本屋さんと私

『がじゅまるファミリー 7』ももココロ(琉球新報社)

 今回の「本屋さんと私」は沖縄スペシャル! 沖縄ではおなじみ、新聞4コマ漫画「がじゅまるファミリー」作者のももココロさんを突撃インタビューしました。
 ユーモアたっぷりに私たちを笑わせてくれる4コマ漫画は、カタ~イ新聞紙面上のオアシス。新聞には欠かせない存在です。しかも毎日毎日、世の中のできごとを映し出しているんですから、すごいですよね。

 そんな数ある新聞4コマの中でも、一味も二味も違った「沖縄のにおい」を感じさせてくれるのが「がじゅまるファミリー」です。沖縄を知る上で欠かせない漫画と言っても過言ではありません!

 沖縄初となる「沖縄の作家による、沖縄の新聞4コマ漫画」を琉球新報紙上で実現し、それから現在にいたるまでなんと11年以上も連載をつづけてこられた漫画家ももココロさんに、お話をうかがいました。

第141回 みんなの「がじゅまるファミリー」

2015.03.25更新

 連載開始から11年超。一体どうしてこんなに長く「つづける」ことができるのでしょうか?
 鍵となった「読者との出会い」、そして本屋さんとの関わりについてお話をうかがいました。


「いつかお礼に来たかった」

―― 連載スタートから、今年で12年目。回数にするとどれくらいでしょうか。

ももココロえっと今度の4月1日でちょうど4000回です。

―― 4000回!? そんなに描きつづけていたら、もう描くことがなくなってしまいそうな気もしますが......途中で連載をやめようと思ったことはなかったんですか?

過去11年分の原稿がぎっしり

ももココロほんとに苦しいときは何度もあるんですよね。だけどそんなときに、偶然、読者の方からうれしい反応があったりして......。

 もう追い詰められてかなり苦しかった時期に、たまたま展示会があって、それを見に来た男の子が、がじゅまるファミリーのキャラクターを描いた色紙をプレゼントしてくれたんです。そんなものをもらったのははじめてだったので、びっくりして話を聞いたら、「いつかお礼に来たかった」って言うんですね。
 お母さんに聞いたら、3年生のときに、すごいいじめにあっていたらしくて、「この子は家に帰ってがじゅまるファミリーを開いたときに、やっと笑顔になれたんです」「本当に苦しい1年間だったけど、でも、笑顔にしてくれたのががじゅまるファミリーで」って。4年生になったときに、もうそういうことはなくなったらしいんですけど、「でも、いつかお礼に行こうね」って話していたらしくて......

―― すごい力ですね。

ももココロ自分の作品を読んで笑顔になってもらっていたんだというのが、すごくうれしくて、やる気が湧いたことを思い出しますね。


「この家族が、自分の家族みたい」

―― 他にもそういうことが?

ももココロ60歳くらいの女性で、旦那さんを亡くされてから、気がつけば1年くらいまったく笑っていなかったという方がいて。でも、偶然がじゅまるファミリーを読んで、ものすごく笑ったそうなんです。

 その女性に、「自分たちは子どももいないけど、なんかもうこの家族(がじゅまるファミリー)が、自分の家族みたい」って言われて、「あぁ、こんなふうに受けとってくれる人がいるんだなぁ。もう少しがんばってみよう」って思えたんですよね。
 いきづまると、そういう出会いがあります。苦しいときの不思議なめぐり合わせですね。



本屋さんでしか出会えない読者がいる

―― 本屋さんとの関わり方は、漫画家デビューする前と後で変わりましたか?

ももココロ漫画家になる前は、単純に好きな本や好きな漫画を買いに行くっていうだけの場所だったんですけど、自分の漫画が単行本として本屋さんに並ぶようになってから、どんなふうに本屋さんが本を売っているのか見えてきたんですよね。本屋さんに本を持っていく営業の人がいて、ポップを作ったり置き場所を考えたり、いろいろな工夫をしてくださる書店員さんがいて......そういった営みがはじめて見えたんです。

―― 「がじゅまるファミリー」のコミックス、どこの本屋さんに行っても、必ずと言っていいほど置いてありました。

ももココロいつも本の営業さんと、「本屋さんがなにかしたいんだったら、なんでも協力しよう」って言っています。本屋さんで似顔絵イベントをやったり、サイン会をしたり。「呼ばれたらどこへでも行こう! たとえ9カ所でも10カ所でもすべて行こう!」と。

「この1カ所だけしかしませんよ。だから来てください」とか、「先着何名様ですよ」みたいなことじゃなくて、もう来た人にはみんな喜んでもらえるように、たとえ5人くらいしか来なくても、その5人に喜んでもらえるようにがんばろうと。そしたらきっとね、本屋さんにプラスになることもあるはずだからと信じて。書店員さんのがんばりとか、そういうのが、作者になってよく見えてきたところですね。

―― 本屋さんからすると、そうやって全面的に協力してもらえるのはすごくうれしいですよね。やっぱり作者さんに対しては、遠慮してしまう部分があると思うので......

ももココロそうですね......よく、「先生」って言われるんですけど、「僕、先生じゃないよ~」って言うんです。こうやっていろんな人たちの手を経て完成した本も、販売してくれる場所がなければ読者の手には届かないですから。
 だから協力したいんですよ。作者だから仰々しくとか、呼んでももしかしたらお客さんが来ないんじゃないかとか、全然気にしないでください、と。向き合うべきはお店にいらっしゃる読者に対してであって、作者も書店員さんも営業さんも一緒に読者と向き合うことが大切だと思うんです。

 ある書店さんでイベントをやったときに、たまたまタイミングが悪くてほんとに5人くらいしか来なかったことがあるんですよ。聞いてみたらどうも当日、地域のほとんどの小学校が運動会だったらしくして......。でも、だからこそ、来たお客さんひとりひとりとゆっくりお話をしながら、普通だったらできないことをやってあげられたりとか、いろんなことができました。

―― そんなチャンス、めったにないですよね。

ももココロ沖縄では、大きく分けると、、琉球新報を読んでいる人、沖縄タイムスを読んでいる人、新聞をとってない人っていう3つに分かれるので、もし新聞連載だけだったら、単純に考えて沖縄の30%くらいの人にしか読まれないっていうことですよね。でも本になって書店に置かれると、それまで「がじゅまるファミリー」を知らなかった人と接点を持つチャンスがある。それってすごくありがたいことだと思うんです。これからも書店さんと協力して、読者へ「がじゅまるファミリー」を届けたいですね。

―― 今日はすてきなお話、ありがとうございました。

   

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ウチナー漫画家 ももココロ

1968年 沖縄県読谷村楚辺生まれ
1990年 KBC国際電子ビジネス専門学校卒業
     旅行会社、専門学校などに勤務
2003年 漫画家を目指し1年間の漫画家修行
2004年 琉球新報でウチナー4コマ漫画「がじゅまるファミリー」の連載がスタートし、漫画家デビュー
2014年 「がじゅまるファミリー」の新聞連載が10週年を迎える
主な作品(4コマ漫画)に、「がじゅまるファミリー」(1~7巻)「ハイタイ! チョンダラ子やいびーん」「チビネコじゅうじろう」「健康スイッチ♪」「いとしの琉球カウボーイ」がある。

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