本のこぼれ話

 4月に新しいシリーズ「手売りブックス」がスタートします。
 と、宣言はしたものの、まだまだどんな形になるのかは練りこみ中。もっともっと面白いシリーズにできればと、日ごろからいろんな本の届け方に挑戦しているご近所の本屋さんにお声がけして座談会を開催しました。集まってくださったのは、一乗寺にあるマヤルカ古書店の中村さんと恵文社一乗寺店の鎌田さん、そして祇園にある京都天狼院の山中さん。新しい本の届け方や、「手売りブックス」について、白熱した座談会を2日間でお届けします!(2日目はこちら

(構成:田渕洋二郎 写真:新居未希)

小さな本屋の書店員たちが語った、まだまだ本の届け方はいっぱいあります(1)

2018.01.25更新

こんな売り方あったのか!

三島今日は、「本を届ける」というところから発想したときに、本作りにも本の届けかたにも、まだまだ可能性があるんじゃないかなということを考えていきたいんです。みなさんは本を売るときにこんなことをしてます! というのはあったりしますか?

マヤルカ書店 中村(以下:中村)うちは古本屋なので、普段はあまり本の宣伝ってしないんです。それは、1冊の本を宣伝してしまうと自分の色が出すぎてしまって色んな本が集まらなくなってしまうからなんです。でも、『今日の人生』のゲラを読んだときに、これだ! って思ってしまって、ツイッターとかフェイスブックとかで紹介したんですね。そうしたら、わざわざうちの店で買ってくださるお客さんもいらっしゃいました。

三島おお、いいですね。マヤルカさんは展示スペースも素敵ですよね。

中村ありがとうございます。展示スペースに作家さんがやって来て、イベントで手売りをしてくださることもあります。古本だとどうしても新刊書店のような華やかな変化はないので、展示などで動きができると楽しいですね。

恵文社一乗寺店 鎌田(以下:鎌田)イベントで作家さんに来ていただくと、その後も店頭でよく売れるんですよね。その作家さんの熱量というか匂いみたいなものがお店に残っていって、自然と売れるんです。売り手も著者の方にお会いするとしないとでは全然違います。

 あと、届け方というか見せ方では、うちだと「変な文脈のなかに置く」というのは意識してます。例えば、高野文子さんの『るきさん』というコミックエッセイがありますが、この本、コミックのコーナーよりも児童文学の近くに置いた方が売れたりするんです。海外文学にしても、通好みの本ばかりの棚もかっこいいんですけど、これから入りたいという方のためにきっかけになるような本も置いておきたい。アメリカ文学のコーナーにボブディランの詩集をそっと差しておいたりします。

京都天狼院 山中(以下:山中)面白いですね。うちは変なことばっかりやってるので、参考にしていただけるかはわからないのですが......。年末年始は福袋をやりました。テーマ別の福袋にして、「カメラを撮りたい人向け」、「ビジネス系」、「文学系」「クリエイティブ系」みたいな。「このお客さんなら絶対買ってくれる」と、お客さんの顔を想像しながら作ったので、とくに売れ残る心配もなかったです。でも結果として、そのお客さんが買う前に他の方が買ってくださったり(笑)。

三島なるほど。うちの「ミシマ社の本屋さん」でも福袋をやっているんですけど、また全然違った層のお客さんがいらっしゃりそうですね。

山中そうかもしれないですね。うちのお店だと、本屋さんと気づかず、ふらっと立ち寄るお客さんが多いですね。あと舞妓さんもたまにいらっしゃいます。舞妓さんって基本的にはあんまり浮いちゃうような空間に行くことができないらしくて、その点、うちの店は気軽に入れるとおっしゃってました。

三島へえ、面白いですね。

山中最近だと外国人のかたが多いので、1ヶ月ごとに海外の人向けの本が増えてますね。松尾芭蕉や村上春樹さんの日本語の本も外国の方が買われることもあります。あと、スタッフがけっこうお客さんに気軽に話しかけますね。この前「本屋で話しかけられるとは思わなかった」と言われました(笑)。


声かけをする本屋さん

三島山中さんのお話を聞いてて、すごいいいアイデア思いつきましたんですよ。

山中えっ、なんですか?

三島アメリカに行ったときにバーンズ&ノーブルという本屋さんに入ったときのことを思い出したんですけど、アメリカの本屋さんってお客さんが店に入ると「ハーイ」て挨拶してくれるんです。それがすごくよくて。

 そのときは一人旅だったので、ときどき誰とも話さないで1日が終わる日もあった。そんな日が続くとちょっと寂しいなと思うことあって、そんななかで店員さんが「何か探してる?」みたいな感じでフランクに声をかけてくれたのがすごく嬉しかったんです。

山中おお!

三島だから、めっちゃ声がけするんです。本屋さんで。人が行きたくなるような雰囲気というか、活気があったほうがいい。最近大きな本屋さんが元気ないと言われがちなのも売り場が余りに静かだからじゃないかと思うときもあるんです。

山中そうですね。うちは書店の出身のスタッフがあまり多くないので、むしろそういう書店のカルチャーをあまりもっていないからそういう感じになるのかもしれません。

中村うちみたいな小さな古本屋だと、こちらから声をかける前にお客さんが話しかけてくださることが多いです。こちらからは何も聞いてはいないんですけど「なぜわたしがこの本を買うか」ということを説明してくださる(笑)。レジに持ってくるときに、「これね〜」って感じで。

鎌田いいですね。僕も普段はそんなにお客さんに声はかけないんですけど、この前、こちらから初めて声をかけてしまって。そしたらめちゃくちゃ喜んでくださいました。でも、僕が声をかけることによって「好きっていったらこの関係崩れてしまうかも」みたいな心配も片方であるんです。

三島ロマンチックやな〜!(笑)


手売りブックスって何?

三島実はこの4月に「手売りブックス」という新しいシリーズを始めようと思っていて、これはまさに「届け方」から発想したシリーズなんです。先日の打ち合わせでいしいしんじさんと話していたんですが、このシリーズはいわゆる「商品」ぽくない、ゴツゴツした感じがいいのではという話になったんです。

 普通の商業出版だと、ある程度の初版部数が決まっていて、うまくいけば何部増刷して......。と考えていきます。そうすると編集するにも、「たくさんの人に読んでもらうには、このくらいのページに抑えよう」とか、「きれいな構成にしよう」、となって、なかなか変な玉が入れられなかったんです。

一同 なるほど。

三島でもそういう、ちょっと変な部分というか、普通の商品としての本ではカットされちゃうような部分もどんどん入れた方が、本当のファンにとっては嬉しいんじゃないかって。

鎌田そういうの、読みたいですね。どんな感じの内容なんですか?

三島こういうラインナップです。

・いしいしんじ『きんじょ』
・松 樟太郎『究極の文字をめざして』
・佐藤ジュンコ『おんなのめしあるき』(「おんなのひとり飯」改題)
・丹所千佳『よろしな。』
・宮本しばに『みんなのおむすび』


「コーヒーと一冊」シリーズよりも少部数で、もっとリトルプレス的にやりたいと思っています。

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