本屋さんと私

『ネットコミュニティの設計と力』近藤淳也(角川インターネット講座)

 

 近藤淳也さんといえば、「株式会社はてな」の創業者。はてなの提供する「はてなブログ」や「はてなブックマーク」「人力検索はてな」などのサービスは、知らず知らずのうちに生活に溶け込んでいます。
 そして先日、近藤さんが監修された『ネットコミュニティの設計と力』が発刊。15冊のシリーズで日本におけるインターネットのすべてを網羅しようという試みの「角川インターネット講座」の第5巻目です。
 京都オフィスから自転車で5分、ご近所のはてなの近藤さんに、ご著書のこと、本選び、そして本屋さんのこと、伺ってきました!

(聞き手・構成:田渕洋二郎)

第159回 ネット上で感じる心の揺らぎ

2015.10.10更新

ーー本をネットで探すときはどういう基準で選んでおられますか?

近藤最近はフェイスブックなどで知り合いの人が本の感想を書いているときがあって、その感想に惹かれて、そのまま買うことが結構ありますね。「この人、この本からなにか感じたんだな」と感じるんです。深夜に本を読んで、ひとことつぶやくみたいなことだけでも、感じることはあります。
 書いてる内容が自分に役に立つかというよりも、ピンと来ることがあるんですよね。それで選ぶのが一番おもしろい気がしているんです。自分が信頼している人が心を動かされたというのがわかった瞬間に、それはなにかあるんだろうと思ってしまうんですよね。
 Amazonなどのレビューからそれを読み取ることもあって、それは星の数ではないんです。いろんな意図で書く人がいるから読み飛ばす人が多いんですけど、たまに信頼できそうな文体の人が書いている。そういう人が「いい本だ」といった本は読んでみるといい本であることが多いですよ。



 だから僕の場合は、レビューはそこまで参考にしないことが多いんですけれども、たまに心の動きがわかるものがあって、その「心の揺れ」みたいなものを感じるときは当たりが多いような気がしています。この本を売ってやろうという意図ではなく、「この本ほんとにおもしろかった!」という人のすごく純粋な心の揺らぎを汲み取れる可能性というのが、インターネットにもあると思っているんですよね。
 それをうまく見つけ出すようになれば、本と人の新しい関係ができるのではないかと考えています。


本屋さんに1日中いることも...

ーーお気に入りの本屋さんなどはあったりしますか?

近藤近所の大垣書店さんなんかにはよくふらっと入りますね。あと代官山の蔦屋はけっこう好きです。代官山の蔦屋に行って、気になる本を大量にカゴに入れる。そしてAnjinっていうコーヒーを飲みながら読めるところに何十冊も持ち込んで、面白いのだけ買って帰るみたいな。ああいうのが好きですね。一回ひどい時は、朝から行ってまずコーヒー飲んで、昼になってそのまま昼ご飯を食べ、昼過ぎくらいに「もうそろそろビール飲みたい」ってなって、夕方までいたことありますよ。たまに本の海に浸りたいときは、1日中本屋さんにいることもあります。
 あと、僕、文章読むの苦手で、本読むのすごく遅いんですよ。だから立ちながらこの本が面白いかどうか判断するのはあまり得意じゃない。だから座りながら読めるっていうのは結構大事ですね。

代官山蔦屋書店 Anjin店内風景(DAIKANYAMA T-SITE公式HPより)



浮き具合に自覚的であること

ーー最後に、会社経営について感じていることはありますか。

近藤先ほどのトレランの話にもつながってくるんですが、やっぱり自然の速度を超えて無理してしまうと、どこかで歪みが出てしまいます。経営していくと「なるべく早く会社が大きくなる」とか、「なるべく早く株価が上がる」というのが、一番の成功であるように思われるかもしれないんですけど、そこで無理をすると必ず後でしっぺ返しが来ます。だから地に足をつけるというか、自然との調和と言いますか、そういうことが大切なのではないかと思うんです。

 この本の中でも、広井さんが書かれているんですけれども、明治時代から人口がどんどん増え始めて、経済成長も始まって、「日本が離陸していった」という表現をされているんですよね。地に足のついた自然と調和した状態があったとして、そこからすこし浮かんでいった。株式市場の時価総額なんかもどんどん膨らんでいった。

 会社を経営する際に、「売上や組織を大きくしていく」というのは価値のある挑戦だと思います。ただ、その浮き具合を、身体できちんとわかっているということが大事だと思うんですよ。そういう意味では個人で山を走るというのもそうですし、会社としても、何が地に足がついていて、何がすこし浮かんでいるのかというのが、わかっていられると良いと思います。

はてなのオリジナルサイクルジャージ



 はてなの話をしますと、今、社員のメンバーが登山に行ったりとか、サイクリングに行ったりだとか、そういうことをする社員がけっこういるんですよ。山部とか自転車部があったりして。アウトドアだけでなく、社内でもボードゲームとかしてます。ボードゲームも、遊んでいる相手は人間なんで、結局人間と接しているわけですよね。こんな感じで、自然とつながったり、人とつながったりというようなことが盛んに行われているのを見てると安心しますね。

 そういう風にバランスが取れていくと、そんなに変なことは起こらないかなという気はしていますので、良いなと思っています。

ーーなるほど、地に足のついたIT企業「はてな」。素敵な会社ですね。今日はたくさんのお話、どうもありがとうございました!

   

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近藤純也(こんどう・じゅんや)

1975年三重県生まれ。株式会社はてな代表取締役会長。京都大学理学部卒業。2000年に同大学院中退後カメラマンなどを経て、01年にQ&Aサービス「人力検索サイトはてな(現 人力検索はてな)」を開始し、京都で有限会社はてなを設立。04年に株式会社はてなに改組。ブログサービス「はてなブログ」「はてなダイアリー」、ソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」など、独自性のあるWebサービスの創出・提供に取り組む。06年に米国シリコンバレーにて子会社「Hatena Inc.」を設立。任天堂株式会社との協業事業「うごメモシアター」「うごメモはてな」や、家庭用ゲーム機「Wii U」に内蔵されているネットワークサービス「Miiverse」の開発にも協力。著書に『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社)がある。

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