本屋さんと私

『過激派オペラ』監督・原作・脚本:江本純子、主演:早織、2016年10月1日より全国で公開中

 3年前ほど前のある日。
 ミシマ社自由が丘オフィスに、美しくて飄々とした雰囲気の一人の女性が現れました。

女性:「ジュニア(ミシマ社でPOPづくりなどを手伝ってくれている、主に学生さんたちの呼び名)として来させていただいたのですが」

ミシマ社一同:「あ、そうなんですね、ぜひぜひ!」
(心の声:わー、美人さん! でもどうやら学生ではなさそうな雰囲気。いいのだろうか。)
「ところで、普段は何をされているんですか?」

女性:「あの、女優をしています」

ミシマ社一同:「えええーー!!! そういえば観たことある!」

という感じで、ときどきミシマ社のPOPづくりやイベントのお手伝いに来てくれていたのが、今回取材をさせていただいた、女優の早織さんでした。

 『舞妓Haaaan!!!』『百円の恋』等々で存在感の際立つ役どころを積み重ねられ、現在公開中の映画『過激派オペラ』では、体当たりの演技で主役をはっておられます。早速観に行ったミシマ社一同、あまりの迫力にノックアウト...。みなさん、とにかく観ていただきたいです。

 今回は、そんな最新作の撮影裏話から、本好きな早織さんの読書ヒストリー、そして本屋さんのお話などなど、たくさんうかがいました。3日間にわたってお届けします。

(聞き手・構成:星野友里、構成補助:菊池まどか)

第189回 新書を読んで独学していた中高時代

2016.10.24更新

編者者の役をやりたくて

―― ミシマ社には最初、ジュニアとして来てくれたんですよね。女優さんをやりながら、なぜ...?

早織もともと私はミシマ社さんの本が好きで、ずっと読んでいて。三島さんのブログを覗いてもいたんですけど。ちょうどそのころ、編集者の役っていうのを自分がやりたくて。

―― おお、そうだったんですね。

早織あったんですよ、お話が。で、編集者のお仕事にも興味があったので、それが一つきっかけであって。ただ、デッチ(ミシマ社のお仕事を短期集中でお手伝いしていただく学生さんの呼び名)の募集だと、大学生って書いてあったんですよ。

―― たしかに。

早織あ、でも私は大学生じゃないなと思って(笑) でも、ジュニアのお手伝い募集には大学生って書いてなかったんですよ。


―― 言われてみれば、そうだったかもしれない。

早織あ、こっちだったら大丈夫なのかな、と思って応募して(笑) 私はもともと、ちっちゃい頃から絵や図画工作が好きだったので、ポップづくりも楽しそうだなと思って。

―― ミシマ社の本では、どんな本を読まれていたんですか?

早織もともと内田樹さんが好きだったので、たぶん、『街場』シリーズからかな。『街場の文体論』も好きです。大学生のときからですね。


新書を読んで、学校の勉強を補う日々

―― 本は小さなころから好きだったのですか?

早織小さい頃は、絵本は好きでした。すごく好きな、児童小説を書いてる作家さんがいて、岡田淳さんっていう方なんですけど。その方のファンタジー、日本のムーミンと言われていて。装丁がすごくかわいくて、中の挿絵も、岡田先生が全部描いてるんです。それを小学生のときに図書室で見つけて。それで、感想をお手紙に書いて、ファンレターを送ったんです。

―― へええ、すごいですね。

早織ファンレターの送り先がわからなかったので、出版社に送りました。そうしたら、出版社の方がちゃんと岡田先生に渡してくださって、そのあと岡田先生から葉書のお返事が届いて。読んでくれてありがとう、と。


―― それはうれしいですね! なかでもお気に入りはどの本ですか?

早織「こそあどの森の物語」シリーズの『ふしぎな木の実の料理法』。

―― その後はどんな本を読んでいましたか?

早織そのあと少し間が空くんです。私、仕事をしはじめたのが、14歳か15歳くらいだったんですね。それで、中学・高校時代は、仕事をしながら学校も行っていたんですけど、仕事で休むことが増えてきたときに、学習を補うために、本を読むことがすごく多くなったんです。そのときは、新書がすごく手助けになって。新書で、学校の勉強の中で難しいところとか、自分が苦手なところを勉強するようになった、っていうのが、いちばん大きかったです。

―― そうか。新書ってそんな使い方ができるんですね。

早織そうなんです。岩波ジュニア新書、ちくまプリマー新書とか。たとえば古文だと、橋本治さんとかの本を読んだり。

―― それは、いい勉強の仕方ですね。

早織ああ、そうですかね(笑) 古文ってこんなにおもしろいんだ、って思ったり。学校の先生の話はつまんないけど、先生は違うところにもいる、っていう。


―― なるほど。学校の勉強が苦手な人にもオススメしたい方法ですね。

早織そうですね。なかでも本が好きになったのは、養老先生の影響が大きかったです。『バカの壁』がすごく流行っていて、でも私、『バカの壁』はすぐにはあまり理解できなくて(苦笑)それが、「よりみちパン!セ」シリーズの、『バカなおとなにならない脳』を読んだら、すごくおもしろかったんです。

―― いい本との出会いに恵まれたんですね。

早織そうですねえ。本をよく読むようになったのが、高校生のときでしたね。大学に入ってからは、内田先生の本をいちばん読んでいたかな。『街場の教育論』は、学ぶ力というのは、自分で伸ばしていけるんだ、というところや、師匠をいろんなところから見つけていく、というところに、すごくハッとしたんですよね。


女たちの、闘志や連帯感を楽しんで観てほしい

―― 今回取材場所をどこにしましょうか、というやり取りをしたときに、本屋さんがいっぱいあるからという理由で上京して初めて住んだ土地として、西荻窪をあげてもらったのですが、あのあたりに好きな本屋さんがありますか?

早織いちばん好きなのは颯爽堂というところだったのですが、残念ながら閉店してしまいました。颯爽堂という響きが好きで。あともうひとつは、駅近の今野書店さん。あそこもすごく良い書店だなって。

―― ミシマ社の本もたくさん置いてくださっている、素敵な本屋さんですね。京都にいた頃によく行っていた本屋さんはありますか?

早織三月書房さん。あそこは大好きですね。

―― これから映画を観る方に、なにかメッセージはありますか?

早織ぜひ劇場で、大きいスクリーンで観てもらえると嬉しいですね。それと、男性の知り合いの映画監督が、「僕の演出では、彼女たちの表情は見れない、引き出せない」と言っていました。

―― なるほど、わかります。女の子たちの、振り切れた表情に、心をつかまれるというか。残像が残っています。

早織男の人たちの映画って、ありますよね。ギャングとか、やくざものだったり、バイオレンスだったり。でも女たちの、闘志や連帯感、それが映されたのは、稀なことではないか、という感じがしました。

―― 女性だけでやっているからこその爆発感が。

早織ありますね。

―― ぜひたくさんの方に、観ていただきたいと思います。早織ちゃんがジュニアで来てくれたご縁で、私やミシマ社のメンバーにとっても、世界が広がった感じがします。今日は本当にありがとうございました。

早織私も、今回ミシマガジンの読者の方に映画のことを知っていただけるのは、すっごく嬉しいです。ありがとうございました。


   

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

早織(さおり)

1988年5月29日生まれ 京都府出身 スターダストプロモーション所属
2003年、テレビドラマ「東京少女」(03)でデビュー。その後もテレビドラマ「電車男」(05)、「1リットルの涙」(05)など話題作に出演し、「ケータイ刑事 銭形雷」(06)で初主演を飾る。主な出演作に、映画『舞妓Haaaan!!!』(07)、テレビドラ「帰ってきた時効警察」(07)、映画『旅立ちの島唄~十五の春~』(13)、舞台「祝女~shukujo~」(14)、日本アカデミー賞5冠受賞の『百円の恋』(14)では主人公の妹役を印象的に演じ脚光を浴びた。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16)や映画『スリリングな日常』(16)にも出演し、待機作は映画『キセキ -あの日のソビト-』(17公開予定)。

バックナンバー