本屋さんと私

『西加奈子と地元の本屋』(140B)

 2014年6月、『西加奈子と地元の本屋』という本が発売になりました。代表の三島をはじめ、西加奈子ファンの多いミシマ社メンバー。「西加奈子さんの特集本が出るらしい」と聞いて以降ずっとソワソワしていたのですが、発刊元がミシマ社とも縁の深い大阪の出版社「140B」だと知り、「ええっ、これはほっとかれへん!」と大暴走。編集部に突撃取材をおこなったり、西加奈子さん原作の映画『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』の試写会に突入したりしているうちに、大阪の本屋さんと出版社が一緒につくったこの本の魅力に、どんどん取り憑かれてしまったのでした。

 そしてなんとこの本の発刊記念として、2014年8月3日、西加奈子さんと弊社代表・三島邦弘のトークイベントが開催されました。ああ、好きなあまりの大暴走って、してみるものなんですね・・・! と大感動(マネはしないでください)。
 大阪の本屋さん・ダイハン書房の山ノ上純さんを進行役に、本の話や本屋の話、はたまたプロレスの話まで!? 縦横無尽に進んだ爆笑対談を、全3回でお届けします。
 いやあ、西加奈子さん、ほんまに最高! もっと大好きになりました。

(構成・写真:新居未希、構成補助:市道野愛)

第121回 本屋のない町なんて、つまらない(西加奈子さん・特別編)

2014.08.26更新


『西加奈子と地元の本屋』は希望の書

西『西加奈子と地元の本屋』を作ってくれはって、感想をきちんと言えないくらい嬉しいというか、ありがたいです。こう言ったら語弊があるかもしれないけれど、最初のうち、私は「本がたくさん売れる」ということがとても怖かったんですね。

三島ほう。

西でも、バケモノみたいなものに何万冊もの本が飲み込まれるみたいなことではなくて、1冊1冊を1人1人のひとが買ってくれるんやって。もちろん書店員さんも、1人1人の人間で。そんな方々が本を「大好きや」って言って売ってくださる姿を見て、もうここからどんだけ発信しても、どんだけ売れても怖くないって思えたんです。

三島へえ~!

西本は、書いてんのは私やけど、誰かのもとに届くまでにたっくさんの人が関わってる。その方たちに1人1人お礼を言うことは叶わないけど、この本を皆さんが読んで下さることが、私の「ありがとうございます」になる気がします。

三島僕は、この本ができたことが凄いなと思っていて。発刊元は140Bさんでウチはまったく関係してないんですけど(笑)、これができたっていうことが本当にありがとうございます! という感じで。共感することばかりでした。

西いや、うち何にもしてないです、ほんまに(笑)。

三島いまミシマ社は京都にもオフィスがありまして、何かこの「東京じゃない場所」でひとつ出版社の新しい流れができてきたらいいなあという思いでやっています。勝手にですけど、140Bさんのことを同士だと思っているので、やっぱりこの本ができたっていうことは、そこから新しい一歩が動いているっていうことなんです。それがとても励みになりました。

西うんうん。

三島出せばぼんぼん売れるみたいな時代も、本当にあったんですよね、きっと。僕は15年前に編集者を始めたんですが、「ほんまにあったんや」と思うような話を結構聞かされてきたんです。でも今はそういう時代ではない。そんな中で、いま新しい小さな良い流れが生まれつつあるんじゃないかなと思っています。そういうことを、作家という立場から感じてらっしゃる西さんの存在がとても励みになりますし、僕はちょっと感動しながらこの本を読ませていただきました。

西ほんまですか? 嬉しいです。私たちはよく、不景気やから、売れへんから「出版業界はもうアカン」っていわれる。でもそれだけじゃなくて、そのなかでものすごく人間的なつながりができるっていう部分では、この時代でラッキーやったなって思います。たぶんうちが、もし出すもん出すもんバンバン売れる作家やったら、めっちゃ調子乗ってたと思うんですよね(笑)。

三島あはは(笑)。

西でも、やっぱり"1人"の人が買ってくれんねやって。何万人じゃなくて"1×何万"なんやって思わしてもらえんのは、こういう時代やったからやなっていうのはすごい思います。


どこの本屋で、なに買いますか?

―― お2人は、こういう本はこの本屋で買うねんとか、行きつけの書店さんとかはありますか。

西私は東京に住んでるんですけど、ありがたいことに書店まわり(※編集部註:新しい本が発刊されたときに、著者が編集者や営業と一緒に書店に挨拶をしに回ること)をさせていただくと、書店員さんに仲良くなる子がいて。その子がいるところでは、なんとな〜く買いたくない本はあります(笑)。これ買ってる! ってバレんの嫌やから、「これやったら見られてええな」っていう本を買う(笑)。

三島(笑)。

西ほかにも、たとえばこれからお会いする人に自分の本を配りたいっていうとき、自分の本めっちゃ買っていかないとだめじゃないですか。そういうときには恥ずかしいから「ちょっと頼まれた」みたいな感じで、店で、顔とかばれてないのに小芝居打つときはあります。それがばれてたらめっちゃ恥ずいんですけどね(笑)。三島さんはどうですか?

三島僕は京都に住んでるんですけど、まんべんなくかなあ。そういえば京都には、三月書房さんというおもしろい本屋さんがあるんです。行くときはちょっと襟を正さないといけないような気持ちになるんで、そんなに頻繁には行けないんですけど(笑)。

西なんでなんですか?

三島宍戸さんという店主のオヤジさんが、番台のような感じでいらっしゃるんですね。入るところから見えるんですけど、もう無言のプレッシャーが。

西古書店じゃないんですか?

三島新刊書店なんです。でもまるで古書のように置いてあって。一番端っこからこう見ていくんですけど、必ず、欲しかった本とか、これは自分に「読め」って言ってるんだろうな、っていう本がある。

西頑固なおやじの焼き鳥屋とかはあるけど、それは焼き鳥が美味しいからであって。本屋さんってその人が作ったものを売っているわけじゃないですよね。それを、眼光鋭く売るっていうのがすごい。

三島いや、本当にそうですね。

西でもそれだけ、「俺好きやねん」と思ってくださってるのかもしれませんね。この本たちには、自分は責任がある、ってことなんですかね。

三島たぶんそうですね。なんかこう小さい宇宙というか、本の冊数は少ないんですけど、なんかその文脈に「お前、わかるか?」みたいに問いかけられているという。

西なるほどー。きっとその方のセレクトがあるんですよね。面白いなあ。


「安本」に名前替えを?

―― 『西加奈子と地元の本屋』を出します、とネットでお知らせしたときに「Amazonで予約しました!」と言って下さる出版関係者の方が結構いてて(笑)。営業に来たときに、うちの店で買うてや!と。なんか、ちょっとショックやったんですよね。

西でも、たとえば芸能人の方や俳優さんにお会いしたときでも「YouTubeで見ました!」って言う人はたぶんいると思うんですよね。それっておんなじことかもしれませんね。

三島そうですね。

西でもそれも不思議で、「図書館で読みました」って言ってくださると嬉しいんですよね。でも、何やろ。私がただの古い人間なんかな。今の若い作家さんたちは、何もこだわらないって感じなんかなあ。

三島いや、そんなことないんじゃないですか。

西やっぱり、三島さんの本(『計画と無計画のあいだ』)にも書いてあったとおり、テーマってアナログやと思うんですよね。私たちの世代って、本屋さんもそうやし、やっぱりアナログの世界にまだなじみがあるじゃないですか。

三島うん、うん。

西図書館って、すごくアナログなイメージがあるんですよね。本が好きな人が来てくれる。でもたとえばブックオフだってもちろん、手に取って買うぶんにはアナログのはずなんだけど、なんかすごく未来的に思ってしまって、そこに怖がっちゃってる自分がいて。

三島なるほど。図書館は自分らも行きましたし、自分たちを育ててくれた場所だなって感じもしますもんね。

西なんやろ、名前かな。ただの 「安本」とかにしたらいいんかな(笑)。やっぱ大量やからかな。古本屋さんやと、その本の価値を見てから値段をつけてくれるけど......そういうことかもしれないですね、綺麗かどうかだけみたいな。

三島消費されてる感じがすごいありますよね。


   

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西加奈子(にし・かなこ)

1977年イラン・テヘラン生まれ。エジプト・カイロと大阪で育つ。2004年『あおい』でデビュー。07年『通天閣』で織田作之助賞、13年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞を受賞。著書に『さくら』『きいろいゾウ』『きりこについて』『炎上する君』『円卓』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』など多数。

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