本屋さんと私

作家の方々は、本屋さんとどんなつきあい方をしているんだろう。
自分が書いた本が並べられる場所にたち、どんなことを感じているのだろう。
そんな素朴な疑問からたちあがった連載です。
毎月、気になる作家さんに、本屋さんの「お話」をうかがいます。

第1回 ミリさん、本屋さんに行く (益田ミリさん編)

2009.07.02更新

連載第一号は、『すーちゃん』『OLはえらい』などで大人気の益田ミリさんにご登場いただきました。

多くのミリさん作品では、ふだん女性が感じている、けどなかなか言葉にできないでいる「なにげないこと」が、等身大の形で表現されています。その「なにげないことに潜む切実さ・まっすぐさ」が、読む人の心にすーっと落ちてきて、「そう、そう」と何度もうなづくことになります。もちろん、ミリさんファンは女性にとどまりません。男性にも、「そうだよねぇ」と思わせてしまう魅力に溢れています。

その理由はなんでしょうか。

と思ってお話をうかがってみると、なるほど、本屋さんとの接し方ひとつ見ても、ミリさんワールドがそこかしこに見受けられたのでした。

「本ができたらPOPを描くものと思ってました」

――『ふつうな私のゆるゆる作家生活』を読んでびっくりしたのですが、最初の本が出たとき、ご自身でPOPをつくって本屋さんを回られたそうですね。

『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(文藝春秋)

『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(文藝春秋)

ミリはい、POPにつける針金も自分で買ってもっていきました(笑)。ハンズで輪の針金を買って、自分で巻いてつくって、それを紙袋に10個くらい入れて。その頃まだ東京に詳しくなかったので、街を歩いていて、本屋さんを見つけたら入ろうと思ってました。買い物に行く日には、POPセットをもって行ってました。ご挨拶するときのために、自分の本と名刺ももって。

――へぇー、ノーアポで。それで、ふらっと入るわけですか。

ミリふらっと入ると緊張するから、邪魔にならないように人が少なくなるのを待ってました。レジに入っていない人をみつけて、自己紹介を。

――「益田ミリです」と。

ミリはい。そうして回って初めて、「担当」の人がいるということを知って。

――最初わからないですよね。

ミリ慣れてくると、といってもほんとは最後まで慣れなかったんですけど、「女性エッセイ」のコーナーがあることを知り、「女性エッセイご担当の方」とお願いするようになりました。

いくつかはフェアをやってくださいました。

――すごいですね!

ミリすごいですよね。「せっかく来てくださったから」と言って、ワゴンで。私の本なんてまだ二、三冊しかなかったのに(笑)。すごくうれしかったです。

――それはうれしいですね。

ミリねー。

――本が出るたびにまわっていらっしゃったのですか。

ミリそうですね。やったほうがいいのかなと思って。

――始めようと思われたきっかけはありますか。

ミリ書店に行くとPOPがありますよね。あれは、なんとなく、作家さんが描いているものだと思っていたんです。そういうもんなんだ、って。じゃあ、私も描かなきゃ、と。

けどよく見ると、そういう目線のものじゃないものもあるのに。やるものなんだ、という感じで始めました。

「うれしくて、しょっちゅう見に行ってました」

――最初に書店さん訪問をしたときのことは覚えていますか。

札

ミリそれはよくおぼえてないです。ただ、一番最初に「益田ミリ」の札をつ くってくださったときは感激しました。たった二、三冊しかないのに、次にその本屋さんにうかがったときには、「益田ミリ」の札があったんです。「あ、ある!」と思って。益田ミリのコーナーは冊数が少ないから狭いんですけれど、ちゃんとあったんです。

――札があると、遠くからも見えますものね。

ミリそうなんです。こんなの初めてだと思って。うれしくて、しょっちゅう見に行っていました。札を(笑)。

――励みにもなりますね。

ミリすごくなります。

――その札を見て、今は二、三冊だけどこれをどんどん増やしていこうと思われたのですか。

ミリなんか、ここがなくならないように、がんばらないと。と思いました。

――そんな(笑)。どこまでいっても、謙虚なミリさん。

ミリいや、ほんとに(笑)。札があるのに本がない。そんなことにならないようにがんばろうと思いました。

――なるほどー。

ミリ川柳集を出したときに、自分でスーパーボールを発注して、スーパーボールに川柳を印刷したことがあります。それを1000個つくって、本屋さんへご挨拶に行くときに、なんか無理やり(笑)、スーパーボールどうぞ、って置いてきた覚えがあります。

――皆さん、さぞ喜ばれたでしょう。

ミリさぁ、どうでしょうか? わたしはおもしろいなと思って作ったんですけれど、なんでスーパーボールなんだろ? って不思議がられたかも。でも、熱意は伝わった気がします。売り込み自体にドキドキしてたし、脇の下なんか、もう、汗でぴっしょりでしたから。

「サイン本とかできますけど」

――それだけ本屋さん回られたら、本屋さんの知り合いはできましたか。

ミリいやぁーー(笑)。緊張して......。ただ、ご挨拶のはがきのやり取りなんかはありました。銀座の本屋さんで、最初のフェアをやってくださった方がいて、お店にいけば立ち話なんかをしていました。今はもうそのお店は辞められて、地方で小さな本屋さんの店員をやっていると年賀状でお知らせいただきました。「応援しています」ともおっしゃってくださっていて。

――それはうれしいですね。

ミリうれしいですよね。最初にお会いしたのが10年ほど前ですけど、私のこと、「消えずによかったな」と思ってくださっていると思うんですけど(笑)。

――またまた(笑)。最近もPOP配りはされるのですか?

ミリ今は出版社の営業の方が印刷してつくってくださるのでおまかせしています。あと、私はひとり旅が好きなので、地方に行ったときに本屋さんを見つけると、勇気を出して挨拶することもあります。

――『47都道府県女ひとりで行ってみよう』の「今回の旅で使ったお金」なんかを見ていると、ときどきご自分の本が含まれてますよね(笑)。

ミリええ、入ってますね(笑)。自分の本を買うか、ご挨拶をするか、どっちにしよう? って毎回、迷ってました。緊張するからなかなかご挨拶できないんですけど、東京から離れた土地に行けば行くほど、自分の本を並べてくださっていることに感動しますし、がんばってご挨拶するようにしています。

――すばらしいですね。書店員さんのリアクションはどうですか。

ミリだいたい皆さんやさしくしてくださいますね。

――なんか、やっちゃった! という思い出はありますか。

ミリ平積みされていたので、勇気を出してご挨拶したらとてもいい方で、私もついうれしくなって、その女性の店員さんに、「サイン本とかできますけど」と言ったんです。そしたら、「店長がいないんで、了解がないとできないです」と言われまして(笑)。そのときは恥ずかしかったです。

――(笑)

ミリ自分からサイン本、とか言って(笑)。余計なことをしてしまった思い出です。POPにすればよかったんですよね。

次週「本屋さんとのつきあい方」をお届けします。

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益田ミリ(ますだ・みり)

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に『お母さんという女』『オトーさんという男』(光文社)、『すーちゃん』『結婚しなくていいですか。』『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(幻冬舎)、『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(文藝春秋)など多数ある。

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