本屋さんと私

今月から「ミシマ社5周年記念企画」の本が続々と刊行されます。
そのラインナップのなかで、ひときわ異彩を放つ本が!
なんとミシマ社初となる詩集を刊行します。

『思春期』(詩:谷郁雄、写真:青山裕企、ピエブックス)

タイトルは『透明人間』。
いったい、どんな本になるのでしょう。

この本は、『思春期』(ピエブックス)でコラボレーションした、何気ない日常の輝きをみずみずしい言葉で綴る詩人・谷郁雄さんと「スクールガール・コンプレックス」などで今話題の写真家・青山裕企さんによる写真詩集です。

今月の「本屋さんと私」は谷郁雄さんをお迎えし、本屋さんとの思い出や付き合い方をお伺いしました。

(聞き手:足立綾子・林萌、文:足立綾子)

第59回 自分の本が出るといろいろ気になるんです(谷郁雄さん編)

2011.09.09更新

本は手に取ってみないとわからない

―― 谷さんは、日頃、本屋さんによく行かれますか?

基本的に自分の地元の町から出ないことが多いんですよ。なので、出かけるときは、本屋さんに必ず寄りますね。電車の乗り換えのときに新宿のブックファーストとか。

でもいちばんよく行くのは、家の近所の小さな本屋さんですね。今、大型書店がたくさんありますよね。そこへ行くときの心の準備があって。だって、大量の本があるわけで、無防備に書店に行くと、疲れるというか、情報量に負けちゃうんだよね。

―― たしかにそういうことも・・・。

それはそれで刺激にはなるんだけど。今まで見たことのない本を知る喜びがあって、大型書店の魅力もたしかにある。一方で、小さな町の本屋さんは、フロア面積も小さくて、ここにある本しか読めない。でも、そのなかから選ぶのは気持ち的に選びやすいんだよね。限られた本のなかから工夫して選ぶおもしろさがあって。

一冊の本は世界とつながっているんだよね。いい本だったら、その一冊がいろいろ語ってくれていたり、たとえ語ってくれなくても想像力で補うことができたりする。小さな本屋さんの「これしかない」というところで、深く入っていく読書のおもしろみが、最近だんだんわかってきましたね。

あとは、セレクトショップみたいなオーナーや店員のこだわりがある本屋さんもありますよね。でも、個人の家の書棚から本を拝借しているようで、ちょっと申し訳ないような気もする。本屋さんとは、自分の気持ちや気分を切り替えながら付き合うようにしていますね。

『自分にふさわしい場所』(言葉:谷郁雄、写真:ホンマタカシ、理論社)

―― よく行く棚はどこですか?

文芸作品やエッセイとか写真とか。自分の作品のルーツになっているものは好きですね。

―― 谷さんは写真家さんとコラボレーションした本を出されていますが、本屋さんで本を眺めながら、次にこの人と一緒に本をつくろうかなとか考えたりしますか?

そうですね。そもそも、僕の本を何冊もデザインしてくれている寄藤文平さんを知ったのも本屋さんでしたからね。『自分にふさわしい場所』というその後のターニングポイントになった詩集をつくっていたとき、編集者と新しいデザイナーを探していたんです。そんなときに、本屋さんで表紙を眺めながら歩いていたら、一冊だけ、呼びかけてくるような本があって。「これだ!」と。

『「私」であるための憲法前文』(大塚英志編著、角川書店)

―― ちなみに、呼びかけていた本って、なんだったんですか?

『「私」であるための憲法前文』って本で、日本国憲法の前文を中高校生たちが自分なりに書いたものなんだけど、その文章をうまく改行して、詩に見えるようなスタイルにしちゃっている。本文のインクもグリーン、ブラウン、ブルーと色分けしたりして、見せ方のうまさを感じて、これはいいなと。

そういう書店の僕なりの利用の仕方というか、ネット書店で見ていてもわからない。現場に行って、手に取ってなかを見たりとかしてさ。手触りとか重さとかあるじゃない。

―― 私もいいなっていう本があったら、誰がデザインしたんだろうって、まずクレジットを見てしまいますね。カバー外して表紙を見たり。

『「私」であるための憲法前文』デザイン(文平銀座HPより)

デザインは本の大切な要素だよね。なんでこんなデザインの本が売れているんだろうって思うような本もあるけど。

発刊後の本屋さんにて

―― 目的の本がない状態でふらっと本屋さんに行くことが多いですか?

新聞や雑誌の書評を読んで気になった本を探しに行くこともありますよ。でも、その前に別の気になる本を発見してしまって、なかなか目的の本までたどり着けないんですよね。

―― 途中で別の本につかまってしまうんですね。

そうそう。で、目的の本を実際に見てみると思ったほどおもしろくないこともあったり。本は手に取らないとわからないよね。そういう偶然性がいっぱいあったほうがおもしろいじゃないですか。例えば、自分の恋人に会いに行く途中に、もっとステキな人がいたらやっぱり気になるじゃない。

―― 気になりますね。

途中というのが気になる。そこから幸せか不幸のどちらが生まれるかは別として、人生って、生まれて死ぬまでの間の出来事に意味があるわけで、途中に何が起こるかわからないから、おもしろいわけじゃない。

自分の本が出ると気になって、本屋さんに見に行くんだけど、本が置いてなければ、なんで置いてないんだろうって思うし、たくさん平積みされていれば、すごくプレッシャーになるんだよね。

―― では、詩の棚はあまりご覧にならないのですね。

そうね。でも、写真家さんとコラボレーション詩集を出しているから、よく行く写真集の棚にも自分の本が置いてあったりするんだよね・・・あなた、自分の本出したことある?

―― いやー、当然ないですよ(笑)

そうですか。自分の本を出すと詩や写真集の棚に自分の本があって、いやでも目に入っていろいろなことが気になるんだよね。そういえば、本屋さんでお客さんに無理やりサインしたことが、一度だけあったな。

―― それは、すごい偶然ですね。どこの書店さんですか?

東京駅の大丸にある三省堂で、僕の本を買おうと手にとってくれた人に声をかけて思わずサインをしたんだけど、名前を書き間違えてバッテンつけたり、ほんとひどかった。しかも会計前だったから、その本、買わざるをえないよね。


次回は谷さんが詩人になるまでの道のりや今までの本づくりのお話です!

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ミシマ社編集チーム

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