本のこぼれ話

『外国人が見つけたKYOTOグルメ&アート ~Ki-Yanギャラリーをめぐる』Marta & Ki-Yan(ミシマ社)

 この11月に発刊した、『外国人が見つけたKYOTO グルメ&アート』。ポーランド出身のデザイナー、マルタさんが、「キーヤン」こと木村英輝の絵に惚れ込んだことから生まれた、アート・ガイドブックです。
 でも実はキーヤン、絵師になったのは還暦を過ぎてから。以前は日本のロック黎明期のプロデューサーとして、数々の伝説の舞台を残してきました。
 そんなキーヤンが、きたる12月15、16日に「繪舞台 琳派ロックVOL.1」として、ミュージカルをプロデュースします。いったいなぜ...!?
 琳派ロックにミュージカル、そしてちょこっと本のこと。木村先生に伺ってきました!

(聞き手:新居未希、田渕洋二郎 構成:田渕洋二郎 写真:新居未希)

木村英輝 出会い頭に。(1)

2015.12.10更新



出演者は、出会い頭で。

――このミュージカルでは、尺八や琴、狂言があると思ったら、ピアノにトロンボーン、さらにはシターラまであります。出演者はどのように選ばれたのですか?

木村出会い頭や。たまたま、昔からの知り合いとはじめることになっただけやね。僕の場合はいつもそうなんやけど、一つの目標やイメージがあってそれに向かおうというのではなくて、具体的に出てきたものでやっていく。昔、村八分(日本の伝説的ロックバンド)をプロデュースしたのも、僕は最初から村八分みたいなバンドを作ろうとおもてやったわけでもなくて、山口冨士夫(村八分のギター担当)が僕の家に訪ねてきたことが始まりなんや。そうして始めたことが、いつの間にかやりたいことになってる。

――なるほど。

木村今回のミュージカルもそんな感じやねんけど、やっぱり尺八とかお琴の人とかは、ロックなんてやったことないから少し戸惑ってたかなあ。出演者はそれぞれの分野ではトップクラスの人たちだけど、普段はなかなか一緒にやることはなかった。でもそれが今回ひとつのことをやる中でどんな化学変化が起こるのかが楽しみやね。「新しく融合されたものをつくる」というのは僕のテーマのひとつやから。たぶん世界で初めてだと思います、この組み合わせでひとつのステージになるっていうのは。まあでも最初からこういうことをやろうっていうのではなしに、たまたまこうなっただけやけど。


繪舞台 琳派ロック 公式パンフレットより



アートってなんやねん。

――琳派とロックというのも「新しい融合」ですね。

木村琳派っていうのは本当にタブーがなくて、固定観念もないのがいいんやね。それにその時代のものにいろいろ引っ掛けてやってて面白かった。だから僕がやるんだったら、ロックとダンスと絵とかがみんな一緒くたになった舞台にしたいなと思って。

 あと、琳派って、自然と一緒にやってるやんか。いま、アート、アートいってるけど、もともとは日本人はアートなんて言わへんかった。アートっていうのはヨーロッパの人の考えで、「アートをする人間がいちばん偉い」という考え方に基づいてるわけや。アーティフィシャルな技術やテクノロジーをもった人間が最高やという考えになってる。

 でも我々東洋人というのは人間がいちばん偉いんじゃないし、人間は自然の一部や、というふうに思っている。琳派なんか見てると平気で自然に溶け込んで描いてるやろ。僕はそういうことをすごく、メッセージにして世界に伝えていきたいと思う、だからこのミュージカルの主催も、「What's art?!実行委員会」になってるやろ。現代のアートってなんやねんって言ってるわけで。それが僕らの主張なんやね。


チーム名としての「キーヤン」

――今日もチーム「キーヤン」で描かれてますね。

木村そう。僕自体がもともとデザイナーやし、プロデューサーやったから。一人ですべて書くというよりも、僕らがやりたいという一つの構想をみんなで具現化していくことの方が大事やと思っている。だからいろんなチームを組んでやってる。そりゃまあ、一応下書きやらは僕が描いてるんだけど。実は昔の琳派なんかは、みんなそんな風にやって描いてるんやね。金箔を貼るのとか、細かいのは弟子が描いたりもしてる。それで、それをまとめるコンダクターであり、プロデューサーが俵屋宗達だったりする。そうでないと、あんなの一人でやってられへん。

 さっきの話ともつながるけど、日本人は人間が一番だと主張してないから、みんなでやるっていうのがいい。ヨーロッパだと、ミケランジェロが〜、とか言って個人ですべてやるんだろうけど。日本人はみんなで絵を描いていたわけだし、僕はそういうのがいいなと思っている。


「キーヤン」の名付け親は小松左京

木村あと「キーヤン」って名前の話だとこれをつけてくれたのは実は小松左京なんや。昔、放送朝日っていう雑誌を作ってるAAPという会社にアルバイトに行ってて、そこでの体験が僕の人生を変えた。そこには、小松左京やとか加藤秀俊とか梅棹忠夫とかそういう人文系の人が出入りしていて。そういうチームに僕は若造やけど入ってたわけや。それまでは喧嘩のことしか知らんかったから、全然違う世界やった(笑)。
 クリエイティブとかコンセプトとかみんなそんなこと言うわけやねえ。で、そんな専門用語を使うとかっこええ思うて僕も丸覚えしていった。先生方も僕みたいな人を珍しがってくれたんやね。それで、僕の勢いに感動して、キーヤンってあだ名つけたのが小松左京やったんや。

(つづきます)

  


公演情報
【繪舞台 琳派ロック】

平成27年12月15日(火)16日(水)
昼の部 開場13時30分/開演14時
夜の部 開場18時30分/開演19時
●料金:全席自由 前売一般4,500円、前売学生(中学生以上)3,500円、当日一般5,000円、当日学生(中学生以上)4,000円
●会場:京都府立府民ホール アルティ(烏丸通中立売御門前)
●主催:What's Art ?! 実行委員会
●共催:琳派400年記念祭委員会、創〈公益財団法人京都文化財団・株式会社コングレ共同事業体〉
●後援:京都府、京都商工会議所
●協賛:髙島屋、リーガロイヤルホテル京都
●特別協力:ジャポニスム振興会
●チケット取扱:京都府立府民ホール アルティ、チケットぴあ、ローソンチケット、他

お問合せ:What's Art ?! 実行委員会
電話:075-254-2888


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木村英輝 Ki-Yan(きむら・ひでき)

絵師。1942年大阪府生まれ。京都市立美術大学(現・市立芸術大学)図案科卒業。同大講師を務める。
日本のロック黎明期に、日本初のロックフェスの開催、村八分のオーガナイザー、内田裕也とのワールド・ロックフェスなど数々のプロデュースを成し遂げ、伝説を残す。
還暦より絵師に。究極のアマチュアリズムを標榜し、「『ライブ』な街に絵を描きたい」と手がけた壁画は国内外で150カ所を超える。作品集に『生きる儘』『無我夢中』『LIVE』など。
木村英輝オフィシャルWebサイト

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