本屋さんと私

第30回 灯台フェア、全国行脚中!

2010.02.10更新

「試作校正」しています!

『イタリア料理の本』(米沢亜衣著)

―― アノニマさんがどんな仕掛け方をして本を売っているのか、本の特徴を活かした独自の販促についてお話を伺いたいのですが。

安西めずらしいのは、レシピ本の新刊が出るときに、書店さんで料理の写真のパネル展をしていることですね。いかに中身を見ていただくかが大切だと思っているので、レシピ本が出るときは、定番化している販促ですね。

三谷うちの本は、写真がとてもきれいだとほめられることが多いんですよ。いろいろ言葉を尽くすよりも、まず料理の写真を見ていただいて、「おいしそうでしょ!」と訴えています(笑)。それに、うちのレシピ本は、アノニマの一階にあるキッチンで試作して、スタッフ全員で試食するという「試作校正」もしているんです。なので、レシピも自信をもっておすすめできるものばかりです。

第30回本屋さんと私 アノニマスタジオさん

ジュンク堂書店池袋本店での『イタリア料理の本』のパネル展の様子。

―― スタッフの皆さんで「試作校正」されてるんですね! 実際に試食すると、本に載っている料理がいかにおいしいかとか、意外に簡単につくれるとか、お客さんにおすすめしやすいですよね。今までで一番反響のあったレシピ本のパネル展はなんですか?

安西ジュンク堂書店池袋本店で行った『イタリア料理の本』(米沢亜衣著)のパネル展ですね。二階の通路脇の壁面を使わせていただいて展示をしました。

第30回本屋さんと私 アノニマスタジオさん

料理の写真とともに味わい深いエッセイが楽しめる展示構成に。

三谷すごくかっこいい展示に仕上がったんですよ。この本のレシピにはそれぞれ、レシピが生まれた光景を綴った味わい深いショートエッセイがついているんです。そのエッセイを料理の写真のパネルに添えて展示をしたのですが、写真と一緒に文章が読めるので、美術館で絵を見るかのように本を鑑賞できたのではないかなーと思います。

安西写真も特徴的だったから、余計にビジュアルを見せるのがおもしろかったと思いますね。

第30回本屋さんと私 アノニマスタジオさん

―― たしかにあの本は表紙だけ見るとシックな印象を受けますが、本を開くと写真が見開きにどーんと使われていて、料理の力強さが伝わってきますよね。

安西料理の写真にしてはトーンが暗めなのですが、そのぶん他の類書にはない世界観があるんですよ。他社さんからも、あの展示はすごかったですねーとほめていただきました。レシピ本としては1995円と手頃とはいいにくいんですが、このパネル展で一カ月で70冊くらい売れました。

フェアの成功は灯台にあり!?

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「国際姉妹都市祭in京都駅ビル」フランスフェアでのひとこま。フランス映画、ポスター、関連書籍、雑貨などが展示販売されるかたわら、「灯台1号」も参加。京都タワーと奇跡の共演!

―― アノニマさんのホームページで、全国の書店さんや雑貨店さんなどで「灯台フェア」をされているのを知ったのですが、あの灯台は、なにがきっかけでつくることになったんですか?

安西ジュンク堂書店池袋本店の一階で、2008年の初売りからアノニマのフェアをしてくださることになったのですが、それがアノニマの本を全点置いていただくという規模的にかなり大きいフェアだったんです。

―― ジュンク堂書店池袋本店の一階って、出入りするお客さんの数がかなり多いですし、会社として力が入りますね。

安西そうなんです。アノニマをご存知ではない方に本をアピールできる貴重な機会なので、準備にも熱が入りましたね。そんななか、ジュンク堂の大内さんと打ち合わせをしていて、本を並べるだけじゃなくて、なにか目印がほしいですねということになり、美術家の前川秀樹さんに依頼して灯台をつくっていただきました。アノニマらしさも出しつつ、インパクトのあるフェアができたんじゃないかなと思います。灯台効果もあって(笑)、おかげさまで結構本が売れました。

―― 書店さん以外でも「灯台フェア」をされているんですよね?

三谷はい。アノニマでは、雑貨店、カフェ、ギャラリーなどにむけて直販をしています。受注数は書店さんと比較するとそんなに多くないのですが、新刊・既刊関係なく、一冊ずつていねいに売ってくださるんです。たとえば、高山なおみさんの本が好きなお店は、高山さんの既刊も揃えてくださったり。雑貨店さんなどで「灯台フェア」をするときには、担当者さんと企画の段階からご相談させていただいています。

―― 灯台を送るだけではなくて、選書から相談に乗るんですね。

三谷そうですね。私が営業で伺ったことのあるお取引先でしたら、お店の雰囲気や置いてある商品を思い浮かべながら、本をご提案していますし、はじめてのお取引先でしたら、担当の方がどんなフェアをされたいかだとか、好きな本の傾向などをお伺いして一緒に選書させていただいています。

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鹿児島にあるBakery/Cafe Chanaanさんでの「灯台フェア」。優しい色合いの「灯台1号」、パンとも好相性のよう。

―― 雑貨店さんやカフェで、なにか独自の販促はされていますか?

三谷今まで、大阪、高知、屋久島などのカフェで「灯台フェア」をしたことがあるのですが、フェアにからめて、アノニマのレシピ本から期間限定のランチメニューを出していただく企画が好評でしたね。今日のランチはこの本を見てつくりましたとお店のメニューや展示でご紹介して販売につなげるということをしていただきました。

―― それは一番確実な販促ですよね。

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栃木にあるPENCAFE,GOODSさんでの「灯台フェア」。緑を基調にした「灯台2号」、存在感あります!

安西ビジュアルよりも確実な味で勝負ですから。書店さんでは絶対できない販促ですよね。

―― 今後も期間限定のランチを出す企画の予定はあるのですか?

三谷今年の5月に国分寺のカフェスローさんでやりますので、ご興味のある方は是非お出かけください!

―― 「灯台フェア」をからめたこういう販促は、お店もお客さんも楽しめていいですね。

三谷そうですね。こういう販促がしたいと思っても、日頃お取引をしていなければやりにくいってこともあるでしょうし、これは本当にうちの強みだと思っています。

アノニマの一番人気! 灯台1号2号

―― 今、直販店の数はどのくらいなんですか?

三谷約三年前、私が入社したときは、300台だったんですが、今、800弱ぐらいですね。

安西毎日、どこかからかご注文いただくんですよ。
 
―― 着実に取引先を増やしていかれたんですね。お取引が毎月なくても関係が続くように、なにか工夫をしているんですか?

三谷毎月、直販店さんに向けて「アノニマだより」というフリーペーパーを封書でお送りしています。それには、新刊や売れ筋情報、スタッフおすすめのレシピ、アノニマの近況報告などを載せているのですが、受取拒否やお店の移転などがない限り、基本的に送り続けています。反応がないかな? と思っていても、何年かぶりにご注文をくださったりするんですよ。

―― ちゃんと読んでくださっているんだとうれしくなりますね。

三谷そうなんです。なにかの新刊のタイミングでとか、久しぶりにお取引が復活することって、結構多いんです。アノニマの知名度があがってきたのもあるかもしれないですけど、みなさん、ホームページをよくご覧になってくださっているんですよ。

―― アノニマさんのホームページを見ると、いろいろなイベントをしているなっていう印象がありますよ。

三谷アノニマの一階で、毎月イベントを企画していますし、イベントやフェアの情報をまめにホームページに載せていると「動き」が出てくるじゃないですか。直販店さんは日頃からたくさん情報を仕入れていらっしゃるので、「アノニマだより」だけじゃなくて、そういうところでも目に留めてくださっているんじゃないかなーと思うんです。

―― 発信し続けていることの意味というか、営業としてちゃんと実っていますね。

三谷お店の企画の参考にするために、アノニマのホームページをチェックしてくださっている方もいらっしゃるようですね。

―― たしかに、今、お店でワークショップやイベントをされるところも多いですからね。
「灯台フェア」をはじめてから、営業面でなにか変化はありましたか?

三谷雑貨店さんやギャラリーさんって、お店どうしのつながりが深かったりするのですが、ご紹介や口コミなどのつながりのなかで「うちでもできませんか?」と打診をいただくことも多いです。

第30回本屋さんと私 アノニマスタジオさん

安西地方の全然知らなかった書店さんから結構お問い合わせをいただいたりして、お取引先に広がりが出てきました。地方でフェアが増えたのが、とてもうれしいですね。ありがたいことに、引き合いが多くて、灯台がなかなかアノニマに戻ってこないんですよ。

―― 灯台って、二台あるんですよね?

第30回本屋さんと私 アノニマスタジオさん

三谷「灯台フェア」をはじめて半年ぐらいで、これは一台では回りきれないということになって、急遽二台目をつくっていただきました。灯台、ひっぱりだこなんですよ。かなり先まで予約待ちで、どれだけ売れっ子なんだか・・・・・・アノニマのなかで一番人気です(笑)。


次週「編集も営業も一冊入魂です!」をお届けします。


* アノニマ・スタジオさんからお知らせ

アノニマ・スタジオが主催する、小さなブックフェア「Book Market」。
第2回目となる2010年のテーマは、周りの人に「この本、いいよ!」とすすめたくなる、「本当におもしろい本」だけを集めたブックフェアです。
一冊一冊を、本気で作っている出版社・10社あまりがジャンルを超えて、一堂に会します。
本の販売のほか、古本の販売、フリーペーパーの展示、ライブ、大人のための絵本の朗読会、
はたまた出版社を体験できるワークショップなど、各種イベントも同時開催。
本好きのための「Book Market」。
入場は、もちろん無料です。(※各イベントは要予約)
ぜひ、ご来場ください。
出展:アノニマ・スタジオ、ミルブックス、8plus、ミシマ社、理論社(よりみちパン!セ編集部)、医学書院、筑摩書房、INAX出版、クレヨンハウス、風土社、くくのち学舎、 古本ユニットricca(特別出展)
*参加出版社は商談も可能です。(古本を除く)
●日時 2月12日(金)~14日(日)  11時~18時(最終日~17時まで)
●会場 アノニマ・スタジオ1階「キッチン&ガレージ」 *http://www.anonima-studio.com/frameset.html
◆3冊以上お買い上げのお客様に、
イラストレーター・松尾ミユキさんイラストの2010年限定エコバッグをプレゼントします。

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安西 純(あんざい・じゅん) 三谷 葵(みたに・あおい)

安西 純(あんざい・じゅん)
1979年千葉県出身。アノニマ・スタジオ所属。おもに都内周辺の書店営業を担当。幼き頃は自然と一体になって遊んでいた。中学生当時には台風で学校が休校になると喜び、友人とともに台風の雨で増水した川に飛び込み、川の急流に流されるのを楽しんでいた。たまに過去を思い返すと、今生きているのが奇跡かもしれないと思ったりもする。好きな食べ物は「カレー」。

三谷 葵(みたに・あおい)
1981年長野県出身。アノニマ・スタジオ所属。雑貨店など書店以外の取引先への営業を経て、現在編集/広報を担当。「雨が降ったら、三谷は休み」といわれるほど、学校嫌いだった学生時代が嘘のように、2010年2月にミームデザイン学校基礎課程修了、四谷・くくのち学舎に関わるなど、どういうわけか「学校」に通いつづける日々。山伏歴7年目。好きな食べ物は「目玉焼き」と「ぬた」。

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