本のこぼれ話

『外国人が見つけたKYOTOグルメ&アート ~Ki-Yanギャラリーをめぐる』Marta & Ki-Yan(ミシマ社)

 この11月に発刊した、『外国人が見つけたKYOTO グルメ&アート』。ポーランド出身のデザイナー、マルタさんが、「キーヤン」こと木村英輝の絵に惚れ込んだことから生まれた、アート・ガイドブックです。
 でも実はキーヤン、絵師になったのは還暦を過ぎてから。以前は日本のロック黎明期のプロデューサーとして、数々の伝説の舞台を残してきました。
 そんなキーヤンが、きたる12月15、16日に「繪舞台 琳派ロックVOL.1」として、ミュージカルをプロデュースします。いったいなぜ......!?
 琳派ロックにミュージカル、そしてちょこっと本のこと。木村先生に伺ってきました!

(聞き手:新居未希、田渕洋二郎 構成:田渕洋二郎)

木村英輝 出会い頭に。(2)

2015.12.11更新

目で見たものだけを描く

――先生は「京の惣菜あだち」で野菜を描く際に、実際に野菜を投げて描かれたとお聞きしました。

木村そうそう。やっぱり自分の目で見てから描かなあかんと思う。だから野菜に躍動感を出すために、実際にザルに野菜を入れて投げるんやね。そうしないと描けへん。「イメージで描く」っていうのは嘘やと思うんや。評論家とかそういう人たちは自分で絵を描いたことがないからそういう風に言いたがるけど、描いてる人間からしたらイメージを絵にするというのは絶対嘘やと思う。

京の惣菜 あだち(外国人が見つけたKYOTOグルメ&アートp100より)

――おお!

木村そう思うようになったのも美大の入試がきっかけかかもしれへんな。僕が受けた年の課題が「炭鉱」やったんよ。ちょうどその時代はエネルギーが石炭から石油に変わりつつあって、炭鉱が全部潰れていったわけや。

 周りの受験生はみんなそれまでファンタジーというか、異様に幻想的な世界を美大の傾向やていうて先輩やらみんな描いとったわけや。でも炭鉱言われたら幻想的なこと描きにくいから困ったらしい。僕はそんなことも知らずに炭鉱のおっさんを5人・・・今も忘れへん、下に3つ上に2つを画面いっぱいに顔だけ描いた。それで顔が今も使っているウルトラマリンっていう色と黒とオペラという赤三色で描いたんよ。そしたらその評価がすごく高くて受かれたんや。イメージあるんですかって言われるんやけど、イメージなんかあらへん。描けるもん描いてるだけや(笑)


今の画法も出会い頭。

――絵を描き続けられるなかで、変化などありますか?

木村んー、そやね。僕はロック出身やから、描くとしたらサイケデリックでアヴァンギャルドなものを描きたかった。最初の壁画はサイやったんやけど、金で縁取りしたショッキングピンクの、ガーッと迫ってくるようなやつを描こう思って。それで建物がドイツ風だったから、ショッキングピンクで塗る前にとりあえずこげ茶の柱に似た色でサイに下塗りしてたんやね。

 そのとき、僕は絵を描くのがはじめてやったから、友達みんなに電話してたんや。「俺は絵を描きだしたからなあ」と。そしたら来る人来る人、友達が「カッコええなあこれ」っていうもんだから、もうカッコええって言うてるしショッキングピンク塗るのやめとこうと思って。そうして生まれたのが今の画法なんや。やから自分はこういう画法を目指そうとか思ったことはなかった。出会い頭にそういう画法にめぐりあっただけ。

 ええ加減な話なんやけど、僕は正直でいいと思ってる。自分自身がイメージみたいなものにこだわらずに、そういう風になっていくのはね。



小説はあかん。

(左)『チャップリン自伝(上・下巻)ー若き日々』チャップリン(新潮文庫)、(右)『増補版 ビートルズ』ハンター・デヴィス(草思社)

――最後に本の話を少しだけさせていただけますか...。

木村僕はね、人の書いたもんはあんまり読むの嫌いやねん。

――そうなんですか!?

木村さっきのイメージの話とつながるけど、特に小説とかはフィクションやし、特に嫌いや。映画もそうなんやけど、なんかあの、真っ暗の中でプロデューサーとか監督、シナリオライターが考えたことを、じっとみるのが嫌やねん。作家の手のひらの上で転がされてるみたいで。
 まあ強いて言うならば、本でもチャップリンの伝記やとか、ビートルズの伝記やとかそういうのは読んだけどね。


  

公演情報
【繪舞台 琳派ロック】

平成27年12月15日(火)16日(水)
昼の部 開場13時30分/開演14時
夜の部 開場18時30分/開演19時
●料金:全席自由 前売一般4,500円、前売学生(中学生以上)3,500円、当日一般5,000円、当日学生(中学生以上)4,000円
●会場:京都府立府民ホール アルティ(烏丸通中立売御門前)
●主催:What's Art ?! 実行委員会
●共催:琳派400年記念祭委員会、創〈公益財団法人京都文化財団・株式会社コングレ共同事業体〉
●後援:京都府、京都商工会議所
●協賛:髙島屋、リーガロイヤルホテル京都
●特別協力:ジャポニスム振興会
●チケット取扱:京都府立府民ホール アルティ、チケットぴあ、ローソンチケット、他

お問合せ:What's Art ?! 実行委員会
電話:075-254-2888


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木村英輝 Ki-Yan(きむら・ひでき)

絵師。1942年大阪府生まれ。京都市立美術大学(現・市立芸術大学)図案科卒業。同大講師を務める。
日本のロック黎明期に、日本初のロックフェスの開催、村八分のオーガナイザー、内田裕也とのワールド・ロックフェスなど数々のプロデュースを成し遂げ、伝説を残す。
還暦より絵師に。究極のアマチュアリズムを標榜し、「『ライブ』な街に絵を描きたい」と手がけた壁画は国内外で150カ所を超える。作品集に『生きる儘』『無我夢中』『LIVE』など。
木村英輝オフィシャルWebサイト

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