本屋さんと私

『なんとか生きてますッ』大宮エリー(毎日新聞社)

 作家、映画監督、CMプランナー、詩の朗読やラジオのパーソナリティなど、様々な分野にまたがり活動をされている、ジャンルのない仕事人・大宮エリーさん。
 最新エッセイ『なんとか生きてますッ』には、そんな大宮さんの身に起こった災難や不思議な出来事、日々のあれこれが描かれています。なんと言っても帯文は、「知らない人の膝にはもう乗りません」(!)。前作『生きるコント』『生きるコント2』に勝るとも劣らぬ面白さに爆笑必至。とともに、全体を包むのは、なんとも言えないあたたかさ。「明日もがんばるかぁ」と思える力に満ちています。

 今回はそんなあらゆる分野でご活躍の大宮エリーさんに、ものづくりのお話や言葉にまつわる仕事について、お話を伺ってきたのです、が...「武器なんて何もない」「やりたいことなんてない」「今日がまた来るのかと思うとへこむ」って、ええ、どういうこと!? いつでも丸裸、全力で傷だらけ。そんな大宮エリーさんの魅力を、全3回でお届けします。

(聞き手:星野友里・新居未希、構成・写真:新居未希)

第138回 「なんかよかったかな」と思う日があれば

2015.02.12更新


 子どものころに読んだ本の話から、「今日が来るのがいやだった」という話まで。
 最終回では、大宮さんがなにを見つめているのか、目線の先を探り、「大宮エリー」の核心へと近づいていきました。


本屋さんで憂鬱になる?

―― 物語集『物語の生まれる場所』のなかに、「小さな頃から童話や昔話が好きだった」と書かれていますが、たとえばちいさいころに読んで思い出に残っている本はありますか?

大宮そうですね......『おしゃべりゆわかし』(佐藤さとる作、村上勉絵、あかね書房)とか、『おおどろぼうホッツェンプロッツ』とか、『ずっこけ三人組』とか『おちゃめな双子』、そのあたりがすごく好きでした。あとは灰谷健次郎さんをわりと読んだかな。『海になみだはいらない』とか、好きでしたね。児童文学で育ってきたなあという感じはあります。

―― 本屋さんは行かれたりされますか?

大宮そんなにしょっちゅう行くわけではないですけども、行くときは楽しいです。代官山 蔦屋書店とか、フェアが組まれているのを見たりするのは面白いですよね。京都だと、恵文社一乗寺店が印象的かなあ。うーん、でもそう改めて言われると、本屋さん、好きなのかな......。行くのは好きだけども、本がありすぎて、どれを手にとっていいかわからなくなってしまうんですよね。自分があまり本を読んできていないという思いがあるから、すごく憂鬱になるというか。「これも面白そう!」「これも読みたい」とか思って手にとるんだけど、買っても読まないことも多くて。「いっぱいこんなにいい本があるのに、読めないで死んでいくのか......」とか思うと憂鬱になりますよね。友だちといて「この本面白かったよ」と、その人が話してくれる本の話を聞いて楽しむのが好きです(笑)。


蕎麦食べたい!って言えない

―― お話を伺っていると、人に勧められてとか、人に頼まれて、というのが全部一貫しているというか、徹底されていますよね。

大宮主体性がないのかなあ。

―― いや、お話をしていてそういう感じはまったくしないんですけれど、お仕事のされ方とかはそうなんだなあというのが不思議な印象です。

大宮......みんな主体性ってあるのかなあ。山に行こう、とか、いやちょっとは思ったりするんだけれども、やった試しがないんです。あ、でも食べたいものはあるかな。それも主体性って言うか。
 でも人がいたら「あれ食べたい」って言わないです。「なに食べたい?」って聞かれると、「なんでもいい」って言ってしまいますね。主張ができないんです。心の中で「このなかだとお蕎麦が食べたいな〜」って思っていても、「中華に行くか!」と言われちゃうと「いいね!」とか言っちゃう(笑)。「蕎麦蕎麦!」っていう気持ちがしょぼ〜んとして「中華かー...」と思うけども、「まあいっか、きっと今日は中華なんだ」と思って、言えないです。自分の直感に自信がないのかな。一人でいるときは食べたいものを食べるけど、自分の欲望を押しつけるというか、そういうのは苦手なんだと思います。だから「◯◯のあれが美味しいらしいんだけど、食べに行かない?」「この映画面白いらしいよ、行かない?」とか、キラキラしている人って好奇心旺盛で、本当にすごい。そういうのが全然ないんですよね。


明日が来るのがいやだった

―― 本を読んだりラジオを聴いたりするかぎりでは、やりたいことがたくさんあって、「どれからやろうかな」と選んでいるような感じの方なのかなと勝手に思っていました。

大宮本当ですか?(笑)。この前なんて、「新年が来るのがいやだ」「また来年やんのかと思うとうんざりしてへこむ」って言ってたんです。だってまたお正月がきて、夏がきて...って、繰り返しじゃないですか。また来年やんのか...ってずっとへこんでた。けど友人に「2015年は来たことないんだから、一回きりなんだから」って言われたとき、当たり前のことなのに「あ、そうか」と思えたんですよね。「変わったことしたらいいんだよ、変わったお正月にすればいいし」と言われて、ちょっと「あ、じゃあ大丈夫か、来年来ても」って思えたんです。なんだったんだろう、別に普通のことなのにね。

 そのときは、「明日が来るのもやだなあ、メンドクセー」と思ってたの。一日が終わって、「ああまた今日が来ちゃう」と。死にたいとかそういうわけじゃないんですけど、でも命があるから、それをオリンピックの聖火のように、消さずに走り続けなくちゃいけないということにうんざりだ、みたいな。命があるのはありがたいんです。けど、他の人はそこに誇りをもってエンジョイしているというか、「さあ今日はなにしようかな」「昨日楽しかったな」「明日どんなことがおこるかな」と思っている中で、私は「どう暇つぶししよう...」と思ってる。もちろん日々忙しいんだけども、どうやって生きていったらいいのかな、って考えあぐねていたんですよね。

―― うんうん。

大宮インタビューで「来年はどういう年にしますか?」「今年はどんな年でしたか?」と聞かれてどういう年だったかなと考えたとき、「友だちとケンカして路地裏で泣いたな...」とか、朝イチで行った神社の神々しい雰囲気とか、いろんなシーンが思い浮かぶわけなんです。それで、そうやって思い返せば、なんでもないと思っていたこと、そのときは特別に楽しかったわけではなかったことが、いい絵だったな、いいシーンだったなという感じがして、わりと楽しかったのかもなと思うので、来年は1日でもそういう「なんかよかったかな」と思う日があればいいかな、1日だけあれば年末に「今年はあの日があったからよかったな」と思えるな、という話をしたんです。そしたら後ろ向きだなーと言われちゃった(笑)。
 でも2月からはじめての大絵画展があるので、そこでまた「なんかよかったかな」と思う1日を作れたらな、と思っています。


◎おしらせ ただいま、初の大絵画展を開催中です!

emotional journey ー大宮エリー、初の大絵画展ー
【会期】2015年2月3日(火)- 2月15日(日)※会期中無休
【会場】代官山ヒルサイドテラス ヒルサイドフォーラム
   (東急東横線[代官山駅]下車 徒歩3分)
    〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町 18-8 ヒルサイドテラス F 棟1階
【時間】11:00 - 21:00 (入館は20:30まで)
    ※2月3日・13日はイベント開催のため、入館は19:30まで、20:00閉館となります。
【入場料】300円


月末には京都でイベントもあります。ぜひ!

「FOIL10周年記念 連続トーク」大宮エリー × 竹井正和
【日時】2月21日(土) 17:00〜19:00(開場 16:30)
【会場】京都・cafe marble智恵光院2F(フォイル・ギャラリーと同じビルです)
【料金】¥1,500(1DRINK付き)
予約&お問い合わせはこちらから



   

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大宮エリー(おおみや・えりー)

1975年生まれ。作家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナー。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。以後、ボーダレスに活躍中。著書に『生きるコント』『生きるコント2』(文春文庫)、『物語の生まれる場所』(廣済堂出版)など多数。J-WAVE「THE HANGOUT」では水曜のパーソナリティを担当。

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