本屋さんと私

『なんとか生きてますッ』大宮エリー(毎日新聞社)

 作家、映画監督、CMプランナー、詩の朗読やラジオのパーソナリティなど、様々な分野にまたがり活動をされている、ジャンルのない仕事人・大宮エリーさん。
 最新エッセイ『なんとか生きてますッ』には、そんな大宮さんの身に起こった災難や不思議な出来事、日々のあれこれが描かれています。なんと言っても帯文は、「知らない人の膝にはもう乗りません」(!)。前作『生きるコント』『生きるコント2』に勝るとも劣らぬ面白さに爆笑必至。とともに、全体を包むのは、なんとも言えないあたたかさ。「明日もがんばるかぁ」と思える力に満ちています。

 今回はそんなあらゆる分野でご活躍の大宮エリーさんに、ものづくりのお話や言葉にまつわる仕事について、お話を伺ってきたのです、が...「武器なんて何もない」「やりたいことなんてない」「今日がまた来るのかと思うとへこむ」って、ええ、どういうこと!? いつでも丸裸、全力で傷だらけ。そんな大宮エリーさんの魅力を、全3回でお届けします。

(聞き手:星野友里・新居未希、構成・写真:新居未希)

第136回 いつでも丸裸、全力で傷だらけ(大宮エリーさん編)

2015.02.10更新


なんでこうなっちゃうのかな、ということはしょっちゅう

―― CMプランナー、映画監督、詩の朗読やラジオのパーソナリティなどいろんな顔がおありだと思うのですが、そのなかでものを書くことは、なにか違いはありますか?

大宮うーん、自分のなかではあまり違いはないかもしれないですね。でもやっぱり、書くときはブログのように書くのではなくて、カチリと書いているつもりです。けれど締め切りがないと書けないですね。いつも追ってくるかんじです、しんどいです(笑)。
 この『なんとか生きてますッ』はサンデー毎日の連載が元になっているんですが、本にするときは、編集長と書籍の担当さんと3人で「どれを本に入れるか」を話しました。みんなが満場一致で「これがいい!」というものや、バランス的にこういうの入れたほうがいいね、とか。週刊誌の連載なので、数はたくさんある。でもセレクション、何を入れてどういう順番で並べるかがやっぱり大事だから、そこは相談しました。断食した話は全部入れたり。

―― 断食の途中で、本当はいけないお酒をなめてしまったり、けれど先生にそれを素直に報告したり、不真面目なのか真面目なのか、いやでもきっとものすごく真面目なんだろうな、というのが素敵でした。

大宮自分でも真面目なんだろうなあと思います。真面目だからうまくいかないこともあるし、なんでこうなっちゃうのかな、ということはしょっちゅうです。いいことも悪いことも含めて。
 曲がったことは......嫌いかもしれないけど、かといって自分ができているかというとそうじゃない。でもみんなに迷惑をかけたくない、っていう思いはすごく強い気がします。依頼してくれた人の思いには応えたいなあ、と。それに、なにか疑問を感じたまま進めていくと、いいものにならなかったりするからね。


言葉を仕事にできるのは、天才だけだと思ってた。

―― 大学を卒業されたあと、広告会社である電通に就職されたきっかけは何だったのでしょうか?

大宮受かったところがそこだった、っていうのが大きいです。言葉の仕事をできるというのは、天才的なものを持っている人だけだと思っていたので。電通を受けたのは、文章を書いて、しかもそれを先輩や上司に教えてもらえてお給料がいただけるのはいいなあ、と思ったという本当にそんなきっかけなんです。

―― 「言葉」に関するお仕事に就きたいと思われていたということでしょうか。

大宮いや、昔は研究者になりたいと思ってました。どんどん木が枯れて地球が砂漠化している、というようなビデオを見て、砂漠に強い植物を開発できないかなと研究者を目指した時期は長かったかなあ。大学では薬学部に入ったんだけども、それも父親の病気を治したい、と思ったからなんですね。だから文章、言葉に関係する仕事をすると決めたのは、本当に会社に入る直前だったと思います。
 でも広告代理店だからといって、みんながコピーライターとかになるわけではないし、営業になるかもしれない。でもせっかく入ったならそういう、文章を作るほうに行けたらな、と思っていたら本当に偶然そっちにいけたので、そうなっていったという部分は大きいと思います。

―― 「絶対にこれだ!」と目指されていたわけではないんですね。

大宮そうですね。目指していたかというとそうではなくて、就職も本当にいろんな会社を受けたし、会社員にさえなれればいいと思っていました。そしたら30社くらい落ちちゃった。でもその30社が全部マスコミかというと、全然そんなことはないです。食品とか商社、メーカー、交通関係、いろいろでした。「やりたい!」って言ってひとつの業界をたくさん受ける人が多いみたいですけど、私には全然そういうのがなくて。


やりたいことなんて何もない。

大宮お二人も、出版社ということはやっぱり、本が好きで出版社に入られたんですよね?

―― (笑)。はい、そうですね。

大宮なにか好きなものがあるっていうのは、いいですよね。私にはあまり好きなものがないので。「夢」とかもないし......うん、夢がないんですよね(笑)。本のあとがきにも書いたんですけど、「こういうなりたい!」とか「こういう仕事がしたい!」とかがないんですよ。取材とか受けたら、「今後どういった仕事をしたいですか?」「夢は?」とみんな言わそうとするんだけど、ないんです、ほんとに。「どうなりたい」とかもない。「これを表現したい!」っていうのが全然ないんですよね。「カレー作りたい!」「こんなおいしいカレーを誰かに食べさせたい!」とかもない。私はなんにも作りたくないと思っていて。

 お客さんが来てね、「何か食べさせて、君が作ったのを食べたい」「君が食べたいもの作って」と言われてから、「ええ、いま何を食べたいですか?」と聞いて「うどん」と言われたらうどんを作る。「どういううどんがいいですか?」「ちょっと寒いから、なんか温かいやつ」「じゃああんかけにしとこうかな、生姜入れとこうかな」「風邪気味ですか?」「じゃあネギも入れたほうがいいか」......というな感じでものづくりをしているので。相手の立場になってどういうものがいま欲しいのかを考えて、そのなかで自分との接点を見つける、ということなのかな。愛情を込めて作るという意味では、どの仕事も変わらないですけどね。

―― なるほど。

大宮「武器はなんですか?」と言われると武器なんてない。なんにもないんです。なくて困ってる。「人と違ってこれがすごいんだ」みたいなものなんて、そんなものないよね。丸裸で武器も持たずにやっているから、傷だらけ。でも武器じゃないけども、自分が関わるものに対して「そこに愛はあるのか」ということは検証してやっているつもりです。


   

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大宮エリー(おおみや・えりー)

1975年生まれ。作家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナー。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。以後、ボーダレスに活躍中。著書に『生きるコント』『生きるコント2』(文春文庫)、『物語の生まれる場所』(廣済堂出版)など多数。J-WAVE「THE HANGOUT」では水曜のパーソナリティを担当。

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