本のこぼれ話

「生駒ちゃん」の撮り方

2015.11.21更新

 この度、縁あって乃木坂46の生駒里奈さんの写真集の撮影を担当することになりました。
 これは自分にとって、とても念願のことであり、まさに奇跡的に実現したことなんですね。

 今まで写真を、女性を、いろんな<彼女>を撮影するなかで、
僕は女性に対していつだって、敬いの気持ちと、神聖なる気持ちと、反面ヨコシマだったり、恐怖心であったり、不信感であったり、
様々な感情が常に交錯しながら、撮影してきたわけですが、
生駒ちゃん(愛称で呼ぶことにします)は、今の僕が、心の底から撮りたいと思い続けていて、自分のなかに潜む「女性に対して抱くネガティブな感情を浄化させてくれる存在」なんだなって、思います。

 2012年に刊行したエッセイ『<彼女>の撮り方』のなかで、
はじめて生駒ちゃんを撮影した時のエピソードを収録している(P.130 生駒里奈さんとデートする写真の撮り方)のですが、

(彼女〉を撮るときは、「いかにしてカメラを意識させないか」が大切なのですが、こちらが気をつけなくても、生駒ちゃんはまったくカメラを意識していなかったので、そんな天真爛漫な彼女を前にした場合は、今まで僕が積み重ねてきた写真の技術の一切合切を手放してしまい、生駒ちゃんの世界の中に溶け込んでいくように、写真をはじめた頃の自分に戻りながら、一緒に動物を観て驚き、笑い話などしながら、自分の好きなように、生駒ちゃんの好きなように撮ることが、結果的に良かったのだろうと思います。
(以上、『<彼女>の撮り方』より引用)


 上野動物園で、見習いカメラマンが片思いデートをするというシチュエーションだったのですが、
まだ撮影慣れしていなかった生駒ちゃんの素の魅力を引き出すことが、うまく出来たんじゃないかなと思っています。

 そんな彼女も、来月二十歳になります。
 僕らなんかよりも、ものすごく激動で、苦しみと喜びに満ちたアイドル時代をくぐり抜けながら、たしかな成長を遂げているように見受けられます。
 それでも生駒ちゃんは、あくまで生駒ちゃんであって、変わりゆく思春期のなかにも、決して変わらない彼女の魅力を、一冊にまとめることが出来ればと思っています。

 きっかけは、昨年末のスポーツ紙の取材での一言でした。
 来年の目標に「制服姿とか10代の記念になるような写真集を出したい」と書いてあって、紙面の見出しになったことから、ファンの皆さんが写真集が出ると勘違いしてしまって、
慌てて本人が訂正(出るわけじゃなくて、あくまで目標であること)したのを、見ていたんです。

 これまで何度かグラビア撮影をさせていただいた際にも「写真集を出したいです」と話していたのを思い出し、もしも出せるなら絶対に自分が撮りたい!と思い続けていたので、
Twitterで、


 このように呟いたところ、多くの反響をいただきました。
 もちろんそれで、何かが動くわけでもないのですが、
今年に入ってから僕は、いろんな撮影現場で、いろんな人にとにかく「生駒ちゃんの写真集が撮りたいんです」と言い続けていました。
 言霊といいますか、何がどう繋がって、夢が実現するか分からないですから。

 現実としては、写真集はそんなに簡単に出せるものでもなく、
乃木坂46のソロ写真集が出るようにはなりましたが、人気順(本が売れる指標として、数字で測れる握手会の売り上げがとても分かりやすい)に出始めていたので、
生駒ちゃん本人も、諦めているような雰囲気の言葉をネット上で見せるようになったり、
僕自身も、早く撮らないと10代が終わってしまうけれど、自分の力ではどうにもならないし、やはり現実は厳しいなあ・・・と諦めかけていたんです。

 そんななかで、今年の夏にファンの方から、
「早くしないと、生駒ちゃんの10代が終わってしまいますよ!写真集撮らないんですか?!・・・待ってます!」
とメッセージをいただきまして、心に火がついたといいますか、

 急がなければ。今しか撮れない写真がある。
 何とかして、写真集を実現させなければ。

 と奮い立ち、再びTwitterで呼びかけることになります。



 生駒ちゃんのファンから、ものすごい量のメッセージが届きました。
 僕はそれらをまとめて、何とか乃木坂46のスタッフの方や、プロデューサーの秋元さんに届けようと考えていたのですが、
ファンの方が、今までのソロ写真集を刊行している幻冬舎の見城社長にメッセージを届けてくださり、
見城社長と生駒ちゃんの誕生日が同じという奇跡もあったりしながら、検討しますということになり、
秋元さんにもトークアプリ755を通じて話が届いて、検討したうえで写真集を刊行する!という流れになりました。

生駒里奈、ソロ写真集発売が755で決定! ファン要望に秋元氏と見城社長動く


 その時僕は、撮影で海に来ていて呑気にスイカ割りをしていたのですが、
突然、幻冬舎の編集の方から電話が来て知って、海に向かって叫んで喜んだのを、覚えています。

 呼びかけ始めたのが8月1日で、写真集決定が8月4日でした。
 ファンの皆さん・見城社長・秋元さん、その他ご支援いただいた皆さんのおかげで、今こうやって写真集を作ることが出来ています。
 僕はいま、まさに夢の中にいます。そして、夢中に生駒ちゃんを撮っているのです。

 生駒ちゃんって、とてもドラマチックで、物語の主人公のような存在だと思います。
 漫画をこよなく愛する生駒ちゃんですが、まさに少年漫画の主人公のよう。

 田舎の秋田から出てきて、クラスの中心にいるような子ではなくて、どちらかというと内向きな子だったけれど、急にアイドルになり東京に出てきて、なんとセンターを任される。
 こんな自分につとまるのか・・・自信のないなかで葛藤もありながら、成長していく姿。
 普通のアイドルは、疑似恋愛的にハマる人が多いところ、生駒ちゃんの場合は、ちょっと違うように思うんです。
 時に妹のように見守りたくなり、娘のようでもあり、少年のようにも見えたり、とても大人っぽい表情や仕草も、ふと見せる。
 天真爛漫、万華鏡のような変貌。
 そして何より、ダンスなどのパフォーマンスをしている全力な姿に、胸を打たれます。
 いつだって、真剣に、真摯に。これぞ、主人公のあるべき姿で、素の生駒ちゃんなんです。

 主人公は、常に運命に翻弄されるものです。そのなかで逃げ出さず、自分で考えて道を進みながら、涙を成長に変えてゆく。
 自信がなかったり、ネガティブだったり、でも少しずつポジティブに己を変えてゆこうとする姿は、僕自身の生き方とも重なっていたりして、
 異性であっても、自己を投影できる新しいアイドルの姿だと思います。

 写真集の内容を生駒ちゃんと話し合った時に、
「高校に入って、すぐ乃木坂46一色になったので、普通の高校生としての思い出がないんです」という言葉をきっかけとして、

 生駒里奈の失われた女子高校生時代を、ウブな男子から見た目線(=僕の作風です)で再現する

を中心テーマとして、さらには
二十歳になるまでの生駒ちゃんの20年間が詰まった、一生の記念になるような写真集

を撮ろうということになりました。
 まさに昨年末に目標にしていた「制服姿とか10代の記念になるような写真集を出したい」を実現しようということです。

 もちろん売り上げも大切ですので、話題性も考えていますが、それだけで消化されてしまうことなく、
ファン以外の人たちにも、幅広く生駒ちゃんの魅力が届くような写真集になるよう、尽力しています。

 ただいま半分ぐらい撮影が終わったところですが、
撮影した写真を見ながら、とても満足しています。
 なぜなら、上野動物園ではじめて撮影した時に感じた、生駒ちゃんの純真な魅力が、
いまでも変わらずに、写真の世界で爆発して見えるからです。

 来年2月頃に、発売を予定しています。
 どうぞ、ご期待ください。

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青山裕企(あおやま・ゆうき)

1978年愛知県名古屋市生まれ。2005年筑波大学人間学類(心理学専攻)卒業。2007年「キヤノン写真新世紀」優秀賞(南條史生選)受賞。
サラリーマンや女子高校生など“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親像などを反映させた作品を制作している。
著書は『ソラリーマン』『思春期』(ピエ・ブックス)、『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)、『〈彼女〉の撮り方』(ミシマ社)など。
好きな食べ物は、抹茶系全般とココイチのカレーと一蘭のラーメン。好きな動物は、ペンギン(グッズ収集家)。誕生日の覚え方は、「よい子(4.15)」。
長所は、晴れ男。座右の銘は、「愛嬌は、老けない」。

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