本屋さんと私

実は2年半ほど前に、すでに一度この「本屋さんと私」にご登場いただいた、ひとり出版社「夏葉社」の島田潤一郎さん。その後も続々と名作の刊行を続けられ、ファンも着々と増え続けていらっしゃいます。

9冊目となる今月発売の新刊『本屋図鑑』は、前回のインタビュー時にすでに構想を語られていたもの。本屋さんの本であるからには、あらためてお話をうかがわないわけにはいかない! まだ見本ができあがる前の、脱稿ホヤホヤの島田さんに、突撃インタビューをさせていただきました。

ちなみに取材に同行して文章を構成したデッチ廣瀬くんは、夏葉社さんに興味をもったことからミシマガにたどり着き、デッチに応募してくれたのだそうで、当日は大緊張。インタビュー後、優しく対応くださった島田さんに感動しきりでした。

新刊『本屋図鑑』の魅力と、本屋さんのお話がたっぷりのインタビュー、ぜひお楽しみください!!

(聞き手:星野友里、構成:廣瀬雄規)

第88回 素晴らしき本屋さんたち

2013.07.24更新


一体何を試されていたのか

――掲載されているすべての本屋さんに、ご自身で足を運ばれたそうですね。

第88回 素晴らしき本屋さんたち(夏葉社島田さん編)

島田もう意地になっちゃって。大体一日一件ずつ取材していくペースでしたが、半年かかりました。4分の3くらいは事前に調べたところや、人から聞いたところだったのですが、のこりは現地に行って、地元の人に「このへんに本屋さんはないですか」ときいてあてずっぽうで行きました。意外とそういう本屋さんの方が面白かったりして。

――面白そうです。

島田地元の人にきいた本屋さんに朝行って、店頭にいたおばあちゃんに、このお店を取材させてほしいと頼みこむわけですが、私には決める権利はないし、載せてほしくもない、と言われるわけです。でも、どうしてもと言うなら、お昼を過ぎれば、決める権利を持った人が来るから、その人に会ってくれと。

 そこでいったん引っ込んで、お昼にうかがって、権利を持っているとされた人に会ったら、今度は、そのおばあちゃんが全部決めている、私には決める権利はない、と言われる。おばあちゃんは4時には戻ってくると言うので、また待って、もう一度お願いしたら、そこまで言うならしかたないと許可を頂けたこともありました。

――面白いですが、大変でしたね・・・。

島田一体何を試されていたのか・・・(笑)。お金をとられるんじゃないかと不審がられることもありました。でも、そういう取材慣れもしていない、普通の本屋さんの話が聞きたかったんです。どういうふうな気持ちでやっているのか。本屋であることをどういうふうに考えているのか。
 昔と違って本屋は儲かる商売ではなくなってしまった。でも、街に本屋さんがなきゃいけない。やっぱり必要としているお客さんがいるからがんばってやっていかなきゃ、ということは、みなさんの共通した想いだと思いました。


出版文化は都市文化

――小さな本屋さんがだんだん少なくなってきているという現実があります。

島田まず、雑誌を買う場所としての役割がコンビニに奪われています。あと、本屋さんを巡ってみてよく耳にして、大きいな、と思ったのが、参考書が売れなくなっているらしいんです。

――それは、どうしてですか。

島田簡単なことで、大きな資本の塾が色んなところに進出していって、そういうところは自前で教材も持っているんですね。それと同時に、これはどういう流れかわからないのですが、学校が学生に決まった参考書を買わせるらしいんです。
 昔ってそうじゃなかった気がする。自分で選んで参考書を買うからお金頂戴! と親に頼んで、全然別の本を買ってしまう、という文化は、失われてきているようです。その次は、インターネットなのかなぁと思います。エッチ本みたいなものも、完全にインターネットに奪われていますよね。

――参考書でもエッチ本でも、なんのきっかけでもいいから、本屋さんに行ってもらえたら嬉しいのですけどね。

第88回 素晴らしき本屋さんたち(夏葉社島田さん編)

島田男子はよくあったけど、本屋さんで、エッチ本を一冊買うのは恥ずかしいから、別の本二冊で上と下挟んで、カウンターに持って行って買う、とかね。一緒にランボー詩集を買う。僕はそんなことしたことないですけどね。

――(笑)

島田それと本屋さんを巡っていて思ったのは、出版文化みたいなものは都市文化なのだということです。東京とか大阪とか京都、福岡などは、まず毎日通勤する人たちがいて、その人たちは、電車の中の時間があるから本を読みます。でも地方には、主に車移動、という人たちが多い。そういう人たちにとって、本を読むことは、少し違う色合いを帯びていて、もう少し意志のいる行為だと思うんです。

 その違いは大きくて、だから地方の本屋さんは、我々とはまた違う感覚で、本を売るということを考えているような気がします。これはきっと前提として認識しておかなければいけないことだと思います。そしてそういう地方の本屋さんに、自分たちがつくった本を届けられれば、理想的だな、と思います。


とっておきのこぼれ話

――今回の本屋さんへの取材で心に残ったエピソードがあればぜひきかせてください。

島田利尻島の本屋さんは、すごく抜けの良い景色の一部になっていて。そこに人が集っていって、そこが街の情報源になっている。利尻島にはコンビニがないので、昔ながらの本屋さんの形がありました。朝の10時になったら、港に本を取りに行って、カブに乗って配達に行く。こういう営みを書けたのはすごく嬉しいことです。

――港に本を取りに行く。いいですねぇ。

島田あと、福井の「安部書店」の店長は本当に良い書店員さんで、「お客さんに幸せになってもらいたいんですよ」っておっしゃっていて。すげぇ! と思いました。なかなか言えないことですよ。「そのためにうちは、本屋さんをやっているんですよ」って。そうすると、普通の本も輝いて見えてくる。感動的な経験をしました。

――店長のイラストも素敵ですね。

島田本当に良い顔をされていました。店長に「素敵な笑顔ですね。」って言ったら「そんなこと言われても何もでてきませんよ~」って。
 それと、長野の松本にある「たつのこ書店」っていう絵本専門書店さんもすごく良かったです。30年の歴史があって親子でやってらっしゃる書店さん。お父さんは、店を持つ前はリアカーを引いて幼稚園に絵本を売り歩かれていたそうで。息子さんは、小さいころ、リアカーに乗せてもらってついていっていたそうです。
 山口県の「ロバの本屋」さんもまたすごいところで。最寄りのバス亭から30分以上歩かないとつかないところにあるんです。

――ええ! どんな方が来られるんですかね。

島田それでも人はしっかり行ってるんですよ! 僕も行って感動しました。まさかっていうところにあって、看板も小さく出ているだけで。イラストを見ていただけると伝わると思いますけど、まわりにほんとうに何もない。でも中に入るととてもお洒落なんです。人に紹介したくなる、恋人とかを連れて行きたくなる本屋さんです。

第88回 素晴らしき本屋さんたち(夏葉社島田さん編)

喫茶店にもなっていて、まわりは温泉街ですし、旅行にもおススメです。

 あと、佐賀の唐津の「ブックスこみや」の近くにあるイカ屋さん! ここのイカがまぁ美味い。本当に美味かったです。これ以上はないってくらい。ここだけの話、イカを食べに行った帰りに「ブックスこみや」さんを発見しました。出会えてよかったです(笑)。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ミシマ社編集チーム

バックナンバー