本屋さんと私

作家の方々は、本屋さんとどんなつきあい方をしているんだろう。
自分が書いた本が並べられる場所にたち、どんなことを感じているのだろう。
そんな素朴な疑問からたちあがった連載です。
毎月、気になる作家さんに、本屋さんの「お話」をうかがいます。

第2回 本屋さんとのつきあい方

2009.07.09更新

「本の作者なんですけど」

―― ミリさんにとって、本屋さんってどんな存在ですか?

ミリ本屋さんには、街に出たらほぼ立ち寄ります。渋谷に出たら渋谷の本屋さんに。新宿に出たら新宿の本屋さんに。

―― へぇー。

本屋さんと私「お母さんという女」

『お母さんという女』(光文社)

ミリこの間エッセイにも書いたんですが、ちょうど母の日に、買い物帰りに本屋さんにぶらぶらと立ち寄りました。ふたり組の女性のひとりが、私の『お母さんという女』の前で、「この本読んでみたかったんだよね」と言って手にとってくださっていました。ちょっとページをめくって、ぷっと笑ってくださったり。結局その本は買わずにそこに置かれたんですが、そのときなぜか、「母の日だからこの本をあの人にプレゼントしよう!」と思いたったんです。それで二冊買って、別の売り場にいるその人のところに行きました。靴をおぼえておいたんですぐ見つけらました。

―― なるほど、靴でおぼえたんですね。

ミリはい。そして「本の作者なんですけど」と声をかけました。そうしたら、ふたりは友だちだと思ってたんですけど、若いお母様で親子だったんです。

―― 反応はどうでした?

ミリ最初は、はあ? みたいな感じでびっくりされてました。

―― そうですよね。いきなり作者に声かけられることなんてめったにないでしょうから。

ミリそれでも、ちゃんと二冊を受け取ってくださって、よかったなぁと思って。ただ私のほうが、プレゼントすること自体に舞い上がって支離滅裂なことを言って・・・、走って逃げて帰りました(笑)。

本屋さんと私 第2回 益田ミリさんイラスト 320ピクセル

―― (笑)

ミリ帰り際には、「がんばってください」とまで言われました(笑)。

―― その親子の方は、ずっと忘れないでしょうね。

ミリどうですかねぇ。読んでもらえたらいいなぁと思ってます。

―― ある意味、ミリさんは書店員さんをやっていらっしゃるわけですよね。

ミリいやいや、どうですかね、無理やりですけど。読んでほしいなという気持ちだけです。

―― そのお気持ちは受け取った方にはまちがいなく伝わりますよね。

ミリファンレターをいただくことがありますが、自分ががんばるのがお返事だなと思って、お返事は書いていないんです。その分、読んでもらえるような、できることならやりたいと思っています。

―― その姿勢、とても素敵です。

「100%無趣味です」

―― 本屋さんの店内に入ると、何からご覧になりますか。

ミリまずは自分の本があるか、気になります。そのあと、新刊コーナーを見て、女性エッセイや小説のコーナーに行き、雑誌コーナーへ。品揃えの多い本屋さんだと、お料理本コーナーからインテリア、新書や文庫まで、ぜんぜん関係ないところまで見ます。

―― ビジネス書コーナーも?

ミリはい。ときどき、面白いタイトルがあるんだなぁとか思って。ジャケ買いというか、タイトル買いすることもあります。

―― ビジネス書を買うこともあるんですか。

ミリありますよ。意外ですよね(笑)。あまりにもかけ離れているのは買わないですけど・・・。

―― 『他人を蹴落としてでも勝つ方法』みたいな(笑)。

ミリ(笑)。やさしくわかる経済の本とかですね。私にも読めるかなと思って。日本史、世界史なんかが簡単に学べなおせるもの、『大人の日本史』みたいなものもたまに買います。あと、たとえば、物理学の本とか、脳科学の本とか、難しそうだけど、でもなんか気になって買った本は、基本的に、8割わからなくていいと思っているんです。2割わかればいいかな~と思って。

―― なるほどー。ところで本から始まった趣味とかありますか。たまたま手にした本から、碁にはまりました、とか。

ミリうーん。フェルト作りの本とかたまに買いますけど、やるのは一回くらい(笑)。そういう本は、見てきれいなので見るという感じで。
無趣味です、100%無趣味です(笑)。

―― 本屋さんに行くこと自体を楽しんでおられる感じですね?

ミリそうですね。すごく楽しいです。最近はかわいい雑貨を売っているコーナーもあるので、こちょこちょ買い物もします。きれいな色のマスキングテープとか。
あと私はインターネットが古いせいか、あまりうまくページに飛ばないんです。なので、欲しい本があれば本屋さんで注文します。読みたい本を自分のメールに入れておいて。
一週間ほどしたら、「届きましたよ」って電話をかけてくださるので、とても楽です。

「本屋さんのあと、マッサージによく行きます」

―― お気に入りの本屋さんはありますか。

ミリ渋谷が行きやすいので渋谷の本屋さんにはよく行きます。

本屋さんと私「上京十年」カバー

『上京十年』(幻冬舎文庫)

―― 『上京十年』の中に、「渋谷の大きな本屋さんが恋しい」という一文がありますが、具体的にどこの書店さんでしょう。

ミリどこということはなく、大きな本屋さん全部です。渋谷は大きな本屋さんが多く、思いがけない本と出会えるチャンスもあって好きです。楽しいですよね。

―― そうですね。

ミリあと、渋谷の文教堂さんは足裏マッサージのお店が二階にあって、そこは、よく行きます。予約をとって、本屋さんで時間待ち、予約時間が来たら、マッサージ屋さんへ、終わったら買った本をもって店内の喫茶店でお茶飲みます。あそこだけで何時間も楽しめますよね。漫画売り場も充実してるし。

―― 本の中でもよくマッサージに行く話を書いていらっしゃいますが、あのお店はいいですか。

ミリわたしは好きです。
それと、渋谷の東急プラザのお店もお気に入りです。

―― 紀伊國屋書店がある階にあるお店ですよね。

ミリそうです。

―― 本屋さんとマッサージは相性がいいんでしょうか。

ミリさぁ、どうでしょうね(笑)。

次週は、「もしも本屋さんになったなら」をお届けします。

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益田ミリ(ますだ・みり)

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に『お母さんという女』『オトーさんという男』(光文社)、『すーちゃん』『結婚しなくていいですか。』『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(幻冬舎)、『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(文藝春秋)など多数ある。

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