一番いいところに、コンビニや牛丼屋、ドラッグストアといったいわゆるナショナルチェーンを引っ張ってきたときなんだそうです。でも、普通に考えて、「駅前の街の顔となるところにそんな店ばかりあってどうするんだ」というふうに思うんです。

 そんなことをしていたら、外から来る人が、「この街に住んでみたい」と思わなくなりますよね。街に住む人たち自身が、「自分たちの街を個性的にしていかねばならぬ」というところをわかっていない。そこをどんどん、ボディーブローのようにやられていく。これはほんとに怖いと思います。

 それから、平気で大きいものに巻かれようとしますよね。コンサルティングの仕事をしていると、たとえばずっと大手の下請けをしている会社は、どう見ても赤字にしかならないような下請けの仕事を歯を食いしばってやっていたりします。そういうふうに、「大きいところはよい。ついていくべきだ」という風潮がすごくあると思うんです。

 でも、大きいところは、大きくなればなるほど下請けの利益をどんどん削っていくし、海外に移った途端、下請けの仕事がなくなったりする。だから、そういうところだけに頼ってしまうとものすごく怖い。そこのあたりをもう少し考えなければいけないと思うんですよね。なんだかしょんぼりしちゃう話なんですけど・・・。


「連帯」すること

 そこでどうやって対抗していくかというと、僕は「連帯」だと思うんです。連帯、強くつながる。
 僕は内田樹先生の道場に通っていて、今回帯コメントもいただいたのですが、内田先生がよく例に挙げるのは、ネット難民の話です。家が借りられなくてネットカフェに寝泊まりする人たちが増えているというニュースがあったとき、内田先生が、「みなで連帯して部屋を一つ借りればいいじゃないか。お金だって安くなるよ」という話をされていて。

 まさに、そういうことなんですよね。同じように、小商いの会社だったら小商いの会社同士、連帯して対抗していけばよいし、一市民としても同じことだと思います。

 僕らは「分断」されて弱くなったということを、すごく強く感じるんです。ビジネスをやっているとよくわかるのですが、相手を分断することでより売れるんですよ。たとえば、仕事を誰がやっても同じというところまで細分化して、正社員を減らして非正規社員を増やそうとか。

 最近よく思うのは、みんなでくっついてもう一回ちゃんとコミュニティをつくり直せば、大概の問題はうまくいくんじゃないかなと。たとえば育児の問題だったら、その家族だけで頑張ろうとしないで、コミュニティの中で誰かに預けられればいい。それを資格や制度がどうとか言い始めるとややこしくなる。僕らが幸せに生きるには、「もう一回つながって助け合う」という本当に当たり前のことをやっていく。さらに言えば、それでできるだけお金に頼らない。そういうふうになれば、世の中どう変わっても死にはしないと思います。

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奥村聡(おくむら・さとし)

ビジネスバトンプロデューサー・司法書士。1975年生まれ。23歳で祖父の会社の倒産に直面。2009年より、引き継ぎコンサルタント業務開始。 後継者不在や社長の死亡、財務状況の悪化など「存続の危機」にある中小企業300社以上を支援。分社手法や法的ツールを駆使した作戦を立案し、会社に関係する人々の利益を最大化できる出口を追求。 近年、事業承継を革新の機会とするために後継者とタッグを組むケースが増加。この手法を広め、地域の経済や暮らしを守ることを目指す

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