本のこぼれ話

 去る11月2日。福岡の名門書店ブックスキューブリックの箱崎店にて、熱い、熱いイベントが開催されました。
 題して、「これからの街」を考えよう 〜建築・出版・書店、それぞれの視点から〜。
これからの建築・出版・書店はどうなっていくのか? そしてこれから街はどうなっていくのか? 先日発刊した『これからの建築』著者の建築家・光嶋裕介さんと、『ちゃぶ台』『ちゃぶ台vol.2 革命前々夜号』の編集長であるミシマ社・三島邦弘との対談で見えてきた「これから」とは?
 後半では、10年前、全国に先駆けて街ぐるみのブックイベント「ブックオカ」を立ち上げ、まちの本屋の最前線を走る大井実さんも加わって、さらにヒートアップしました。

 二日間にわたってお届けします。福岡の熱い二時間をぎゅぎゅっとどうぞ!
 また、今週末の11月19日(土)には、岡山にて、「これからの町」を考えよう~建築・学問・出版 それぞれの視点から~のイベントもございますので、ぜひお越しくださいませ!

(構成:田渕洋二郎 構成補助:中谷利明)

光嶋裕介×三島邦弘×大井実トークショー「これからの街」を考えよう ~建築・出版・書店、それぞれの視点から~(2)

2016.11.16更新

考えるな、感じろ。

光嶋働き方もこれから変わっていくでしょうね。人工知能の進化もすごいし。

三島実は本の世界も、編集の仕事も人工知能に抜かれる日は近いとおもうんです。

光嶋あぁ〜、将棋とか囲碁の世界だとすでに抜かれてしまっていますもんね。

三島そうです。だからそのときに、正解・不正解、良い・悪いというようなものさしとは全く違うところで、常に勝負していかなくてはならない。同じ土俵に乗っからないところで、やっていくということが大切です。

光嶋ぼくも全く同じことを思っていて、建築の図面にせよ、模型にせよ、パソコンで数値入力して、3Dプリンターで出させたほうが手でつくるより精度がよくて、きれいですよ。世界中の設計図のビックデータとしてアーカイブしたら、「40平米の家を4000万の家でつくりたい」といれたらピピピッと「最適解」を計算してくるかもしれない。
 でも、手描きの図面が持ってるオーラというか、美しさがあって、「これパソコンやん」ってなった途端、複製可能なものになってしまい、手描きの図面や手づくりの模型に宿る計り知れない物語のようなものがこぼれ落ちてしまうのです。

大井こういう話になると、いつもブルース・リーの名言、「DON'T THINK FEEL」を思い出すんです。これがキーワードなんだよね。この言葉は、戦いのシーンで、弟子に「考えるな、身体で感じろ」という形で言われるんです。いま人工知能のお話もされてましたけど、コンピュータは計算できるけれども、言語化できないものだったり、数値化からこぼれ落ちるようなものをパッと直感的に掴み取るのは、さすがに機械にできません。だからまずは感じる事が大事なんだと。まさに「DON'T THINK FEEL」

光嶋うんうん。感じることって数値化できないじゃないですか。たとえばこの本が1800円というのは数値に現れるものの一つに過ぎない。けれど、本の質感、手触りなんかは数値化できないですよね。でも実は人間ってそういうものをトータルに捉えているように思います。FEELの部分には引っかかるポイントがいっぱいあるから、面白い。
三島ふんふん。

光嶋僕最近、「プロに論語」というミシマガジンの企画で、能楽者の安田先生と『論語』の対談をしたんですよ。それで改めて『論語』や関連図書を読みなおしたら、すごかった。中国の都市を造るとき、「気の流れがいいところにお墓を建てる」とか、まさに数値化できないところで決める。僕が「生命力」と言っているのとあんまり変わらない。「都市を造るということ」の項目の第一行目に「土地を卜(ぼく)する」とも書いてあって、つまり占い師なんですよ、建築家は。科学的な根拠もなく、「あそこです」とか「あの山です」とか言いながら壮大な建設をはじめるんです。

大井日本では、空海もそういう存在でしたよね。

光嶋そうです。だから結局、「卜する」からスタートしていてこれこそ「FEEL」の方。「THINK」では絶対に「卜する」はできないです。頭の中の思考だけに依存していては、閉じてしまう。だから僕はもっと未知なるものとしての「生命力」を手掛かりにして、いまもずっと考え続けています。


アーティストとデザイナーの違い

大井いまの光嶋さんの話を聞いていて、人工知能の問題って、アーティスト的なのかそうじゃないのかということも関わってきてる気がします。人工知能ってあくまでアーティストではなくて、デザイナー的なんです。デザインというのは公約があって、それに対して最適な回答をするということ。ところがアーティストというのは公約なしに自分がやりたいからやる。自分のなかの深いところから出てくるものをただ形にする。

光嶋おお!

大井いわゆる職人的な発想をしている人はクオリティを問われるけど、アーティストはクオリティを問われない。すごく個別な物語を提示して、それに対する賛同者を得ていくことのほうが大切ですよね。

三島たぶん人工知能にしてもなんにしても、今やっていることを取って代わられるけど、取って代わられた先に、人間がどうあるべきなのかを考えることが大切です。建築家なら「どういう建築をつくりたいか」、僕らなら「どういう本をつくりたいか」、本屋さんなら「どういう本を売りたいのか」とか。

光嶋そういった意味でも、「THINK」と「FEEL」をひたすら行き来することが大切ですよね。今日だって、僕がひとりでもやもや考えてたら、いろんなことを考えてメモを作ることはできるかもしれない。でも三島さんと大井さんとこうしていろんな球を即興的に投げ合うことによって、「俺こんなこと考えてなかったのに、こうや!」みたいな風になることが、たぶん「THINK」から「FEEL」に揺れ動ける唯一の手がかりなんですよ。セッションが好きなのは、そうした思いがけない発見があるからなんです。

ちゃぶ台第三弾のテーマは?

三島実はこれ最初に言っておきたかったんですけど、ここ5年間ずっと光嶋さんの近くにいて感じるのは、大物とかと仕事するとき、パッパッパッと同化していく力が本当にすごいんです。
たとえば井上雄彦さんが「ガウディ展」で絵を描いたときに、光嶋さんが「ガウディ展」の公式ナビゲーターを光嶋さんが担当したときとか、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーのステージセットとドローイングを手掛けたときとか。光嶋さんの技術があるのはもちろんですが、相手相手に対しての同化が本当に早い。

光嶋ありがとうございます。

三島僕はそれが「これから」というものを作っていくんじゃないかなと思うんです。この態度、姿勢は、僕自身も本当に学びたいと思ってるところだし、多くの人と共有できればと思っていたんです。だからこそ、光嶋さんには、ミシマ社10周年創業記念イベントで来てもらいたかった。

光嶋それ最初に言ってくださいよ(笑)。じゃあ僕からも最後に一つだけ、次の『ちゃぶ台』のテーマを勝手に大胆予測していいですか? 1号が「移住」で、 2号が「食」と「会社」。そうしたら3号は「ファッション」ですよ。ぜったい。

三島おおー!

光嶋「衣」です。一番最初に「衣食住」って言ったでしょ?
ちゃぶ台って、「衣食住」を逆にいってるんですよ。「住食衣」。
言葉が人をある意味では不自由にするのと同様に、洋服も人を拘束し、不自由にするでしょ? 絶対に。そこに自由を獲得する革命を探るんですよ、次は「ファッション」ですよ! 

大井へそ曲がりだからなぁ。言われたらやらなそう(笑)

三島ふっふっふっ。

光嶋そしたら僕がしゃべりますよ(笑)僕が「建築とファッション」で。

三島うーんどうなるんでしょう。来年をお楽しみに!

「これからの町」を考えよう ~建築・学問・出版 それぞれの視点から~

【出演】三島邦弘(ミシマ社代表) × 光嶋裕介(建築家) × 松村圭一郎(岡山大学文学部准教授)

【日時】2016年11月19日(土) OPEN 16:00 / START 16:30

【会場】旧内山下小学校 体育館(岡山市北区丸の内1-2-12)

【参加料】前売一般 1,500円 / 当日一般 2,000円 / 学生 1,000円(前売・一般)/ 小学生以下無料

【ご予約方法】こちらのHPより、メールか電話にて承ります。

  

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