本のこぼれ話

『今ある会社をリノベーションして起業する』奥村聡(ソシム)

 7月10日、ミシマ社編集・制作、ソシム発売の『今ある会社をリノベーションして起業する』(奥村聡著)が発売となりました。

 ミシマ社では、平川克美先生の『小商いのすすめ―「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』や『「消費」をやめる―銭湯経済のすすめ』、西村佳哲さんの『いま、地方で生きるということ』など、地域に根ざした身の丈に合った仕事の仕方、生き方を考える本を発刊してきました。
 本書は、"儲ける"ことだけが目的ではなく、生きること=働くこと、会社=みんなの居場所であるような働き方をより実践的に紹介するビジネス書になります。

 不動産をリノベーションするように、会社をリノベーションするという方法――
 一方で適職に出会えずにさまよう人たちがいて、もう一方には、事業承継に悩む180万社の会社がある、本書がその二つを結ぶきっかけになれば、と願っています。

 今回は7月15日にパルコブックセンター吉祥寺店にて行われたイベントレポートをとおして、初の著書となる本書で著者の奥村さんが伝えたかったこと、制作の裏話などを、前後編にてお届けします!

(構成:星野友里、構成補助:松重鮎子、写真:池畑索季)

第37回『今ある会社をリノベーションして起業する』奥村聡さん(後編)

2014.08.03更新

*前編はこちら


ラブレターのつもりで書きました

奥村ではここから、この本の編集を担当していただいたミシマ社の星野さんと対談という形で。今回すごくありがたかったのは、編集が、こちらの穏やかな女性で・・・。男の怖い編集者だったらいやだなぁと思っていたのですが(笑)

星野(笑)

奥村働いている女性の方にも届けたいと思っていたので、星野さんに受け入れられたら、この本はオッケーなんだと思って書いていました。だから、ラブレターをね、書くというようなつもりで。

星野それは知らなかったです(笑)

奥村そしたらですね、星野さんにあるとき「なんだかこの文章の書き方、読者に近すぎますね」と言われたんです。それってけっこうショックじゃないですか。「なんか、顔近い」みたいな感じで。

会場(笑)


最初は小説だったんです

星野じつは最初この本の原稿をいただいたとき、まるまる一冊、小説の形だったんです。

奥村女王様みたいな税理士が出てきて、弁護士の男を蹴っ飛ばすみたいな(笑)

星野それはそれで面白くて、一気読みしたんです。その原稿でも会社をリノベーションするということが書かれていたのですが、結局「やり方がわからない!」というのが読み終えたときの感想でした。なので、一冊読み終えた人が「リノベーション起業」を実践できるようにしたいというのがスタートにありました。そこからほぼ一冊分、十万字くらい書き直していただいたのですが、早かったですよね。

奥村そうですね、早かったですね。まあでも、ほんとね、全部書き直せって言われたときはショックですよね(笑)。

星野その結果、ストーリーも少し残りつつ、具体的なステップがわかりやすいから起業について知識がない人でも入っていける、そして読み物としても面白い、読み応えのある一冊になったと思います。奥村さんの人生も語られていますね。

奥村あらためてこの本を出して、みんなに「いろいろあったんですねぇ」と言われるのですが、僕は全然、色々あった感じがなくて。

星野たしかに、どうやら大変な人生の方だというのはプロフィールから知っていたのですが、初めてお会いしたときもこういう雰囲気でいらっしゃったので、全然そう見えないなと。

奥村相続などの仕事もけっこうやってきて、人の死と破産、お金の終わり、離婚、倒産、そのあたりを見すぎたんですよね。だからほんとに麻痺していて。今回面白いのは、そういう終わりのところ、ネガティブなところに対して、フレッシュで前向きな若い人をぶつけてくるところなんですよね。

星野そうですね。普通、起業の本は「こういうふうにやったら確実に儲かります」といった前向きなことが書いてあるものだと思うのですが、この本はむしろ「こういう危ないことがありますよ」というのが多い。でも、だからこそ信頼できると思います。なので、すでに起業していて困っていることがある方などにも、ぜひ読んでいただきたいと思います。

奥村うん、そうですね。


「小さい」は、強い

奥村僕は、最初に司法書士事務所をやっていたんです。2年目から年収2000万円、一番いいときでは3000万円くらいあって。「サラ金からお金取り戻します」といったスタンスで、おそらく、資格業でネット使って仕事を取りにいった最初だったのですね。お金が自動販売機で出てくるような感覚でした。

星野そんな時代があったのですね。

奥村ただね、そうしているうちに発想が、もう「人と付き合うのめんどくせー」とか「お金で全部解決したら楽だよね」となってしまって。これはちょっと、まずいと思った。 それでその道を辞めたんです。 やっぱり、自分が成長していないのにお金だけポンと来たら、人間おかしくなりますよね。それで、今度は「じゃあ、組織として日本一の法律系事務所にしよう」と。規模を取りにいったんです。

星野そんな歴史が・・・。

奥村3年目で、埼玉のある地域では一番大きい事務所になって。でも、そこからがひどかったんです。人が増えれば増えるほどお金が減っていって、トラブルも出まくる。もう大変だったんですよね。「これは苦しい。どうしよう」と思っていたときに・・・スタッフみんなを集めて、「俺もう、社長辞めるわ」と。

星野ああ、本に出てくる場面はそこからつながるわけですね。

奥村そう(笑)。そのとき思ったのが、仕組みをつくれていないものが大きくなってしまったら、ほんとうにエラいことになると。あと、大きいところは、会社を維持するために常にある一定以上の売上を取らなければいけないから、じつは強くないんだなって。
 反対に、小さいところはあくまで身の丈で、自分たちを満たすのに十分な売上だけあればいい。そう思うと、かなり選択肢があるはずなんですよね。


なによりもまず、「コンセプト」!

参加者実際に「リノベーション起業」することが決まったとき、一番最初に起こすべきアクションは具体的にどういうことになるんでしょうか。

奥村まずコンセプトをつくること、これがすごく大切です。今まで不況だったのは、事業の内容が環境にフィットしていなかったからなので、継いだあともそのまま同じことやるのではやっぱりキツいと思うんです。そこに、もう一つ別の価値をどうつくっていくか。そのコンセプトをしっかりつくることが大切だと思います。

星野この本にも「コンセプトを作る」という章があって、そこで奥村さんが出されているアイディアや具体的な事例が、編集をしていてすごく面白いなと思いました。こうやって今までと違うコンセプトをつくるんだなって。

奥村そう言ってくれる方が多いです。実際にこの本、コンセプトのところさえあればいい(笑)。会社をリノベーションする場合だけではくて、ゼロから始める場合でも同じで。どこにでも通用すると思うんです。そこはすごく、読んでもらえると嬉しいなと。

星野今日は本にも載っていないお話をたくさんうかがえて楽しかったです。ありがとうございました。


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・・・いかがでしたでしょうか。『今ある会社をリノベーションして起業する』、まだ「起業をしたい」とまでは思っていなくても、何となく事業承継が気になるという方、小商いに興味がある方、すでに経営をされている方・・・たくさんの方に手にとってみていただければと思います。

 フェイスブック上にこの本の読書会ページができています。ご興味のある方はこちらもご覧ください。

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奥村聡(おくむら・さとし)

ビジネスバトンプロデューサー・司法書士。1975年生まれ。23歳で祖父の会社の倒産に直面。2009年より、引き継ぎコンサルタント業務開始。 後継者不在や社長の死亡、財務状況の悪化など「存続の危機」にある中小企業300社以上を支援。分社手法や法的ツールを駆使した作戦を立案し、会社に関係する人々の利益を最大化できる出口を追求。 近年、事業承継を革新の機会とするために後継者とタッグを組むケースが増加。この手法を広め、地域の経済や暮らしを守ることを目指す

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