本屋さんと私

『なんとか生きてますッ』大宮エリー(毎日新聞社)

 作家、映画監督、CMプランナー、詩の朗読やラジオのパーソナリティなど、様々な分野にまたがり活動をされている、ジャンルのない仕事人・大宮エリーさん。
 最新エッセイ『なんとか生きてますッ』には、そんな大宮さんの身に起こった災難や不思議な出来事、日々のあれこれが描かれています。なんと言っても帯文は、「知らない人の膝にはもう乗りません」(!)。前作『生きるコント』『生きるコント2』に勝るとも劣らぬ面白さに爆笑必至。とともに、全体を包むのは、なんとも言えないあたたかさ。「明日もがんばるかぁ」と思える力に満ちています。

 今回はそんなあらゆる分野でご活躍の大宮エリーさんに、ものづくりのお話や言葉にまつわる仕事について、お話を伺ってきたのです、が...「武器なんて何もない」「やりたいことなんてない」「今日がまた来るのかと思うとへこむ」って、ええ、どういうこと!? いつでも丸裸、全力で傷だらけ。そんな大宮エリーさんの魅力を、全3回でお届けします。

(聞き手:星野友里・新居未希、構成・写真:新居未希)

第137回 ヒットは出せないと思ってる

2015.02.11更新

「やりたいことなんてない」とおっしゃる大宮さん。
 では大宮さんの作品に通っている「あたたかさ」は、いったいどこからくるんだろう?
 それに、幅広いご活躍を支えるものがきっとなにかあるに違いない......。
 その根っこに迫りました。



生きづらいと思ってる人が、少しでも楽になれれば

―― 大宮さんは、「思いを伝えるということ」展などの個展もされていますよね。個展って、自分の思っていることを出したい、表現したいことがあって、それを出しているというイメージがありました。

大宮いや、ないです、ないんです。個展も「個展やってよ」と言ってくださったからやった、という感じなんです。やりたいからやったのではなくて、それはほかと同じ、変わらないです。
 そもそも自分が入ったもの、作ったものが万人受けするとも思っていなくて。ヒットを出したい、というのも思ってないし、逆にヒットは出せないと思ってる。ただ自分みたいに悩んできた人が、私の作ったものを見たり読んだりして、「あ、この人も悩んできたんだな」ってホッとしたり、「明日ちょっと学校行くのいやだったけど、行くの楽しくなりそうだな」と思えたり、同じように生きづらいなあと思っている人が少しでも楽になったらいいなあと。だから元が、みんなに宛ててということではないんですよね。

―― ご自身のお母さまとのお話もエッセイのなかによく書かれていますよね。子どものころとはまた違って、大人になってくると、結構距離が近い親子関係というのは難しい部分もあるのかなと思うんです。けども大宮さんは、そんな「しんどいかもしれないな」とこちらが思うようなことでも、そこを寿ぐというか、あったかく笑っている感じがします。

大宮たとえば「学校行こうよ!」とか「いじめられても自分のせいじゃないよ」とかさ、そういうものを真っ向から書く立場に自分はいないと思うんです。日々のエピソードの中で、「それでも生きて行く」「こういうふうにすると、面白く感じられるかもしれないよ」とか、ただ自分のことを書いていくというか。
 文章は、手紙を書くように書いています。ブログのように、誰か不特定多数の人が見るというのではなくて、ある特定の人に手紙を書くように、その人が読んだあとにちょっとあたたかい気持ちになったり、元気になってくれたらいいなあと思いながら。


無茶ぶりしてくれる人の期待に応えたい

―― 伺っていると、大宮さんの受ける力というか、無茶ぶりされる力なるものがすごいのではないかなと。

大宮自分ではまったくすごいとか思わないですけど、まず振られないとやらないからね(笑)。でもありがたいです、無茶ぶりをされるのは。やれるって信じて言ってくださっているわけだから。相手がすごいですよね、私ができなかったらどうすんの、と思うんですけど。でもそう信じてくれることがうれしくて、個展もやったところはあるのかな。
 けれどそれ以上に、頼んでくれた人の心意気、期待に応えたいという気持ちが強いです。そこになにか、私にはまだ見えていないけれど、その人には見えているものがあるのかなと思うから、怖がらずにやっていこうという思いですね。

―― 昔からそういう感じだったのですか?

大宮うーん、働きだしてから、でしょうね。無茶ぶりしてくる人って、学生時代はいなくないですか? 「君、楽器吹いてみよう!」とか、そんなこと言う人いないですよね(笑)。学生のときは、可能性が固まっていなかったりするから無茶ぶりしづらいんだろうと思うし、それぞれが精一杯だったり、子どもとして接されているとそういうことってあんまりない。大人になる=社会に出るということだと思うけども、そうするとやっぱり無茶ぶりがあるんじゃないかなあ。

 でも無茶ぶりも、「仕事として」というのが大きいですよね。仕事じゃなかったらもう無茶ぶりではないかもしれない。責任が生じるから無茶ぶりだな、と思うわけですよね。「ミニスカート履いてみようよ」って言われたとしても、べつに無茶ぶりというか、それは「え、そういう必要ある?」ってなっちゃう(笑)。やってみようかな、という気持ちにはならないですよね。お仕事となると、やっぱりそこに対価があるから。
 お金のためというよりも、なんだろう...広がりがある、それを通じて誰かと繋がっていったりする部分があるから、自分で完結しないしその先を見る人がいる。自分だけで終わることだったらそんなに怖くなんてないけど、責任が生じるから怖い。責任とれるかな、と思うとね、とれるようにがんばらないといけないから。


    

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大宮エリー(おおみや・えりー)

1975年生まれ。作家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナー。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。以後、ボーダレスに活躍中。著書に『生きるコント』『生きるコント2』(文春文庫)、『物語の生まれる場所』(廣済堂出版)など多数。J-WAVE「THE HANGOUT」では水曜のパーソナリティを担当。

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