本屋さんと私

コンゴに伝説の怪獣モケーレ・ムベンベを探しに行ったり、
タイで日本語教師を教えたり、多国籍な新聞社で働いたり・・・

高野秀行さんは「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、
それを面白おかしく書く」をモットーに、
世界のあらゆる辺境へ行かれているノンフィクション作家。
旅人を呼ぶ(!?)ミシマ社では、高野さんファンがいっぱいいます。

本屋に来たお客さんに「おすすめの本は?」と聞かれたとき、
いつも高野さんの本を勧めていると言っていたある本屋さんは、
以前このように話していました。

 「本好きの人も本を読まない人でも誰でも、高野さんの本を勧めれば、
  どの本から読んでもみな『面白かった』と言って、
  感想を言いにもう一度お店に来てくれるので、
  安心してお勧めできるんですよ」

今月の「本屋さんと私」では、そんな老若男女をいっぺんにファンにしてしまう本を書き続けていらっしゃる高野秀行さんの最新作『謎の独立国家 ソマリランド』の紹介を軸に、今まで読んできた本や本屋さんとのつき合い方などをうかがいました。

第一回の今回は、本と本屋さんについてのお話です。

(聞き手:林萌・星野友里、文:林萌、写真:星野友里)

第75回 家は本であふれています(高野秀行さん編)

2013.04.08更新

僕は本が好きなんです。

―― 本屋さんには、よく行きますか。

高野高井戸駅にある広和書店は、独特の品ぞろえが好きで、立ち寄るのが習慣になっています。そこは川上弘美さんが中学から実家を離れるまで、1日も欠かさず通った本屋さんだと聞いたことがあります。

―― どんな本を読みますか。

第75回 本屋さんと私 高野秀行さん編

高野家は本であふれていて、ジャンル問わず雑読で広く浅く読みます。けっこうページを折ったり線を書き込むので、買って手元に置いておきたいですね。僕は本が好きなんです。本は雑誌と違って、ひとつの世界になってるじゃないですか。偏ってるかもしれないけれど、一人の人が書いた世界観のはっきりしたものがすごく好きです。

―― 小さなときから本がお好きだったのでしょうか。

高野僕は実家が八王子だったんですけど、北口にあるくまざわ書店に行くのが楽しみのひとつでした。両親も本好きですね。
僕らの世代はだいたいそうなんですけど、ホームズ、ルパン、江戸川乱歩などをよく読みましたね。あとは岩波少年文庫が好きで、ドリトル先生はすごく好きでした。今でもあれが理想のひとつですね。

この著者3人は、別格です。

―― 何回も読み返されている本がありましたら、ぜひ。

高野毎回新刊を読むのは、宮田珠己さん、内澤旬子さん、高橋秀実さん、中島京子さんや、横山秀夫さん・・・ぐらいかな。何回も読む本は、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』と『ママ・グランデの葬儀』、金子光晴『どくろ杯』3部作と、藤沢周平の武家ものですね。定期的にザーッと読み返しています。その3人は別格で、僕の中では殿堂入りです。


―― ちょっと意外です!

高野今のことを聞かれるとそうなんですけど、高校時代は『ムー』ものをたくさん読んでましたね。ピラミッドは宇宙人が作ったとか、邪馬台国が太平洋にあったとか。

―― 『ムー』は面白いですよね。

高野いまだに編集部から送ってくるので、つい読んじゃう(笑)

―― 本屋さんで自分の本を探しますか。

高野前はよくやってたなぁ。・・・一時期は大型書店に行くのがつらくて。ものすごい量の本があるから、その中で自分の本が売れるのは無理だろうと思って、行くとガッカリして帰ってました。15、6年かな。鳴かず飛ばずの時期がすごく長かったから、行っても自分の本なんかまずないし新刊も1カ月で消えちゃいますしね。文庫にもならなかったし、あのころは本屋に行くのがつらかった(笑)。

―― その時期にもたくさん素晴らしい本を書かれているのにも関わらず・・・

高野面白いものしか書きたくないんですよ。すごく面白いものだけを書こうと思ってやってきたので。「いまいちだけどいいか」と流すことは、できないですね。あともうひとつは、そんなに売れてないので、そんな余裕もないし、毎回毎回勝負です。

―― ミシマ社と同じですね。余裕なく毎回一冊入魂で、コケたら会社がつぶれるという(笑)。

高野ソマリランドと同じだもんね(笑)。


次回は、その「ソマリランド」について書かれた著書『謎の独立国家 ソマリランド』について伺います!

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高野秀行(たかの・ひでゆき)

1966年東京都生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)でデビュー。
タイ国立チェンマイ大学日本語講師を経て、ノンフィクション作家に。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。それをおもしろおかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。
主な著書に『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』『ミャンマーの柳生一族』『異国トーキョー漂流記』『アジア新聞屋台村』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など。 『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。
最新刊『謎の独立国家 ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』が本の雑誌社より好評発売中!

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