ホんまかいな通信

第1回 ホホホ座についてとりあえず知っていることを書いてみた通信

2016.01.02更新

 ホホホ座について知っていることを書いてください、ということなのでそうする。そうではなかったのかもしれないが時間がない、そうしよう。ちなみに私はホホホ座のメンバーである。メンバーのことは座員と言う。違っていたら恥ずかしいが、たしか、そう言い合おうと約束したはずだ。座員は4人いる。人間で例えるなら頭と胴体を山下と松本で担い、表の顔が山下、裏の顔が松本、手足を動かすのがヒロミさん。では私は?うぶ毛?わからない。さあ?としか言いようがない。以下はホホホ座の、さあ?を動かす私が知る限りでの、ホホホ座のあれこれである。ややこしいのは、今言っているホホホ座とは別に、同じ名前の本屋のようなものがあることで、共にホホホ座などという、どてらい名前でいてこの二つに関係がないワケはなく、山下と松本はホホホ座という名前の店もやっている、ということで、しかし私とヒロミさんは、店のホホホ座とはまるっきり関係がなく、ここに記すのは私と関係のあるらしい、店じゃない方のホホホ座について、だということもお断りしておく。なぜなら「お店の方のホホホ座はどうですか?」とか「向こうにも(店員として)行ってるんですか?」などと、よく訊かれるからだ。店のことは何も知らない私はしかしホホホ座の名の下にある会話の全てにおいて、「さあ?」と応じてしまうのでややこしい。日頃、呆然とすごしている私はそのような生き物である。

 遡ること4年前、私は山下と松本に呼び出され、とある串カツ屋へ出向いて行った。彼らは声をひそめ、「我々のウィットでこのテータイを、さらりとかき回してやろうではないか」概ねそのようなことを言うのだった。テータイって、停滞?いったい何が停滞しているのだろうか?ウィットというのは、オシャレな頓知のことだろう。ともあれ、さらりとかき回すのは涼し気でよさそうだ。私は身を乗りだして声をひそめ、「そうしよう」と言った。「井川遥が持つマドラーになりたい」とも言った。「まずは、名前だ」と山下が言う。「まずは名前なのか」と私は思う。我々の名前が決まったらまた連絡するのでお前はそれまで待機していろ、とのことでその日は串カツを食べて家に帰った。

 それから1年後のある日、暇すぎてうっかり店で寝ていると、ウィットの1(山下)から連絡が入った。新しいメンバーが加わった、紹介するので来てほしい、とのことだ。「すぐに?今ちょっと忙しいんですけど」「いいから来て」「わかりました」。行くと、ディープV字ネックの大人の女性を紹介されてしまった。お色気担当か!ドキドキした。ヒロミさんだ。「ヒロミさんには、イラストとデザインを担当してもらっている」と山下が言った。イラストとデザインというのは大いに怪しい。しかし、してもらっているということは、もう何かが始まっているということなのだろうが、男の私はそれを我慢できるが、何も知らされてはいないのだった。ウィットの2(松本)の目が、眼鏡が、何もきくな、と言っていた。黙ってヒロミさんのV字ネックを盗み見していると、蝉の鳴く声がきこえてきた。「これで全員揃ったな」と山下が言った。夏が始まろうとしていた。四角関係という言葉が脳裏をよぎった。

 名前はなかなか決まらなかったが、私を除く、インビな三角関係で何かをしているようだった。私の夏はただ暑いばかりで、毎日独りでビールを飲んでいた。そのうちに、これでもかこれでもかと、一生懸命にビール等を飲むようになった。あんなにがんばったことは、かつてなかったように思う。そうして2年が経った。私はしびれを切らし、自分でも名前を考えようと思い立った。4人なのだから、なんとかフォーかなぁ。セイントフォー。セイン、セィンチ、センチメンタルフォー、ジャーニー。ぶつくさ言っていると、電話が鳴った。

 山下と松本がやって来て「やっとできたよ。」と言って私にツヤツヤした絵本のようなものを手渡した。表紙には「わたしがカフェをはじめた日。」とある。「名前は、ほほほざでいく」と山下が言った。ほほほざ?名前は決まっていたのだ。本のヘソのあたりに、「文と絵 ホホホ座」と印字されてある。我々、ホホホ座は、本を作ったのだった。全貌は不明だがホホホ座というのはそういうこともするらしい。私は文にも絵にも一切関与せず、でき上がった本を見せられただけなのだが。「ええやん」と私は言った。山下が本の後ろのページを開いてみせ「かじくんの名前も、ちゃんとのってんねんで」と言った。そこには私の名前と、初めて明かされる私の役目が印されていた。私の役目は「あいづち」とあった。それはまさに、三角関係(インビな)たちがすること成すことに対して、「ええやん」などと言う役目だった。なんだそれは。山下は満足そうに微笑んでいた。松本の目が、眼鏡も、笑っていた。その心を私は計りかねるが、ホホホ座はついに走り出したのだと思った。それから1年経った。1年経っても「ほほほざ」は言いにくい。たぶん永久にそうだろう。


つづく。

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加地猛(かじ・たけし)

ホホホ座座員。本業は100000tアローントコ店主。

京都市役所の横でレコードと古本を売り買いしている。42歳。太ったり痩せたり太ったり。だいたいだらしなく太っています。申し訳ない。

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