本屋さんと私

『過激派オペラ』監督・原作・脚本:江本純子、主演:早織、2016年10月1日より全国で公開中

 3年前ほど前のある日。
 ミシマ社自由が丘オフィスに、美しくて飄々とした雰囲気の一人の女性が現れました。

女性:「ジュニア(ミシマ社でPOPづくりなどを手伝ってくれている、主に学生さんたちの呼び名)として来させていただいたのですが」

ミシマ社一同:「あ、そうなんですね、ぜひぜひ!」
(心の声:わー、美人さん! でもどうやら学生ではなさそうな雰囲気。いいのだろうか。)
「ところで、普段は何をされているんですか?」

女性:「あの、女優をしています」

ミシマ社一同:「えええーー!!! そういえば観たことある!」

という感じで、ときどきミシマ社のPOPづくりやイベントのお手伝いに来てくれていたのが、今回取材をさせていただいた、女優の早織さんでした。

 『舞妓Haaaan!!!』『百円の恋』等々で存在感の際立つ役どころを積み重ねられ、現在公開中の映画『過激派オペラ』では、体当たりの演技で主役をはっておられます。早速観に行ったミシマ社一同、あまりの迫力にノックアウト...。みなさん、とにかく観ていただきたいです。

 今回は、そんな最新作の撮影裏話から、本好きな早織さんの読書ヒストリー、そして本屋さんのお話などなど、たくさんうかがいました。3日間にわたってお届けします。

(聞き手・構成:星野友里、構成補助:菊池まどか)

第188回 13年越しの熱量

2016.10.23更新

「あなたは女優が向いていると思う」

―― 女優という仕事の、どういうところが好きですか?


早織私、14歳のときに、河瀬直美監督に会ったのが、やっぱりすごく、心を動かされたことの、いちばん最初だったんです。それまでは、もう普通の中学生で、美術が好きだったから美術の勉強をして、京都市立の美術の高校に行きたいな、と思っていたんですね。
 ただなんとなく、京都の閉塞感というか、大人になったら良さがわかるんですけど、何だろうこの閉塞感!みたいなのが小さいときにはあって、なんかちょっと脱出したいな、という気持ちもあったんです。それで、単純に、雑誌の読者モデルとかそういうので、東京に行ってみたいな、と。
 そうしているうちに、オーディション雑誌の方から、関西圏で映画のオーディションがあって、女の子を探しているんだけど受けてみないか、という連絡をもらって。じゃあ、受けたいです、となって、それが河瀬さんの映画で。
 審査のなかで、面接があったんですけど、そこで河瀬さんは、ひとりひとりの候補者に、生い立ちを聞いていったんです。趣味とかじゃなくて、どういう家庭環境なのか、とか、そういうことを聞かれて、深く対話してくれている感じがしたんですね。

―― うんうん。

早織ちょっと語弊があるかもしれないですけど、読者モデルでは、そういうことはまあ聞かれないじゃないですか。ビジュアルやお洋服が着こなせるか、ということなので。
 最終審査は1日くらいかけて、ずっと即興をやって、最後3人くらいだけ残って。結局別の方が選ばれたのですが、そのときに、あなたはまだ若いから、これから頑張ってってほしい、あなたは女優が向いていると思う、と河瀬さんに言われて。
 その言葉が、もうびっくりというか、嬉しかった。そのあとに、この人に付いていきたいな、とピュアに思って。そのあと映画の撮影が奈良であったんですけど、夏休みだったので、エキストラでその映画の現場に参加して。そうやって、14歳の夏に、映画の現場というか、ものづくりの現場みたいなのに触れたことがいちばん大きかったですね。熱量というか。

―― その熱量が、ずっと続いているんですね。

早織そうです。あと河瀬さんと仕事ができる人になりたい、と思ったから、じゃあ演技の勉強しないと、という発想になり、雑誌で演技レッスンをやっている事務所を探しました。それがずっと所属している事務所なんですけど、応募して、運よく入れて。中学3年生くらいから東京と京都を行き来する生活を始めて、という感じでした。だからまあ...向き不向きっていうのも、いくら河瀬さんに向いていると言われたからといって、別に才能ある人がいっぱいいるのも知っていますし。なんなんだかよくわからないですね。


私は真になにが好きか、とより濃く探究する気持ち

―― 今回の撮影直後、「演技が楽しくない」という気持ちになった、という記事も読みましたが、やめたいというのとはまた全然違うんですね。

早織そうですね、違いますね。演技が楽しくないというか、演技が嫌いというのか、そういう気持ちがぐわっと出てきたのは、やっぱり今回、自分なり、他の人のいろんな感情というのに、すごく巻き込まれたんですよね。そうすると、身体から拒否反応が出てしまったというか。
 あと、これまでフワアッとしていた自分の気持ちみたいなものを、私は真になにが好きか、とより濃く探究する気持ちが出てきて。より、クリアになった感じがします。それまでは、何でもやってみようとか、本当にフワッとしていたんですけど。そうじゃなくて私はこれが好きだ、とか、私は映画が好きだ、とか。そういうのが出てきたような感じがしましたね。

―― これからこういう役をやってみたいな、というのはありますか?

早織そうですね。いま、日舞の稽古を続けているので、時代劇の役をやりたいなっていうのはありますね。

―― いいですね。

早織きっかけが、3年くらい前に、早乙女太一さんと一緒に舞台で共演するのが決まったことで。早乙女さんと同じ舞台に立つとなると、本当に怖かったんです。自分が着物を着ること、立ち姿の様にならなさみたいなものがとても怖くて。で、日舞の稽古は必須だ、と思って、知り合いの役者さんとかに尋ねて、今の師匠にお会いすることができました。


(つづきます)

    

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早織(さおり)

1988年5月29日生まれ 京都府出身 スターダストプロモーション所属
2003年、テレビドラマ「東京少女」(03)でデビュー。その後もテレビドラマ「電車男」(05)、「1リットルの涙」(05)など話題作に出演し、「ケータイ刑事 銭形雷」(06)で初主演を飾る。主な出演作に、映画『舞妓Haaaan!!!』(07)、テレビドラ「帰ってきた時効警察」(07)、映画『旅立ちの島唄~十五の春~』(13)、舞台「祝女~shukujo~」(14)、日本アカデミー賞5冠受賞の『百円の恋』(14)では主人公の妹役を印象的に演じ脚光を浴びた。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16)や映画『スリリングな日常』(16)にも出演し、待機作は映画『キセキ -あの日のソビト-』(17公開予定)。

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