本屋さんと私

(上)『サマータイムマシーン・ブルース』(下)『曲がれ!スプーン』

 

 京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画。
 1998年に結成して以来、「テレビゲームを思わせるトリッキーな地形や、SF・ファンタジーめいた世界観の中で、登場人物たちがモソモソと日常会話をつむぐ、といったスタイルの群像コメディを得意としており、年1回ほどの本公演ツアーを行っている(公式HPより)」それはもう、唯一無二のおもいっきり面白い劇団です。映画『サマータイムマシーン・ブルース』(2005年)、『曲がれ!スプーン』(2009年)の原作となる舞台を上演していた劇団として、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
 また、劇団の本公演だけではなくいろんな企画公演を行っていたり、映画祭やテレビ番組制作、ラジオなど、多方面にわたってコンテンツ制作を展開しているクリエイティブ集団といった一面も。

 とにもかくにもヨーロッパ企画の作品は、毎回わくわくドキドキ。公演の前日は、まるで遠足の前の日みたいな気分になります。とにかくおすすめ、むっちゃ面白い、と数年前から毎回公演を観に行っている編集部アライが、劇団の代表であり、劇団結成以来すべての作品の脚本・演出を担当されている、上田誠さんにインタビュー。
 現在絶賛ツアー中の新作『遊星ブンボーグの接近』の話から学生時代の話、京都で活動することについてなど、お話を伺ってきました。
 最終回では、学生時代のお話をこっそり・・!(?)
 

(聞き手・構成:新居未希、写真:中谷利明)

第156回 隠れオタクから、劇作家へ!?

2015.09.30更新

完璧じゃなくても動いてくれる

―― 上田さんが大学1回生のときに、ヨーロッパ企画は結成されたんですよね。あの、上田さんはどんな学生だったんですか?

上田スポーツが苦手でモノを作るのが好きで、高校時代はずっとパソコンをしてました。MSXというテレビに接続できる小型のコンピュータで、ゲームを作っていましたね。あとは豆本作ったりとかもしていましたね。もう人気がなかったというか、クラスでもまったく注目が集まっていなかったタイプの人間です(笑)。

―― そうだったんですか(笑)。

上田自分ではすごく面白いことをやっていたつもりで、オリジナルゲームを作ってプログラムをしたりしてました。けれど当時は今ほど「オタク」は市民権を得ていなかったので、オタクだと思われたらヤバイなと思って、違う顔を見せてましたね。学校では明るく振舞いながらも、家ではパソコンを触って、パソコン専門誌に投稿したりしてたんです。
 でも当時のゲームのプログラムって相当シビアなもので、エラーが出たら本当に苦しいんですよ......。長いプログラムを打って、確認をしたらエラーが出るんですけど、どこにエラーが出てるのかわからない。

―― せ、切ない......!

上田もう、泣けてくるんですよ。「どこが間違ってるんやろう」って、本当にグーッと涙が出てきたりして。しかも一人やし(笑)。
 そんなある日、学校でイケてる感じの友だちから「クラス劇の脚本・演出をしないか」と誘われました。「やってみるか」と思ってやってみたところ、ゲームと違って、人はエラーがあっても動いてくれるんだ、ということを発見したんです。脚本が多少破綻していても、「まあまあ」とか言いながらやってくれる。それはプログラムの厳密さにはないファジーさで、しかもみんなと共同作業だし、一人でエラー画面見つめて泣いているより確実に楽しい。それでもうこれは完全に楽しいな、と思って、脚本を書き始めたのはそこからです。

―― おおー!

上田ゲームを作ったりしていたことの延長で、大学は理系でした。工学部に進んで、ゲームを作る人かプログラマーになろうかな、とイメージしてたんですけど、道が変わったという感じですね。



辞めた大学で新作を書いた

上田そこからどう劇団だけで食べていくと決めたかというと、こういうのって、なんというか......ジワジワとほかの道が消えていく感じですよね、決断してその道に行くというよりかは(笑)。

―― わはは(笑)。

上田ぼくの場合は、大学1回生で演劇を始めてから学校に行かなくなったので、大学生活が5年目に突入してしまって。卒業するには、研究室に入って単位を集中的に取らないといけなかったんです。でも研究室に入ってしまうと、1年間拘束されてしまう。その頃、劇団はみんないい状態でお客さんも徐々に増えてきていましたし、すでに大学を卒業した劇団員も多かったんですが、みんなすごく「続けよう!」という気持ちでいてくれて。
 それで結局、大学を辞めました。5年通ってね(笑)。そこでいろいろ腹を括ったというか、状況がそうなった感じですね。

―― もう大学を辞めるか、いい状態のときの劇団を休むか、という状況だったんですね。

上田そうですね。劇団では当時1年間に3回くらい公演をやっていたので、卒業するために1年間も休んでしまうと、勢いも削がれてしまうと思ったんです。
 当時のぼくは今ほど危機感や怖さももっていなかったので、割と楽天的に大学を辞められたんですけど、退学届を提出して受理された瞬間に怖くなってしまって。次の日、思わず大学に行きました。そのとき新作の執筆中で、その合間に退学届を出したんですけど「怖っ! いや、無理や!」となりまして。辞めた大学の教室で新作を書いてました(笑)。


劇場で、おもいっきり笑おう。

―― たくさん楽しいお話を伺ってきましたが、とにかくヨーロッパ企画さんの劇、一度生で観てほしいなあと思います。もちろんDVDも面白いんですけど、劇場で観るほうがものすごく面白いし、自分のなかでの受け取り方にも違いがある。行ってみないとわからないんですよね。

上田どこか「祭」というか、「行ってみて何が起こるんやろ?」というワクワクを伴った演目って、ぼくはすごく好きなんです。でもそういうものってあまりない気がしていて、そういう劇をするのが、自分が理想とするところなんですよね。
 でも映像もテレビにかぎって言うと、ぼくが子どもの頃は、好きな番組があればその曜日のその時間にテレビの前に座って「今週はどうなるんだろう!」とドキドキした気分で観ていたんですよ。その視聴体験みたいなことはやりたいな、と思っていて。わがままを言うと「あの人たち、今度こんなことやるんだ。じゃあ絶対観なきゃ!」みたいな、そんなドキドキを感じさせたいと思っています。

―― 客席を見ていると、お客さんにはけっこう若い人も多くて、年齢層も幅広いですよね。

上田それだとすごく嬉しいです。もちろん上の方にも観てもらいたいですけど、若い人やお子さんにも観てもらいたい。それもさっきの話と一緒で、いろんなところに開いておくというか、接続できるようにしておきたいんですよね。いろんな入り口を、できるだけ閉じないようにしておこうと思っています。ある一点を狙いこむような劇にはしたいんですが、入り口はいろいろあったほうがいいなあと。それで面白い感じになればと思いますね。

―― 最後にひとつ伺いたいことが。あの、劇場で声を出して笑うのはいいのでしょうか? 私、いつも笑いすぎてしまうんですけども......。

上田ぜひぜひ、笑ってほしいです! 笑い声、すごく嬉しいんですよ。役者なんかウケなかったら何もしなくなりますからね。それまでちゃんと劇を作っていたのに、劇場に入ったら「ウケてる・ウケてない」とかしか言わなくなります(笑)。

―― ヨーロッパ企画さんの劇って、なんだか寄席に似ているところがある気がしていて。寄席もヨーロッパ企画さんの劇も、誰かが笑うことで周りの人も笑いだして、会場があったかくなる楽しさがあると思うんです。

上田笑い声って、まさにそうですよね。身体って、笑い声に反応するんです。芸人さんが誘い笑いをするのもそれと同じで、笑っている人を見ると笑えてくるからなんですよ。やっぱり笑いに包まれると、笑っていない人まで笑えてくるという体感はある。それは大事だし、それこそ劇場でしかできないことだなあと思いますね。

―― ではこれからも、バンバン笑わせていただきます! 「遊星ブンボーグの接近」、もう一回観に行こうかなあ。


***

ということでヨーロッパ企画の劇は観てみないとわからない!
劇場に足を運んで損はなし! めっちゃおすすめですのでぜひ観てみてください。

『遊星ブンボーグの接近』公演情報

東京公演:9/25(金)~10/4(日) 本多劇場
9/25(金)東京初日スペシャルイベント:メンバー全員による文房具対決+大抽選会
9/26(土) 18:00の回ゲスト:せきしろ・バッファロー吾郎A
9/28(月) 19:00の回ゲスト:本広克行(映画監督)・ムロツヨシ
9/30(水) 19:00 ゲスト:藤村忠寿・嬉野雅道(HTB「水曜どうでしょう」ディレクター)
10/1(木) 14:00 ゲスト:中山祐一朗・加藤啓
10/1(木) 19:00 ゲスト:かもめんたる
10/3(土) 18:00ゲスト:HARCO

大阪公演:10/10(土)~10/15(木) グランフロント大阪北館4階 ナレッジシアター
高知公演:10/24(土) 高知県立県民文化ホール グリーンホール
広島公演:10/29(木) JMSアステールプラザ 中ホール
福岡公演:10/31(土)~11/1(日) 西鉄ホール
横浜公演:11/5(木)~11/8(日) KAAT 神奈川芸術劇場大スタジオ


   

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上田誠(うえだ・まこと)

1979年京都生まれ。1998年、大学入学とともに同志社小劇場に入団し、同年、劇団内ユニットとしてヨーロッパ企画を旗揚げ。ヨーロッパ企画の代表であり、すべての本公演の脚本・演出を担当。外部の舞台や、映画・ドラマの脚本、テレビやラジオの企画構成も手がける。

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