本屋さんと私

 はじまりは年明けに、ミシマガサポーターの方から届いた1通のお手紙でした。

本屋さんと私

本屋さんと私

『坂口恭平然躁鬱日記』坂口恭平(著)、医学書院

 イベント会場等でよくお会いするダンディーな白石さん(@shiraishimas)のことは、ミシマ社メンバー一同もちろん存じ上げていましたが、じっくりと本について、本づくりについてお話をうかがったことはありませんでした。

「ケアをひらく」シリーズの最新刊、『坂口恭平躁鬱日記』も面白くて一気読みしてしまったタイミング、これは突撃させていただかねば! ということで取材をさせていただくこととなりました。
 当事者研究について、ケアについて、本づくりについて、本屋さんについて・・・お話をうかがううち、はからずも色々なキーワードがつながり出して、なんだかとても楽しく、終わってからも興奮冷めやらぬインタビューとなりました。ぜひお楽しみください!

(聞き手、構成:星野友里 写真:赤穴千恵)

第109回 感受性を保ったまま逃げる

2014.02.23更新

本屋さんが怖い

―― 白石さんと本屋さんのお話もおうかがいしたいのですが、事前にメールで、あまり本屋に行かれないとうかがって意外だったのですが・・・。

本屋さんと私

白石う~ん。やっぱり怖いんだよね、本屋って。

―― 自分がつくった本の置かれ方が気になってしまう、ということですか?

白石いや、置かれていないからなんです(笑)。端的にいうと、専門出版社で「ケアをひらく」シリーズを担当してて、業界ではほめてくれる方もいるけれど、一階の平台には置いていないんですよ。もちろん医学書棚にいけば置いてあるけれど、そんな書棚があるとこなんてそう多くない。だから、行くたびに「ここはお前の来るところじゃないよ」って幻聴さんが・・・。

―― 幻聴さんが(笑)。

白石すごく気圧されちゃって怖い。だから、書店員さんに話しかけるのも、「誰?」って冷たくあしらわれそうで・・・。自分の編集した本には、やっぱり自信とか思い入れがあるじゃないですか。それが書店にいくと相対化されて、ワンノブゼムというか、いやワンならまだしも、そもそも置いてないよっていうのがちょっとつらいかな。

―― たしかに、本屋さんに行くとまずは自社の本を探して回ります。

白石あと、書店にいくと本の声がうるさい(笑)。つくっている側だからわかるんだけど、みんな頑張って「いい本だよ~」っていってるんですよね。書店員さんの声と、本の声と、色んな声が聞こえてきて、どうも・・・。

―― では本当に、本屋さんにはあんまり行かれないんですね。

白石でも、東京堂書店さんは案外行けるんですよ。あそこは声が一定しているから。なんとか自分も理解可能というか、自分もそこに入れる感じがする。でも売れそうな本が並んでいるところは、ちょっと辛い。ただ最近はだいぶ図太くなってきたので、書店員のみなさん、ぜひ置いてください!(笑)。


感受性を保ったままいかに逃げるか

―― 小さいころは、書店によく行かれたりしましたか?

白石学生の頃は普通に行ってましたね。

―― そのころから本好きでしたか?

白石そんなことは、ないかな。とりたてて。なんか特徴のない・・・(笑)。サッカーやってましたね。

―― 一番最初に「おっ!」て思った本とか、自分で買った本、おぼえてますか?

白石う~ん、なんだろうな。中学生になって自分で初めて買ったレコードは、カーペンターズだってのはおぼえてるんだけど(笑)。二枚組みで当時3000円だったの。自分のお金で、頑張って買った記憶がある。

―― 3000円は頑張ってますね(笑)

本屋さんと私

『木精』北杜夫(著)、新潮文庫

白石本はなんだろう・・・あ! 北杜夫だ! 『どくとるマンボウ』もそうだし、『木精』とか、若いころの、木に発情しちゃう話。

―― 北杜夫さん・・・、ここまでのお話をうかがっていると、白石さんのルーツを感じますね。

白石ほんとだね。ある種の叙情性とユーモアみたいな・・・あぁ、北杜夫は躁鬱だしね。あ! すごい! つながった!!

―― すごい(笑)!!

白石中学生のとき、友だちが遠藤周作が好きで、だけど僕は違うなと思っていて。北杜夫は、面白い話を書く人としか思われていなかったけれど、もっと別の『木精』みたいな叙情性も好きで。ユーモアのある話も書ける人としてのオブラートがあったから、安心して叙情に浸れたんですね。

―― なるほど。

白石坂口恭平さんの話から始まって、北杜夫さんだもんなぁ。・・・北杜夫は、ある種の純粋さによって、外部から刺激をうけすぎて、苦しくなって、ちょっとユーモアで逃げるってことをずっと続けてた人ですね。だから、いかに感受性をすり減らさずにどうやって生きていくかってことのモデルかもしれない。精神科医の中井久夫さんもそうだし、僕の好きな人たちってみんなそうかもしれない。

―― 社会から完全には離れない形で、いかに感受性をキープしていけるか、ですね。

本屋さんと私

白石あれは若いころの話で、すれっからしの今はばりばり仕事やってます、なんていうよくある物語は本当でしょうかねぇ。いかに感受性を保ったまま死ぬまで逃げられるかって話ですよね。人間って弱いところがあると安心するというか、そこでつながれるじゃないですか。だから、その弱い部分が自分に似た人がいいのかもしれないですね。

―― 最後になっていろいろつながりましたね。

白石すごい、セラピーだ(笑)。

―― 今日は本当に楽しかったです、どうもありがとうございました!

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