本屋さんと私

『生まれた時からアルデンテ』平野紗季子(平凡社)

 パッと目を惹く装丁とタイトル、ページを開くと写真と文章が踊ってる。見たことがないような雰囲気に、「なんだこれは」と見る間に夢中になってしまう......
 今回は、そんな新しい食エッセイ『生まれた時からアルデンテ』著者の平野紗季子さんにお話を伺いました。

 じつはこの平野さん、なんと平成生まれ! 落ちついた文章と底知れぬ食への探究心からは想像できませんが、この春から社会人になったというめちゃめちゃお若いお方です。そして小さいころから食日記をつけ続ける、「生粋のごはん狂」なんです。

 ミシマ社の新人編集・アライもおなじ平成生まれであり、そして以前から平野さんのブログの読者で書籍化を待ち望んでいたということもあり、これはどうしてもお話を聞きたい! と、平野さんへ会いに京都から東京へ飛んでいってしまいました。
 食の話から本屋さんの話まで、全2回でお届けします!

(構成・写真:新居未希)

第120回 やばい味に出会って生きていきたい

2014.07.29更新

*前半はこちら

うそみたいな食べものはいやだ

ーー 本のはじめに、「私の食卓には生活がない」と書かれていて、びっくりしたんですね。自分は「食は生活のなかにあるのが当たり前だろう」と思っていたことに気がついたというか。

平野でもごはんって毎日食べなくちゃいけないことだから、正直言って生活でしかないんですよ。生活以外にありえない。それでも、「生活」という言葉ではくくれないような強いきらめきに満ちているのが、私にとっての食なんです。

ーー うんうん。

平野生活って、日常的に繰り返されて、ありふれているものじゃないですか。そうするとどんどん、そのものに対する感度とかが丸く収まっちゃう気がして。けど、そんなもんじゃないぞ、もっと尖ってるぞ、と。生活や日常にからめとられて、そういう発見を見過ごしたくない。

ーー なるほど。

平野たぶん年をとるにつれて、「ごはんは生活だ」っていうふうに納得せざるをえなくなってくると思うんです。家族ができて毎日料理をつくるとか、子どもの食事考えなきゃいけないとか。今はOLになったけど、そのときどきにしか感じられないものがあるなっていうのは思っていて。

ーー 本当にそうですね。

平野できるかぎりやばい味に出会って生きていきたいですね。そういう世界で食べた衝撃の食体験は、日常の米一粒をきらきらさせられるような。・・・だから、たまにはおいしいもの食べようってことです!(笑)

ーー (笑)。いや、それはすっごい大事だと思います。コンビニ飯生活はほんとうにいやだ〜。

平野絶対にいやだ。私もコンビ二のごはんとか、おにぎりも普通に食べるんですけど、どうしてもコンビニのパスタが・・・。だって茹でてから10分たったら、すぐにアルデンテじゃなくなるのが普通のパスタなのに、何時間も前にできて、密封されていて、死体ですよぉ! コンビニではごはんが死体に見えるんです。それはさすがにいやですよね。食に貴賤はないとか言ってるけど、うそみたいな食べものはいやだな。


自分の嗜好が、ひとつの棚だけに収まらない

平野わたし、学生時代にSHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS(以下、シブパブ)というセレクト書店で働いていたので、ミシマ社さんのことずっと知ってたんですよ。

ーー ええっ、そうだったんですか!

平野シブパブの近くに住んでいたんですけど、店長のお兄さんと仲良くて、ある日「人足りないから、紗季子ちゃん週1でもいいから働いてくれない?」って言われて。「え、本屋さんで働こうと思ったこともない人間なんですけど、いいんですか」と。それで働くことになったんですけど、いろんな本を見られるし、本たくさん読めるし、本当に働いてよかったって思います。

ーー なるほど、そういう経緯があったんですね。本屋さんは結構行かれますか?

平野そうですね、よく行くほうだと思います。学生時代は、家と大学の導線に本屋があったし、本屋で働いていたから、本に触れる機会が多くて。楽しいですよね。知らない世界が全部一気に見えてくる。

ーー うんうん。

平野食エッセイはもちろん読みますけど、たとえば食と科学の本とかもすごい好きだし、哲学者とかでも食をテーマに書いている人もいます。写真集で食がテーマのものもあるし、料理本もあるし、小説でもマンガでも、食を扱っているものってたくさんあって。自分の嗜好が、実用書の棚だけには収まらないんです。だから、本屋さんをぐるぐる回らなきゃいけないのが楽しいです(笑)。

ーー すごくよくわかります(笑)。





「こんなとこにあったの」という、あの場所がすごく好き

平野丸善とかって、店の端っこに、小さい喫茶店があるじゃないですか。「こんなとこにあったの」みたいな、あの場所がすごく好きで。本を買って読みながら作業したりするのがすごい好き。

ーー たしかに、ジュンク堂や丸善のあのスペース、いいですよね。

平野そうそう、本当に「何ここ?」みたいな場所にありません? TSUTAYAみたいに、お店入ってすぐ目の前がオープンカフェとかいうわけじゃないんですよね。開けっぴろげな感じではなく・・・。

ーー もう、端っこのほうに。

平野私、東急本店の丸善にすごい行ってたんですけど、まず本屋で作業しているっていう自分が好きじゃないですか、そもそも(笑)。それからカフェとかじゃないから、5時になったら暗くなったりもしないし、すっごいテーブル広いし、座席もなんかどっしりしてるし、いつまでいても、店員さんも超無頓着じゃないですか(笑)。

ーー たしかに、カフェは5時になると暗くなる!

平野本屋だから空調も万全だし。電源とWi-Fiはないですけど、そこも好きだよ、みたいな(笑)。丸善の社長に御礼をいいたいんですね、あの謎の空間を作ってくださってって・・・。ブックカフェとは似て非なるもので。

ーー うんうん。そう言えば最近、ブックカフェってよく見ますよね。

平野増えましたよね。あ、南青山のHADEN BOOKSさんとか、超雰囲気いいですよ!

ーー 南青山っていうだけでかっこよさそうな響き・・・!

平野もともとは雑誌『SWITCH』の事務所の下に、「Rainy Day Bookstore」っていう喫茶店があって、そこの店主をやっていた方が独立して、お店を作られたみたいで。空間がすっごくいい。

ーー ええっ、行きたい・・・。いや〜東京は、おしゃれなところがありすぎます!


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 アライはその後、平野さんに「チーズケーキがおいしいよ!」と教えてもらった洋菓子店「しろたえ」へ。白いレアチーズケーキは、見つめながらチーズケーキ3こは食べれるわ〜というくらい美しく、とってもおいしく、しあわせな口心地でした。

 食に対するアツい思いが爽やかにみなぎる平野さん、これからも要注目です!

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平野紗季子(ひらの・さきこ)

1991年福岡県生まれ。2014年3月慶応義塾大学法学部卒業。小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂(pire foodie)。日常の食にまつわる発見と感動を綴るブログが話題となり、現在「an・an」「SPRING」で連載中。他に「BRUTUS」「ELLE a table」など数多くの雑誌・ウェブマガジンで幅広く執筆。

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